ミッドサマーのレビュー・感想・評価
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祝祭が始まる
家族を心中により亡くしたダニー、
恋人のクリスチャンと共に、友人の故郷で催される夏至祭へと招待される。
彼らを招待したペレはまるでハーメルンの笛吹。
招待されたコミューンでは、人生を季節に準えるという。
18年周期で春から冬へ、四季の終わりは人生の終わりと冗談めいて説明を受ける。
72歳を迎えると崖から飛び降りる。
曰く命を新たな世代に与えると。
外から招かれた客たち、慣習を荒らすことがなければ歓迎される。
若い女性が集められ、最後の1人になるまで踊り続ける。
ダニーはこの催事により女王へ選ばれた。
外から迎え入れた4人と内側の4人、そして女王の選んだ1人が生贄となり催事は幕を閉じる。
ダニーは自分を裏切ったクリスチャンを生贄に選ぶ。これは監督の用意した「カタルシス」だとか。
笑顔と善意による同調圧力。
蔓延するドラッグと単調な繰り返しによる催しに正常な判断力を失う。真に精神的共同体となっているのではなく、各々が習慣に則って共感を試みて、流され続けている。当人たちには神秘でも側から見ればカルト。
閉じた系で常識は疑いがたく、長く続くものは排他的になり得る。
不自然に動く植物や、うねる背景などの描写が印象的。
コミューンという文化的閉鎖空間で平衡感覚や自我が揺さぶられていく様を表しているよう。
ただのグロ映画
私はこの作品はなーんか不気味なカルト宗教の話だと思っていました。
しかし実際見てみると、ただ客観的に観るとグロい、信者たちは神聖な儀式としての映像が続いていました。
どの宗教でも周りから見たら異常でも、信者たちからしたら普通なのはあると思います。
この作品はそんな周りと中心の乖離を描いた作品のように感じました。
最終的には、ペレ作戦大成功じゃん!?よかったね!?と思わないと、あまりに騙された4人の学生たちが悲しく描かれていて、、、
最後の方にかけてカオスになっていくが、もう薬飲まされてラリって、自分でもよくわからないまま物事が進んでいく。
振り返れば、最初からダニーに対してみんなだるがっていたのに、ペレだけ優しくしていたのも怖いですね。
怖いというよりも狂気に愕然とするという感じ
内容がやばすぎて、気がおかしくなりそうな映画
生贄や人身御供という文化がかつてはあったという知識があるので、完全なフィクションでありながらもリアリティを失わないところが恐怖感の演出に一役買っていることだろう。人喰い族とレベル感的には同じ。
藤子・F・不二雄が短編で描いたミノタウロスの皿、にも通じる文化的な相違という観点でも捉えられるし、
単純な猟奇ホラーとしても見れる。
個人的には単なる猟奇ホラーな映画として捉えている。
要は、単なる殺人でしかない。
こういう話は、ホラーやミステリー小説でも度々描かれていて、よく見る内容でもあるのだけど、描き方や映像を通して見ると、また異なる迫力がある。
映画として全く好きにはなれないけどね。
美しい映像と狂気の人間(グロ耐性必須)
ゲーム「エルデンリング」が一部参考にしているということで鑑賞
美しい北欧の映像が本当に素晴らしかったです
その対比の様にグロテスクなシーンを容赦なく映像化していました
グロ耐性がない方は絶対に見ない方が良いと思います
ホラーというよりはカルトや異常な集落をテーマにしているので好みが分かれそうです
依存性が強い主人公の女の子がカルトにハマっていく様は何とも言いがたかったですね
それにしても全体的なクオリティが非常に高いです
このアリ・アスター監督とラ・ラ・ランドのデイミアン・チャゼル監督は30代です
例え才能があったとしても一朝一夕で作れない映画を、その若さでこのクオリティを叩き出しているので、正直に勇気と焦燥を感じてしまいます。
圧巻です。
序盤は助長に思えるシーンが多いが、後半の構図はお見事
家族の繋がりによって両親を道連れにした妹、そして家族の繋がりを断ち切られた主人公。
その主人公が彼氏と友人一行と共におかしなお祭りに参加させられるという物語ですが、奇妙なお祭り、命が巡るという宗教的観念をコミュニティで形成している集団に入って来た「客人」というポジションで、それぞれの立場で「儀式」と向き合った結果、悲惨な目に遭うというあらすじです。
