劇場公開日 2022年6月3日

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「テーマは、不正の追及ではなく、ユダヤ人差別の方か?」オフィサー・アンド・スパイ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0テーマは、不正の追及ではなく、ユダヤ人差別の方か?

2022年6月4日
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所属している組織の不正を知った時、自分ならどうするだろう。この映画の主人公のように、ことを荒立ててまで正義を貫こうとするだろうか?もしかしたら、波風の立たぬよう見て見ぬふりをして、丸く納めてしまうのではないか?フランスの歴史的な事件が題材ではあるが、日本でも同じような事件は起きており、どうしても自分に当てはめて考えてしまう。
ところが、ラスト近くになって、これは、そうした正義を貫いた人間を称える映画ではないらしいということが分かってくる。裁判としては敗訴の連続で、冤罪の確定は字幕で説明されるのみ。軍の上層部が失脚したという描写はなく、不正を追及した主人公は栄進するものの、ドレフュスの昇任の願い出は却下されてしまうのである。歴史的事実を正確に描いただけなのかもしれないが、それにしても、劇映画として、勧善懲悪のカタルシスがなさ過ぎる。
結局、監督が本当に描きたかったのは、ユダヤ人差別の根深さと、社会の分断の深刻さだったのではないか?そんなことを考えさせられるラストだった。

tomato
tomatoさんのコメント
2022年6月8日

参考にしていただいて、恐縮です。
私も、「後味」が期待していたものと随分違ったので、戸惑いました。
でも、監督のプロフィールを考えると、やはりそういうことなのかなぁと思った次第です。
ありがとうございました。

tomato
ちゃっぴーさんのコメント
2022年6月7日

tomatoさまのレビューで、
イマイチ腑に落ちなかったテーマがスッキリしました。ありがとうございます。
登場人物の位置付けもいまいち判然としなかったり、重厚な雰囲気は良いのですが個人的には惜しい作品でした。

ちゃっぴー