「社会の辛さから逃れられる場所としての更生施設」少女は夜明けに夢をみる ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
社会の辛さから逃れられる場所としての更生施設
イランの少女更生施設、要するに少年院のような場所だと思うが、監督が7年かけて交渉して施設内で撮影したドキュメンタリー映画だ。画面に映る少女たちは屈託ない笑顔をカメラに向けている。しかし、聞けば相当に過酷な経験をしている。ここは罪を犯した少女が入る場所だが、彼女たちには生きるためには犯罪以外の道がなかったのだ。社会では居場所を持てなかった少女たちが、社会から隔離された施設の中で笑顔を見せる。社会の中で虐げられる存在だからこそ、社会から隔離されたこの施設は、皮肉にも少女たちにとって居心地のいい場所なのだ。出所が近づくとむしろ笑顔は消えていく。彼女たちにとって施設よりも社会の方が過酷なのだ。
少女たちが無邪気な笑顔を見せるこの映画には悲壮感はない。だが、彼女たちの取り巻く社会を思うとやるせなくなる。施設の少女たちにフォーカスすることで、イラン社会の不条理も間接的に映し出した見事なドキュメンタリーだ。
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