「一旦「違う」と感じたら、行き着くところまで行く結婚生活の末路」マリッジ・ストーリー MPさんの映画レビュー(感想・評価)
一旦「違う」と感じたら、行き着くところまで行く結婚生活の末路
映画監督で脚本家のチャーリーは、ハリウッドでは人気女優だったニコールと恋に落ち、結婚してからはチャーリーの故郷ニューヨークで暮らしている。しかし、互いの価値観の違いから離婚を決意した2人は、当初は円満な協議離婚を目指していたが、別れるとなった途端、意識のすれ違いが俄然表面化して、各々が弁護士を立てて法廷闘争へ。これまでは、「クレイマー、クレイマー」がギリギリ扱っていた問題を、さらに、容赦なく掘り下げようとするのが本作。興味深いのは、離婚という個人の問題が、弁護士の手に委ねられた途端、全く異なる力学によって"劇場化"してしまう点。夫婦の諍いの原因が、ニューヨークvsロサンゼルスという、アメリカ映画が長らくテーマにしてきた土地柄と気性の違いにもあることを、露わにしていく点。何よりも、相手に対して感じた違和感を徹底的に追求した先にある、自分と他者の間にある溝の深さだ。一旦「違う」と思ったら最後、行き着くところまで行ってしまう結婚という行為のギャンブル性が、そして、人間という生き物の脆さが、深く身に沁みる映画である。
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