とにかくまぁ、語るべきことは多いのですが、メインストーリーである「主人公」と「その彼氏」との構図がお見事。
一番最後のキモになるシーンが「痛みや恐怖を感じない薬が全く効果が無く、生贄が泣き叫び、外の住人達も一緒に泣く」というシーンなのですが、つまり「村の娘」とセックスをした彼氏に「惚れ薬」は効いておらず、完全に「自分の意思で浮気をしている」。
そして「同じ感情を共有する」という形でコミュニティを「家族」たらしめている「泣き叫ぶ」という行為を最後、主人公だけが行っていません。
そして、「動く事も話す事も出来なくなった彼氏」もね。
つまり二人だけが正気のままで儀式の最期を迎え、主人公は「満面の笑みを浮かべる」。
儀式に巻き込まれたという体を取りながらも結局は「自分の好きなようにした」んですね。
そして恐らくはこの後、新たな女王は、
語る必要もありません。
こういう雰囲気大好き
シンプルに宗教系の話が好きなので面白かった。
信者たちの狂気や、クスリでトンデる描写がよかったです!黒人の人が頑張ってたのにレポートテーマパクられたり報われなかったのは悲しかった(写真撮ったのはだめだったけど笑笑)
いや・・・なにこれ?
すみません。私の理解力不足で正直、よくわかりませんでした。
ですので星はつけません。
見た率直な感想は、なんか悪い夢見たな・・・という感じ。
救いもないし、すっきりもしないし、よくわからないものはよくわからないままだし。
結局、村の儀式のためにいけにえとなるべく主人公たちは村に連れてこられて、惨殺されたという話ですよね。
あと、外からの血を入れ込むというのもあったか。
二時間半近く見て、これ。なんか釈然としない。
気味悪いな~。カタルシスが一ミリもなかった・・・
『種の保存』
白夜の真昼間、衆人環視の中で平然と行われる儀式・・・
というより「惨劇」・・・眠気が吹き飛ぶ面白さでした。
2020年(アメリカ)アリ・アリスター監督作品。
『べデレタリー継承」の監督の最新作。
暗闇の怨念を描いた「べデレタリー継承」より白昼の恐怖、
「ミッドサマー」の方がずっと上級の仕上がりです。
大学の卒論を仕上げるために、ダニーの恋人クリスチャンとその男友達3人の
合計4人は、友達のペレの生まれ故郷・スウェーデンの奥地の村へ、研究と取材の旅行に
出かける.
これは初めからペレの計略で、彼らは「夏至祭・・ミッドサマー」の生贄だったのです。
ダニー(フローレンス・ビュー)は精神の不調から無理心中した妹の事件を引きずって、
恋人クリスチャンは腰が引けてます。内心、面倒臭い女・・と思っている。
村のコミューンに着くと、男達は白い衣装・・・まるで修道士のようです。
女達も白い長着に金髪を伸ばして頭には花輪飾りをして、ロマンティックです。
が、最初の儀式。
老人2人が高い崖に運ばれて自らの意思で身投げをします。
割れる頭蓋、花弁のように開く脳髄。
もう1人の老人は足から落ちて脚がひしゃげて、砕けています。
(注!この老人が、ヴィスコンティの映画『ベニスに死す』の美少年、
(ビョルン・アンドレセンの48年後の出演作だったと最近知りました)
そこに若い娘がハンマーを振り上げて、老人の頭蓋を叩き潰すのです。
このシーンで、この映画のやろうとしている事が飲み込めて来ます。
ここで私も突然ホラーに覚醒!!
クリスチャンと仲間も、なんとも言えない興奮状態に陥り、覚醒します。
コミューンでは薬物がごく自然に使われています。
そして長老がルーン文字で書いたという聖典。
人文学的好奇心と凄い論文を書いて驚かせたい・・・
撮影の許されなかった聖典を夜中に撮影に行くジョシュとマーク。
(そしてその夜から忽然と消えるジョシュとマーク)
90年に一度開催される「夏至祭」。セレモニーは続き、
クリスチャンには、「性の儀式」が、半ば強制されるのです。
(コミューンに新鮮な血脈を入れる為の種付け)
ここも嫌らしいけれど、目を塞げない・・・マジマジと直視しました、笑。
更に恐怖の儀式はエスカレートして・・・
いったいデニー、クリスチャンとマーク、ジョシュの運命は???
