「初見では見過ごしてしまった細部の妙」喜劇 愛妻物語 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
初見では見過ごしてしまった細部の妙
とにかく弁解も弁護もできないガチでクズな男が主人公なのに、ちゃんと人情物として成立していることに驚く。もちろん暴言妻も含めて不快になりすぎないようにバランスは取られているのだろうが、なかなかに成立しづらい難しいバランスであり、かなりギリギリのところを攻めているんじゃないだろうか。複数回観て気づいたのは、身も蓋もない罵詈雑言がカジュアルに飛び交うライトな外面のせいで見過ごしそうになるが、実は随所に繊細な心理描写が仕込まれている。ちょっとした瞬間の娘のアキの気遣いの描写にハッとさせられたり、見返す度に発見がある。音楽の使い方など演出面で短絡的に見えてしまうところもあるのだが、タイトルに「喜劇」とあるように「大衆喜劇」というフォーマットに収める意図的なものであるような気もする。いずれにせよ、簡単に全貌がわかったようなつもりになってはいけない類の作品だと思っている。
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