「全世界がトム様にひれ伏す。」トップガン マーヴェリック とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
全世界がトム様にひれ伏す。
制作される・公開されるというニュースに喜んだと思ったら、延期に次ぐ延期。
夢にまで見た映画。
その夢をはるかに超えた極上の映画だった。
コロナ禍にあって、劇場公開ではなく、配信と言う手段をとった映画も多く、待ちきれぬファンは配信でもいいから早く見たいとも願った。
けれど、トム様は、頑として劇場公開にこだわった。
ファンを大切にするトム様が、ファンの希望を蹴ってまで、劇場公開にこだわった映画。
そう、これは劇場でなければ真価がわからない。
劇場で観るための映画。
トム様が大切にしているのは、ファンだけではない。映画に関わる人々。スタッフ・そして映画を送り届ける映画館の関係者。
映画産業の未来を見つめていらっしゃるのだろう。
現時点でできうる限りの最高の物を最高の環境で、最高に楽しんでもらいたい。
その心意気にひれ伏す。
二匹目の泥鰌。
誰もが犯す過ち。
だが、トム様はそんな誘惑にはのらなかった。
若干20代前半の、有望視されていたとはいえ、まだポッとでの、次はどうなるかもわからない若者が、権利を買い取り、安易な続編制作の魔の手から守った。
どんなにヒットしたとて、一本で消えてしまう役者は多い。
次なるヒット作をと焦り、チョイスを間違える。そんな愚は犯さなかった。
『デイズオブサンダー』を『トップガン』のカーレース版と言う方もいるが、デュバル様との絡みも入れて、違うドラマも展開させている。
比較的、評価の高い作品に出演されているトム様。
それでも、思うようなヒット作がない時期もあった。
けれども、安易に『トップガン』続編に手を出すことなく、慎重に、作品選び・制作を続け、演じる役を最高のものとした。パウエル氏にアドバイスしたように。
演じるだけでもすごいのに、若いころからプロデューサーとしての才能もトム様はお持ちだった。
そして、己の欲をコントロールすることもできたのだ。
最高のものを作るために。最高の脚本・監督・スタッフ・技術・機材・技量・海軍等の関係者をはじめとする環境が揃うのを。
なんたる忍耐力。なんたる手腕。
その心意気にひれ伏す。
これほどの男がいるのだ。
そうしてできた続編は、
ご自身の出世作である『トップガン』を、いかに大切に思っていたかが伝わってくる。
かつ、何より、ファン目線を忘れない。原点を知るものと同じ目線でありながら、知らない世代にも通じる心配り。
そして、映画製作で可能なことを駆使。
手に汗握る訓練・ドッグファイト。若者だけでなく、マーベリック自身の成長物語・人間ドラマ。そしてコメディ。そのバランスが見事。
脚本・演出・映像・演技・音楽・編集 すべてに痺れる。
様々な作品に関わり、引き出しを増やしていったトム様。
今回の製作陣を見ても、ご自身と相性の良い方々半分。新しい才能半分。
海軍との関りも、『トップガン』以来ずっと親交を続けてきたからこそ、今回全面協力を得られたのだろう。
これだけの人々をまとめ上げて、さらなる進化を生み出すその力。
その本気を日本の配給会社も受け入れたのか、制作筋の命令か。訳はトム様の日本の母。なれど、自衛隊の監修付き!
その才能にひれ伏す。
これほどの男がいるのだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
”伝説のオープニング”と名高い、前作を彷彿とする、今作のオープニング。その余韻に浸っていると、あれ?もう終わり? 後半のドラマ・ドッグファイトに時間をさく。編集が上手い。
前作で、ピートが追っていた父の背中・周りとの確執は、今回グースの息子が引き継ぐ。
父のことがあるから無謀な行動をとっていたピートに比べて、慎重になりすぎるルースター。
自分の才に奢っていたピートを引き継ぐ、ハングマン。
アイスマンとマーベリックの関係性の変化。(アイスマンの使い方が粋)
若い頃のアイスマンとマーベリックの関係性を引き継ぐルースターとハングマン。
ビーチで興じるスポーツ。はちきれんばかりの若さは変わりなく。でも、若い世代に譲る。
どこをとっても格好いい映像・シチュエーションにあふれていた前作。でも今作はコメディパート炸裂。
「ここはどこ?」「地球だよ」
あんなところで娘に合うとは…。いや、その前のシンクロした動き。
考えるなと言っただろう」そこでその台詞?(「考えるな、〇〇しろ」はブルース・リー『燃えよ!ドラゴン』の「考えるな、感じろ」のもじり?とここでも(笑)。)
アゲアゲの音楽、ほとばしるエネルギーだけを比べれば、前作の方が勢いがある。
でも、今作は、勢いだけではない。戦い方や技術・兵器の変化・年齢にも絡んで、己の使命・生き方を見つめて足掻く男の艶がほとばしる。プラス、前作よりは弱いけれど、ひよっこの成長もまぶしい。
捨て駒前提の作戦…。でもマーベリックは…。そしてマーベリックは、死の恐怖を知っている者を…。
作戦も、一難去って、また一難、また…。まだ続くんかい!と思いつつ、展開にワクワク。そう、ミッションは”生還”だから。
そして、懐かしのトムキャット。
最後は、水戸黄門みたいに判り切ったオチなんだけれど、ぎりぎりまで引っ張ってくれる。演出の妙。キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! (≧▽≦)。
ラストは、パイロットにフォーカスするだけでなく、空母のクルーにも見せ場を作る。全方面への心配り。
と、どこを切り取ってもご機嫌な展開に加え、
手に汗握る空中での動き。
いやはや、どう撮ったのか。
役者の表情はコクピットにカメラ入れたとして、
あんな山並みを、あんなスピードで飛びぬけたの?しかも空中戦?!