こんな美しく長閑な白夜の北欧、コミューンの秘密。
ホラ話だと思います。
(スウェーデンの人は、場所をカタられて怒ってませんかね?)
《こんな映画、最近観たことない。独創的で、新鮮でリアリティがある》
この映画の完成度は高い。
摩訶不思議な2時間半の擬体験でした。面白かった。
過去鑑賞
過去鑑賞
期待しすぎたかな。
ずっと観たいと思っていて、ようやく観られた作品。
グロいシーンが唐突にドアップになったり、食べ物関係の気持ち悪いなぁと思うシーンがあったり、突然複数人の裸を見せられたりと感情があっちこっちにいって少し疲れた。
グロいシーンドアップは本当勘弁してほしいですね…。
とりあえず思っていた面白さはなくて、がっかり。期待値を上げすぎたのかも。
ですが例えようのない気持ち悪さは凄かった。
評判を聞いて、観ました。
私は、鬱病を20年患ってるので、観るのを躊躇っていました。
しかし、見始めると、
主人公が抗不安薬を服用してるので、精神的に病んでるのか、精神疾患なのかわかりませんが、なぜか主人公にイライラしました。
全く面白くなかった。
物語もダラダラ長く、何回か観るのやめたくなりました。
製作陣が「狂ってるでしょ、この映画」と主張しているような、設定、演出、音楽がうざい。
グロイ描写や性行為の儀式もウザイ。
それが、怖さなのでしょうか。
2度は、観ないです。
考察も読みましたが、こういう文化もあるというだけで、何も感じれないからです。
時間の無駄でした。
評価できる部分は、主人公のリアルな演技力の高さくらいでしょうか。
集団の気持ち悪さ
ホラーは好きだけどグロは苦手。自分が観た中ではソドムの市とか食人族と同じ気持ち悪さ。それにカルト宗教的気味悪さも加わって嫌な感じ。長いので半分観て後日、と思ってたら展開が気になって夜中最後まで観てしまった。集団で意味不明な同じ動きや叫び?が繰り返されそれが本当に苦手(グレコリオ聖歌とかも気持ち悪く感じるタイプ)これがコミューンの人々には一体感や一人ではない安心感に繋がるんだろうか。 そもそも現代ではタブーな事も過去は平然と行われてたし今も少数部族などでは行われてたりするし、それを踏まえると何が正しいのか根本が揺らいでくる。外部から訪れた客が殺されるけど食べてるのかな? 命の循環とやらで自ら命を差し出して犠牲になる行為は納得できるかもしれないが同じ数の赤ちゃんが生まれてくる予定は?意図的に近親相姦で作った奇形の子もインパクトある割に少ししか関わってこないしこのカルトのコンセプトがはっきり知りたかった。 主人公が参加させられたダンスはずっと同じ方向に回り続けた方がきつくて良かった気がする。 1回の性行為でちゃんと妊娠するのか疑問。主人公が泣き叫ぶと周りの人々も全くコピーのように泣き叫ぶ。性行為も全員で同じ喘ぎ声を出す。これが守られてる感覚を生み出すのかな。女王になった主人公は花の冠までは良かったが最後の全身動きづらいほど花だらけの格好は最早綺麗を通り越して不気味だった(テレビドラマ奇妙な出来事で木に取り込まれ一体化した人に通じる)
ふわふわ終わった~
・思ったよりグロくないし怖くない ホラー苦手でも一人で観られた
・期待値上げすぎて思ったよりおもしろくなかった笑
・自分だったら登場人物のうち誰と同じ行動取るかな?って考えながら観るとより楽しそう。
(自分はダニーっぽいところもありつつ、たぶんクリスチャン。
中立でいようとしてだれかを傷つけるあたりがわかる!となった。)
・ダニーの状況を思うとクリスチャンの言葉たちは「おいおい」だったけど
実際一番冷静に状況を観てた人はクリスチャンじゃないかなと思ったり。
あの村の文化に適応しようと頑張ったりしていてけなげだった。
・なんだかダニーやクリスチャンが悪者という感じで騙されがちだけど
この映画に悪者は一人もいなくて
ペレに出逢ってしまったことが不運だったね、としか・・・。
