劇場公開日 2019年11月9日

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「恋ではなく作品にもどかしさを感じる」ラフィキ ふたりの夢 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 恋ではなく作品にもどかしさを感じる

2025年6月8日
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鑑賞方法:DVD/BD

カンヌ国際映画祭出品作品でありながらケニア本国では上映禁止という女性同士の恋愛青春映画。

南アフリカ以外のアフリカ映画を観る機会は非常に少ない。作品がほとんどないので。下に見ているわけではないが映像の美しさとクオリティの高さにまず驚いた。
原色系の鮮やかな前半。一転して色の抜けたような後半。美術方面はかなり頑張ったのだろう。
そういう意味では映像表現に重きを置いているカンヌにふさわしい作品だったかなと思う。

しかし観ていると、恐らくケニアでの上映を目指してか掘り下げが明らかに足りない部分があると感じた。あと一歩踏み込まないもどかしさが常にある。
それでも結局ケニアでは上映されなかったわけで、観れば納得なんだけど、同性愛が違法の国には表現がストレートすぎた。

製作者にはケニアの法を変えさせたいという思いがあると思う。カンヌで賞をとって話題になり外側から攻めたいのであれば表現不足、踏み込み不足だし、ケニアで上映を目指すのならばやり過ぎで、どっち付かずの中途半端だった。

ケニアでどんな感じなのか想像もつかないが相当危ない橋を渡ったのだろうことは理解できるものの、仮にこれがフランス映画だとしたら特に持ち上げられることもなかっただろう。

二人の両親が選挙の対立候補なのだが、これに絡めて同性愛に理解のあるケニア人、理解のないケニア人の対比にもっていくのかなと思ったけれど、そういったものは全くなく、ただロミオとジュリエットの禁じられた恋のための舞台装置で意味なかった。
そもそも同性なので禁じられているわけだしね。

批判的なレビューになってしまったけれど、ざっくりと良い映画だったとは思う。
しかしケニア映画だからという理由だけでこの作品を評価してしまったら同種のもっと踏み込んだ作品に失礼だし、なによりケニアを馬鹿にしているようになってしまう。
そういうわけで星3つ。

つとみ