メイキングにうつる映像からは、カメラも一緒に飛んだ?
なんたる映画。
こんなに、心一杯にさせてくれる映画をありがとう。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
レビューの中には、今のロシア・ウクライナの情勢と合わせて、
この作戦をロシアの暴挙と同列に論じているものもある。
確かに、この作戦から戦争勃発の危険性もある。
けれど、ロシアの侵攻とは違う。
ロシア・プーチンは、ウクライナに「生物兵器がある」と主張しているが、それを裏付ける証拠なく侵攻を始めた。裏付ける証拠がない限り、言いがかり・妄想。
この映画は、少なくとも、実際に”兵器”はある。
実際に”兵器”があるから、攻撃していいかというとまた別の問題だけれど。
前作は、相手国が領空侵犯してきたから迎え撃ったという”守り”が協調されていたのだが。
これらの理屈が実際に通用するとすると、北朝鮮への攻撃は許されるってこと?
映画の中の仮想現実として楽しみたいのに、どうして人間は戦争をしたがるのだろうか。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
≪2020.10.16追記≫
4DXSCREENにて追鑑賞 (4DXもSCREENXも初体験)
3方面の映像なんて、あっち見てこっち見てと、情報が処理しきれるのかと心配したが、場面構成の巧みさ。映画の世界観がひろがり、気分は最高にご満悦。
映画の物語を堪能するだけなら、正面の画面に集中すればよい。
でも、そこに両面の映像が加わる。しっかりとみる必要がない、普段の生活のような視界に入る程度の映像。でも、その効果たるや。
マーベリック目線で計器に囲まれる。パイロットは、これほどまでの情報量を瞬時に判断して操作していくのか…。絶句。そんな息苦しいコクピットの向こうには雲海と朝日が…。そして…。
広がる海。そこに空母。「空から見れば、空母なんて、木の葉のごとく」って、本当だ(唖然)。
飛びぬける機体。走り抜けるバイク。
コックピットから見える、空。森。山々…。
ふうっ。
トム様やキャストと同じものを見ている気になってくる。
店から放り出されて、背中から地面に着地する衝撃を味わえるだけでなく、
空母から離陸するときに、パイロットに水はかからんだろうと思うようなサービスもあり。
否、空中戦で着弾、爆風?が足元や頬のあたりを吹き抜ける。
そうか、私は今、パイロットではなくて、戦闘機なんだ。
機体が右に、左に旋回。錐もみ飛行で落下するときも、それっぽく椅子が動く。
シートベルトがないのにどうしようと真面目に心配したが、シートベルトが必要なほどは動かずにほっと安心。
でも、3方に広がる地上の映像と相まって(追鑑賞だから筋は知っているのに)、激突するようなドキドキ。つい、体に力が入ってしまう。
ふうっ。
全編通して、初回鑑賞よりも、ミッションの過酷さ・デンジャラス度が身に染みてきて、ハラハラ・ドキドキ。
そして、映画についていくだけで精一杯だった初回鑑賞よりも、
マーベリックの人間臭さ。格好いいけれど、加齢臭も漂いそうな人間的深み。
泣き言。それを直接言葉や態度で支えるアイスマン。ペニー。陰で支えるウォーロック・ホンド。心の中で支えるグース。悩みながらも見せる男の背中。
ペニー。自立した女の格好良さ。牽制しながらもの誘い方。すり抜け方。寄り添い方。決して依存しない。
他にも、一人一人の個性が見えてくる。
そして、そして、改めて脚本のうまさ。小道具の使い方のうまさに感嘆。
ペニーをくっついては別れを繰り返している元彼女にすることによって、さりげなくマーベリックの過去と現在をつないで見せる。
ルースターとの関係も、写真で周りにも知られるようにする巧みさ。
ラスト。マーベリックの登場のシーンに戻る。でも、そこには…。
鑑賞後、一つの時代が終わり、新たな時代が始まったと思った。
これから、マーベリックも、トム様もどんな物語を紡いていくのだろう。
楽しみの予感を持ちながらも深い深い寂しさの余韻に浸っている。
映画にも感動しましたが、とみいじょんさんの素晴らしいレビューに感心、そして感動しました。何となく感じていたが上手く言語化できなかったところまでもきちんと表現されており、再度映画を見た時の感動が蘇りました。
とみいじょんさん
みかずきです
激熱のレビューですね。
本作、36年待った甲斐は十二分にある作品です。
大スクリーンのある劇場で観るべき作品です。
トム・クルーズも今年で60歳です。
限界はあるでしょうが、まだまだサービス精神に溢れた作品を魅せて欲しいです。
ではまた共感作で。
ー以上ー