・登場人物それぞれの性格をもっと深く細かく描いていたら
死んでしまった時にもっと悲壮感が感じられたかもしれない。
なんだか、「ふ~ん友達なのね」「なんかこの子あほっぽいな」とか
思ってるうちに死んじゃったので「あ~死んじゃった」くらいの感想しかなく。
・心理描写ももう一段深かったらよかったかもしれない。
心の動き方が「なんで?」って感じだった。いちいち考える必要があって。
なんで泣いた?あ、急に戻った。ここは大丈夫なんか。いやダメなんかい!みたいな。笑
その不安定さが映画全体に「歪み」を加えていていいといえばいいんだけど…。
・主人公カップルのいちいち喧嘩っぽくなる感じとか
男友達に距離置かれてる感じが自分の恋愛後期と重なって
客観的に見るとこんな状況になってんねや、となんだか勉強になった笑
・クスリやってBAD入ってる時の視界の再現も勉強になった(なんの笑)
でも海外行くと割とナチュラルに大麻とか勧められるらしいし
荷物を見知らぬ人に預けちゃいけないなあとか、
そういう観点でも勉強になった。
【疑問点】
・結局ペレがわざと連れて行ったのかがわかんなくて気になる。
最後黄色い建物が燃えてる時はもうあの村の民として一緒に
「悲しむ儀式(?)」をしてたからペレは全部知ってたのかなあ。
・最後ダニーがふっと笑ったのはよかった。
女王になって担がれて、状況的にももう元の生活には戻れないだろうし
戻る気も起きないだろうからダニーはあのままあそこで生きていって
72歳になった飛び降りるのかな。
・ダニーの両親って結局妹と一緒に死んだんだっけ?
ほかの方のレビュー観る限り伏線があるらしいので
考察レビューとかも色々見てみようと思った。
とりあえず弾丸海外旅行が怖くなる映画でした!!!笑
胃もたれする
映画自体は思ったより怖くなかった。
明るく色彩豊かな映像と対比して人間の本能の部分が剥き出しになってて面白かった。
主人公の空気感が周りと少しズレてる所も絶妙にリアルでハラハラしたし、彼氏の何事にも一歩踏み出せない、流されやすい性格も共感できる部分があった。見方を変えればハッピーエンドなのかなあ?
ただ、綺麗な映像とカルト系特有の不気味さが胃もたれした…そこがミッドサマーの良さなんだけど!!
胸糞カルト的なのに、神秘的
カルトと地域の風習。
線引きが難しいよね。
生命サイクルとして72歳以上は自死とか、死んだ者の名前を受け継ぐ輪廻の思想とかは、まだ意味分かるな。
18歳から36歳まで外部の血や贄の獲得の為に外の世界へ触れてるのに、疑問も持たずに共同体に帰って来るって、なかなか強固な風習だよね。
陰鬱な冒頭から一転、美しい色彩と景色、奏でられる音楽、
内容は胸糞カルト的なのに、何故か神々しい。
晴天前提の儀式だけど、雨降ったらどうすんの?、って思ってしまったけど‥
90年に一度だから、神殿ごと燃やしてもまた建てればいいのかな?
女王になったダニーは、そのまま風習を引き継ぐの?
外部の者の思想がそんなにすぐ変わらないだろ、って思ってしまうけど、洗脳ってそんなものなんだろうな‥
胸糞悪い筈なのに何か神秘的な余韻。
いやぁ思いがけずに、個人的に好きなジャンルな映画でした。
知らんけど!
ホラーはそんなに好きじゃない
皆が騒ぐから気になって見た。まずまずホラーもグロも苦手な自分が楽しめるわけなかった。
くすりともする場面なかったし出来るわけがない雰囲気だった。画面越しに気まづかった。でも一緒に喘ぐシーンはちょっと面白いけど笑ってしまうほどではない。
グロ部分飛ばせたと思ったら不意に思い出されてこっちがダメージを受けた。もっとえぐい仕打ちや性器関連で気持ち悪いのがあるかと思ったけどそんな酷くはない。でも気持ち悪い。
経験として見る分にはいいと思います。記憶から消えることでしょう。
次のハロウィンはミッドサマーのコスプレして歩いたら楽しそうだ。
明るくてのどかな風景と可愛らしい衣装にこれからどんな恐ろしい事が起...
