劇場公開日 2019年10月25日

「映画館で観れてよかった」キング ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0映画館で観れてよかった

2019年11月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ネットフリックスのオリジナル映画だが、このスケールと陰影の深い映像は映画館で観て正解だった。ティモシー・シャラメは、屈折したティーンエイジャーのイメージの役が多いが、本格的な史劇の主人公を堂々と演じている。自由人として生きているヘンリー5世が、宮廷の権力争いや戦争を経て立派な王に成長していく姿を描いている。王としての責務の重さや戦争の恐ろしさや虚しさも描いているのが現代的と言えるかもしれない。
絢爛豪華な衣装に身を包んでいるが、戦闘シーンなどは、華麗さや勇ましさよりも泥臭さが勝っている。雨が降った後の地の利を活かした戦いのシーンでは、文字通り泥に塗れた戦いを繰り広げており、本気の殺し合いの雰囲気が漂っていて素晴らしい。多くの犠牲を強いて得た勝利にも喜びはなく、あるのは裏切りと策謀だけ。偉大さを称える史劇ではなく、虚しさや歴史の業の深さを描く史劇だ。
ティモシー・シャラメはこれからどんな俳優に育ってゆくのか、これを観て非常に楽しみになった。

杉本穂高