「現実の国際情勢で“世界の警察”を降りた米軍の、夢想と郷愁のよう……」トップガン マーヴェリック 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
現実の国際情勢で“世界の警察”を降りた米軍の、夢想と郷愁のよう……
空母から戦闘機が飛び立とうとする冒頭、ケニー・ロギンスの「デンジャー・ゾーン」が流れて、前作「トップガン」を観た人ならまず「おお!」と盛り上がるはずだし、私も実際そうだった。
ただなんだろう、前作が公開された1986年はまだ米ソ冷戦のさなかとはいえ、ソ連が斜陽化し米国がイケイケ状態だった頃で、映画にもそんな雰囲気が反映されていたのに対し、今回の続編はコロナ禍による公開延期の不運も重なって、ロシアによるウクライナ侵攻というリアルな戦争が起きている時期、しかもかつての“世界の警察”を自認していた米国なら真っ先に介入していたであろう事態なのに、NATOを介した間接的なウクライナ支援にとどまっている(バイデン大統領は軍事介入しないと早々に明言した)という現状を思うと、どうにも映画に没入できないもどかしさもあった。
なんだか、名実ともに世界一の軍事大国だった頃のアメリカを懐かしんでいるような、あるいは今もそうなんだと夢想しているような。まあ、そんな現実は忘れて、IMAXの大画面で迫力満点の戦闘機アクションとトム・クルーズの雄姿に心躍らせて楽しむのが本作の正しい鑑賞姿勢なのかもしれない。
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