「かつて星空から彼を探した子どもから、これから星空から彼を探す子ども達へ」シン・ウルトラマン 荒川光線さんの映画レビュー(感想・評価)
かつて星空から彼を探した子どもから、これから星空から彼を探す子ども達へ
とにかく、気になるところはあるものの、それを覆い尽くせるような面白い映画でした。
初代ウルトラマンのリメイクは過去に何度も行われていますが、さすがに現代の映像技術を駆使しているリメイクは、とにかく見応えがありました。
頭が空っぽにしても楽しめるし、深い洞察をしても楽しめる映画は、ウルトラマンというコンテンツの懐の深さでしょう。
私は、見終わった後にウルトラマンのマネをし出した子どもを目撃しており、それを証明しています。
樋口&庵野コンビらしく、小ネタや小難しい理論満載ですが(私も理論物理学は全然分かりません)、それをすっ飛ばして楽しめるエンターテイメントになっています。
まずは細かい表現にとらわれずに、広い心で鑑賞してもらいたいものです。
「なぜウルトラマンは命がけで地球人を守ってくれるのか?」という、ウルトラシリーズ共通のテーマが根底にあり、人類を駄目な部分もひっくるめて戦い愛してくれたウルトラマン、もちろんスタッフらからも愛を感じる作品でした。
一方、長澤まさみに対するあの表現について、現在の感覚では問題があると思われ、それを批判する動きもあるわけですが、他方で過去シリーズにおいては「ザラブ星人」「メフィラス星人」などと「○○星人」と民族名で現していた悪役キャラクターを、本作では単に「ザラブ」「メフィラス」という個人名を思わせる表現に代えたことについてはもっと評価されても良いと思います。
そのほかラストの唐突さなど気になるところは確かにあります。
そういう面では減点対象です。
何しろ一番気に入らないのは「僕の考えたウルトラマンとは違う」と言うことなんですが、これは単なる嫉妬に過ぎないので、減点しない方がいいでしょう。
あの日僕たちが見たウルトラマンを、子ども達にも伝えることが出来たと思うので、多少の問題があっても満点に値できるでしょう。