WASP ネットワークのレビュー・感想・評価
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この演出家の良い所は赤ん坊の扱い方がうまい事。
自由と民主主義の国アメリカに亡命して、最初にもてなされるのが、
ハンバーガーと炭酸飲料。貧困だ。
『カストロ食堂?』の方が美味いと思うよ。
『同胞じゃなくて、同士じゃないのか?』二重スパイになるような信念のある者ならその点にこだわると思うが。
さて、誰に忠義を立てているのか?いくらか日本人のアイデンティティの残る僕にとっては理解出来ない。
キューバのこと何も知らなかった
キューバと映画ということではゴッドファーザーⅡをまず思い出しました。キューバを訪れ若者達の暴動を目にしたマイケルが「彼らは金でなく信念に命をかけている」と言ったのが強烈だったからです。これは当時の親米キューバ政権と戦うフィデル・カステロによるキューバ革命なんですね。
そのカステロ政権(社会主義国家)が1959年以降ソ連崩壊を経験しても続いていて、この映画の反カステロのWASPネットワークは、キューバのホテルや観光地テロを止めるスパイ組織であり、筏に乗ってキューバから亡命する人達を飛行機で見つけて空から海へ物資を落として援助するパイロット達でもある。ここまでわかるのにいったん映像止めて調べましたが、あまりに何も知らない自分に驚きました。
映画は途中からテンポよくなりドキドキしながら進みます。この映画のペネロペは逞しく地に足のついた母親&妻役で素晴らしかった。アナ・デ・アルマス、かわいそうだった。ネットワークのリーダー役のガエル・ガルシア・ベルナル、かっこよかった。
スパイ映画だけど…
破壊工作や殺しなどはしない。祖国を守るため、テロ行為を事前に防ぐために組織に潜入したスパイを題材にした珍しい映画。しかも実話という点に驚くと共に、よくこういう映画を作れたなと感心した。同胞を思う気持ち、家族を愛する気持ち、葛藤があっただろう。祖国を裏切るという司法取引に応じず、刑期を短くして家族に会うという選択をしない愛国心には恐れ入った。スペイン語圏の豪華俳優陣も魅力的だった。
ミッションの成功と家族の安寧
ソ連崩壊後のキューバでは、マイアミに亡命する者が後を絶たなかった。主人公のレネもその一人であり、家族を残してマイアミに亡命する。しかし、それはあるミッションを抱えてのことだった。
非常にバランスの取れた脚本だったと思う。社会的な動きと家族の葛藤の両方を対比できる構成で、ミッションの成功と家族の安寧の両立の難しさをよく見せていた欲を言えば、FBIの動きについてももう少し真相を見たかったところではあるが、あまり明らかになっていないのかもしれない。
危険は承知。スパイの妻ペネロペ・クルス × エドガー・ラミレス。ペ...
