「序盤は100点、後半は50点」シン・ウルトラマン N Tさんの映画レビュー(感想・評価)
序盤は100点、後半は50点
制作発表の時から公開を楽しみにしていた作品。誰もが知るヒーローである初代ウルトラマンを現代の技術でリブートするとどうなるのか注目でしたが...
<良かったところ>
・序盤から怪獣とウルトラマンが出てくる
・思ったより庵野感が少なくて見やすい
<悪かったところ>
・話が進むにつれ尻すぼみ
・怪獣バトルが少ない
・人間関係の描写が薄い
・脚本にリアリティがない
・CGのクオリティがショボい
残念ながら全体的に悪い点が多めの結果となってしまいました。
まず、序盤は素晴らしいです。いきなりの怪獣出現からウルトラマンの登場が続いて、ド派手なバトル。最初の30分だけなら何度でも観たいです。ですがここがピークであとは尻すぼみになっていく感が否めません。話の展開としては、前半は「VS怪獣」後半は「VS宇宙人」となりますが、私が観たかったのは次々現れる怪獣と戦うウルトラマンなんですよね。もっと怪獣プロレスや禍特対の活躍が見たかったです。
また、ウルトラマンが登場しないドラマ部分もちょっといただけない。全体を通して主人公(斎藤工)とヒロイン(長澤まさみ)が相棒であることが何度も強調されますが、この二人が相棒として仲を深めるシーンがほぼ無い。初対面からほとんど顔も合わせていないのに急に「相棒だから信頼している」的なこと言われてもねぇ。政治部分もひどいもんです。宇宙人と日本政府が密約を交わすシーンがありますが、決断が早すぎる。現実世界での国家間の条約締結でも何年も交渉が行われるのに、宇宙人とのやり取りが即断即決はちょっと無理があります。また、禍特対のメンバーがたった5~6人しかいないのも違和感。こんな体制で怪獣対応なんかできるわきゃないし、怪獣出現の現場に行く際も全員スーツ姿って。作業着くらいあるでしょ。シンゴジラでは政府や現場の動きを圧倒的なリアリティで描いていましたが、本作では手抜きを感じます。
CGのクオリティもイマイチですね。派手に動きまわっている時はごまかしが効いてまだマシでしたが、動きの少ないシーンなんかはプレステ2かと思いました。「パシフィックリム」や「キングコング」、ハリウッド版「ゴジラ」などで、巨大怪獣が暴れまわる姿に慣れていると、本作のCGはレベルが低すぎて観ていて辛くなってきます。ハリウッドみたいに予算も人員も無いのは理解しますが、伝統の着ぐるみではなくCGで行くと決めたからには、もうちょっとどうにかならなかったものか。
怪獣とのバトルシーンはそれなりにワクワクしましたが、それ以外は粗が目立つ作品でした。ところどころ初代ウルトラマンのオマージュ的なシーンもありましたが、マニアでなければ違和感の方が強いでしょうね。「ウルトラマンの劇場版」としてはそこそこ楽しめますが、一般向けの映画作品としては高得点は着けづらいです。