「世界一有名な欠陥車」ジョン・デロリアン Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
世界一有名な欠陥車
観たかったのですが自分の地域では
公開がやっと最近で観れました
感想としては
非常に面白かったです
公開少ないの勿体ない位
デロリアン・モーター・カンパニー「DMC-12」
1985年にバック・トゥ・ザ・フューチャーのタイムマシンとして
そのクルマが世界に広まった頃には会社もなくなっていました
ジョン=ザッカリー・デロリアンはGM車で名だたる名車を
作り上げた名エンジニアでしたが既存の技術の焼き増しに
過ぎなかったカーデザインに嫌気が差し保守的な経営陣からも
疎まれていた事もあり会社を飛び出しDMCを設立
今まで観たこともないドリームカーを作って売ることを
目指します
そんなデロリアン宅の隣に越してきた
ひょうきん者のパイロットだけど麻薬の運び屋がバレ
司法取引的にFBIに麻薬取締の情報屋を手伝わされている
ジムの視点でストーリーは進みます
ジムの所有するポンティアック・GTOもジョンの仕事で
ジョンに強い憧れを抱きます
面白いのはジョン・デロリアン
完璧に見えて自分が設定したルールで卓球に負けると癇癪を起こしたり
チェスで負けそうになるとズルをしたり決して一筋縄ではない
ところを見せている点です
クルマを作り上げるには「設計」「販売」「生産」が当然必要ですが
DMC-12は発表時からイタリアの名匠ジウジアーロの手による
力強いファストバックスタイルやガルウイングドアなど
その未来的な「設計」に注目が集まり「販売」は良好で大量の予約注文を
取り付けました
…問題は「生産」に関わる人材・用地・品質です
ここでデロリアンの計画は大いに苦しめられることになります
まず米国内での生産は人件費や大手の参入障壁もあり困難なので
英国から助成金が出る超ド田舎のベルファスト(北アイルランド)
名門ロータスの協力も取り付けることに成功しましたが
これが後々問題を招くことになります
まずデロリアンが期待していた性能を類推できるエンジニアが
ロータスとの提携で抜け、田舎のベルファストで生産した品質は最悪
しかも英国はサッチャー首相に交代し国内の助成金を片っ端から廃止
しかも助成金の私的流用もバレて資金的に完全に追い詰められます
肝心のDMC-12も想定した性能には全然届かず
品質の悪さが知れ渡り注文キャンセルなどで生産8000台の
1/3しか売れていない有様
つまり…
限られた日数で大量の資金を必要とする最高の方法は…「アレ」しかありません
そしてジムに会社を救うためにと「アレ」とは言いませんが仕入れ頼みます
ここぞとばかりにFBIはジムを利用して売人もジョンも麻薬所持で逮捕して裁判にかけます
その裁判の模様が冒頭からチラチラ入ってきます
結果ジョンは具体的に麻薬を示唆する要求がなかった事と
FBIの強引な逮捕に陪審員に悪い印象を持たせ無罪を勝ち取ります
結局この映画
ありとあらゆる人が誰かに騙されます
ジムもジョンもその奥さんも
憧れてたのに詐欺師みたいな男だったとか
妻にも黙ってFBIの情報屋やってたとか
変装してまでFBIがジョンらをハメようとしたりとか
持ってもいない麻薬を買う200万ドルをあると言ったり
ただそんな中で結局ジムのジョンへの憧れの気持ちだけは
最後まで残っていてそれを貫いてジョンは無罪を勝ち取りました
その代わり二人とも奥さんから会社から全てを失いました
そんなジムとジョンは再会し…ジョンは別れ際にクルマのキーを
ジムに置いて帰ります
そのクルマは…
良い終わり方でした
映画の裏にある
レーガン政権下で「麻薬との戦争」でFBIが強引な操作も厭わなかった
世相などもわかる面白いストーリーでした
結局DMCはジョンが無罪になったとはいえ1982年に倒産
DMC-12はいわくつきのカルトカーとして記憶に消えていく
かと思いきやその倒産の3年後にバック・トゥ・ザ・フューチャーで
人気が爆発し今ではレプリカ生産で新車で手に入ってしまうほど
愛好家がたくさんいるクルマになりました
そんな人気とはうらはらの「クソ車」っぷり
この映画で知ってもらえればと思います