危険は承知。スパイの妻ペネロペ・クルス × エドガー・ラミレス。ペネロペ・クルス、アナ・デ・アルマス、そしてガエル・ガルシア・ベルナル。スペイン語圏が誇る素晴らしい役者たちが仏監督オリヴィエ・アサイヤス最新作に顔を揃えたポリティカルサスペンス。そして事実に基づく興味深い題材のスパイ工作もの。アメリカ目線で始まるものも、そこはフランス人監督(?)、しっかりキューバ目線に立ちアメリカのエゴ身勝手さにも少しの疑問符を。と言いつつ、結局のところ他のアメリカ映画など同様、本作におけるキューバとは、単なるアメリカの平和を脅かす脅威に過ぎないのかもしれないけど。正直そんなに面白いってことは個人的になかったが、少なくとも日本においてほぼ同次期配信の同エドガー・ラミレス主演作『ラストデイズ・オブ・アメリカンクライム』よりは良い。にしてもペネロペ・クルスとアナ・デ・アルマスを同じ映画で見られるとは、これがいわゆる俺得ってやつかと思った。そしてガエル・ガルシア・ベルナル久々に見たらかなり頭きてたな、盟友ディエゴ・ルナが若々しいルックスのままでかつハリウッドでの活躍の場も広げているので少し寂しい気持ちにもなってしまった、けど応援していきたい。
よく言えば骨太、悪く言えば雑多
東京国際映画祭にて。
オリヴィエ・アサイヤスの最新作(のはず)。第76回ヴェネツィア国際映画祭コンペディション部門選出。
実話に基づいているが、かなり分かりにくい複雑な構造をしていて、話を知っているかどうかで大分見方が変わる。
2人のキューバ人男性がアメリカに亡命し、キューバ体制反対派の団体で活動を始める。ここではふたりは故国を捨てて新しい体制を目指す対照的なふたり、という感じで描かれる。ひとりは生真面目堅実。もうひとりはド派手。
しかし、中盤でいきなりナレーションによるネタバレが入る。彼らは亡命キューバ人が起こすテロを未然に防ぐために反体制組織に潜入したスパイ ”WASP Network” の一員であった。
WASPネットワーク、ひいてはキューバン・ファイブの話はキューバとフロリダ以外ではよく知られていないそうだから(私も観る前にさっくり予習したにすぎない)、恐らくこの話を知らない観客向けにこの映画は作られている。時々あれ? という伏線を仕掛けてきて、中盤で一気に物語を加速させる流れである。複雑ではあるが、惹き込みやすい作りだ。誰が敵で誰が味方なのか? という感を演出している。ただし話を知っているとその効果がないので難しい。
物語の中心は、最初に亡命してきたレネと、キューバに残された妻オルガだが、その他様々な登場人物が、場所と時間を自在に動く(時間が急に巻き戻ったり、話が中米に飛んだりする)。様々な視点から物語を俯瞰することができるが、色々な登場人物が出てくるため物語が散漫になる点は否めない。レネとオルガに絞っておけば良かったのでは...。
また、この作品は最初に亡命したときが示されて以降、ほぼ時間が描かれないので時間の進みが把握できない。何故だ!あんなに場所は描くのに!
順調に活動を続けていたWASPネットワークだが、結果的に(これも物語内に伏線が入ってくる)メンバーは逮捕され、裁判にかけられる。そこで司法取引に応じなかったメンバーが所謂「キューバン・ファイブ」である。
この作品はWASPネットワークの活動とそのメンバーの人間関係に重きが置かれており、収監後の経過やオバマ政権に入ってからの雪解けについてはほとんど描写がない。当然FBIとの攻防も描かれない。
彼らの活動が罪となるものであるのか(本来の目的を隠していたことは確かだが)、FBIとキューバが亡命アメリカ人テロリストについて情報を交換した後に彼らが逮捕されていること、様々な国の思惑が見え隠れしながらも、その部分をあからさまではなく背後にさりげなく置いて、ただ思いを持つ人間を描く事に徹していると言える。
スパイ映画的な趣を期待して観ると全く異なるテイストであろうと思う。息詰まる攻防戦というものはなく、後半は特に信念と家族愛の映画といったテイストである。その間に幾つかの事件が挟まり物語が大きく動く。
結果として、淡々とした、及び人物が多すぎて散漫な印象は否めないものの、非常に堅実なつくりの映画といえる。描き込みが多く骨太な映画だ。そこを雑多だという見る向きもあるだろうが...。
役者はスペイン人のペネロペ・クルス、ベネズエラ人のエドガー・ラミレス、ブラジル人のヴァグネル・モウラ、メキシコ人のガエル・ガルシア・ベルナルと多国籍軍総動員である。監督はフランス人だしな。ペネロペ・クルスはやっぱり強い情のある女が似合うなー。キューバ人のアナ・デ・アルマスさんも勘の鋭さが素敵。いちばん悲しい役回りだけど。
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