配信開始日 2019年8月21日

「【”高い共通認識を求めて” ”思想信条、国境、民族風習・気質、文化”の壁は越えられるのか。重い問題をフラットな視点で切り取った秀逸なドキュメンタリー作品。】」アメリカン・ファクトリー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【”高い共通認識を求めて” ”思想信条、国境、民族風習・気質、文化”の壁は越えられるのか。重い問題をフラットな視点で切り取った秀逸なドキュメンタリー作品。】

2020年5月27日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

ー今作がドキュメンタリー作品として秀逸なのは、中国共産主義思想とアメリカ民主主義思想のどちらかにスタンスを置く訳ではなく、お互いに”努力”して融和しようとする”経営トップクラス”から”作業者”までの幅広い人々の姿を”虚飾なく”描き出しているところだろう。-

 「高い共通認識」:今作の製作に関わったオバマ前大統領の言葉。現在のアメリカのトップを務める男にこの意識が僅かでもあれば、と切に思う。
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 2015年 GMデイトン工場閉鎖のシーンから映像は始まる。そして、進出してきたのは、中国企業の”福耀”(フーヤオ)。

 当初、”福耀”を一代で築いた会長は”郷に入れば、郷に従え”という言葉と共に、FGA(フーヤオ・アメリカ)の社長、副社長に、アメリカ白人を据えるが・・。

■印象的なシーン
 ・FGA開所式でスピーチするUAW(全米自動車労働組合)よりの議員の言葉に過剰に反応するFGA経営層の姿。
ーアメリカの(UAWは特に強硬な姿勢で有名であるが)労働組合の会社への介入を嫌うのは、中国企業なら当たり前だよな・・と思いながら、鑑賞。-

 ・FGAアメリカ人幹部クラスが中国の”福耀”工場を”研修”名目で見学する姿。作業者たちの淀みない作業風景。昼礼の際の一糸乱れぬ整列シーン。”異生物を見るような、太目のアメリカ人たちの表情。
ー日本の製造業でも、あそこまではやらないよ・・。(知っている限り)-

 そして、労働条件、環境の凄さに驚くシーン。特に安全面。
ー日本の製造業では、あんな事はやらないよ・・。(安全第一である。)ー
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 ・彼らが、アメリカに帰国して同じような事をしようとするが・・。
ーだからあ・・。そういう文化じゃないでしょう・・。-

 ・”組合回避コンサルタント”なんて、仕事があるのね・・。

 ・FGAアメリカ人労働者たちが組合介入を求めて活動する姿。無人化により、”レイ・オフ”されていく作業者たちの姿。
ー省人したら、レイオフじゃなくて、改善スタッフに回して、”組織力”
を上げるんじゃないの?-

 2018年、FGA(フーヤオ・アメリカ)は漸く、黒字化するが、作業者
の時給は14ドルのまま・・。

<すいません・・。どうしても、民主主義的立場からのコメントになってしまいました・・。
 それにしても、ラストに出たテロップ
”このまま、無人化が進むと2030年には3億7千600万の失業者が出る・・”
 には、衝撃を覚える。
 ”重い命題”を静に私たちに問いかけて来るドキュメンタリー映画の秀作である。>

NOBU