「“Quanto Basta(どの程度が適量=十分ですか?)”と「フルパワー!」」トスカーナの幸せレシピ もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
“Quanto Basta(どの程度が適量=十分ですか?)”と「フルパワー!」
やはりイタリア人は喜怒哀楽の表現力が豊かと言うべきか、初めて見たがヴィニーチョ・マルキオーニという俳優の人物造型が的確なのか、アルトゥーロの表情の変幻自在さに見とれた。対するグイドが障害のせいもあるが、やや表情に乏しいのと良いコントラストになっている。そのグイドの絶対味覚も、偶々料理の先生になったアルトゥーロが一流の腕を持つ料理人でなかったら、活かされることも料理人になるという夢もかなわなかったかもしれない。だからグイドはアルトゥーロを慕ったのだろう。一方、過去に受けた手痛い嘘と裏切りから立ち直れずにいたアルトゥーロも、真っ直ぐで裏表のないグイドと出会ったことで、新しい人生をどちら側で送るかを決められたのだと思う。印象的な台詞がある。「弱い彼を何故更に弱い俺に託したのか?」アルトゥーロはアンナに訊く。心理学者であるアンナでも其処までは考えなかったとは思うが、“マイナス×マイナスはプラスになるのだ!”と。アルトゥーロとアンナとが結ばれるのははじめから読めたが、グイドとジュリエッタが結ばれなかったことは、少し苦味を加えることで、もしかしたら大甘な夢物語になるところを押し留めた良い塩梅だったと思う。ご馳走さまでした。
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