明るくてのどかな風景と可愛らしい衣装にこれからどんな恐ろしい事が起きるのかと期待値が高まる前半。
中盤突然のグロシーンに見るの止めようかと思ったけどそこを耐えて見続けると何故か嫌悪感が無くなり清々しい気分にさえなってくる。
もうこれはコメディと言ってもいいと思う。
ラストの大量の花から顔だけ出てるダニーとクマのクリスチャンには笑うしかない。
もう一度見たいとは思わないけど印象に残る作品ではあった。
展開が全て読める。
最初の時点で、どういう展開で誰が黒幕でどういう順番で消されていくのかがほぼ読めてしまう。
こんなに読み通りに進む映画ははじめてでした。
明らかに価値観がおかしい村にいながら逃げようとしない、明らかに怪しいと理解しながら手をつける登場人物の頭の悪さでいまいち入り込めない。
終いにはただのサイコグロシーンを見せられる。
これを作れる監督は頭がおかしいと思うが、芸術家とはどこかしら価値観が変わっているもの。
が、上記に述べた通りストーリーはクソである。
分かり合えない孤独と、分かち合う狂気
暗い世界から、明るい世界へ
村へ向かう道中、カメラが宙返りするところから、すべてが反転した世界に入ったことを視覚的に体感出来る。
主人公の経験した家族との断絶、恋人との不調和。
そんなものとは無縁の世界がホルガ村だ。
ホルガ村では一般的にタブーとされるものが、あからさまに共有される。
生理、セックス、老いと死、殺人、近親交配、動物の解体。いわゆる「子どもは見るな」というものを子どもの頃から叩き込んで教条としている村。まるで夜も暮れない白夜のように、すべてが白日の下に晒されている村。
愛するものから断絶され、孤独に怯える主人公は、そんな村に徐々に取り込まれていく。
現実社会では最も信頼する者とすら分かり合えないのに、村では誰もが共鳴するように全てを分け合っている。
終盤、薬で麻痺したクリスチャンの視点で「クリスチャン、動かないで。あなたはそこでただ目を開けてみていて」というシーンが面白かった。名前も意図したものだろうし、さながら観客に直接、席から立つなと押さえつける演出。これはキリスト教社会では特に強烈なメッセージ性を持つのだろう。村が大切に祀っている聖典が、ただの落書きにしか見えないのも宗教への皮肉に思えて笑えた。
普段、分かり合えない孤独に苛まれているので、まんまと村の魅力にハマり、愚鈍で無作法な男たちに苛立ち、全てを分かち合えることにカタルシスを覚えた。
おそらく主人公はもう村を離れないだろう。首謀者の友人と、この経験を最も共有できる間柄として結ばれるかもしれない。そして年老いて死の儀式の時、石の舞台に家族の幻影を見て、やっと楽になれると思いながら飛び込むのかもしれない。
でも、そこに人としての原型はない。人は分かり合えない影があるからこそ、その輪郭を形成している。最初からすべてを理解し合おうとすることが間違いで、決定的なすれ違いを感じたら、怒りを溜め込むより、諦めて離れる必要性がある。
ストーリーに真新しさは感じなかったが、映像のメッセージ性は強烈だった。
「イニシエーション」と「訣別」
70年代によく作られたカルト系B級ホラーの要素を持ちつつ、あくまでもポシティブな狂喜を描き通す、という斬新さも感じた。
もし古代儀式を現代に再現したら、もしかしたら同じようなものかもしれない。
生贄という、それ自体は神への捧げ物として祝福されたものであるはずだが、やはり生贄の儀式は見ている側にも心的苦痛を与える。悲鳴や奇声をあげてトランス状態に陥ることは、罪悪感や恐怖を軽減させる効果もあるのだろうと思う。
自然信仰の祭り=祀りを肌感覚で理解できる日本人には、村で行われていることがそれほど奇抜で滑稽には映らないのではないだろうか。
しかし他のレビューでも突っ込みが多かったが、90年に一度という設定の割には、村民が凄惨な儀式に慣れすぎていると思うし、そのサイクルにした必要性が全くわからない。
まあ現代で4.5年単位でこの祭りが行われていたら、流石にSNSなどでバレそうだとは思うが、せめて日本の式年遷宮ように20年周期ぐらいが妥当なのでは。
しかもペレのように、この祭りのために戻ってきた村人も少なくない様子。ということは、生贄を捧げることで村民の人口を一定に保つ必要性も全く感じない。村の中で近親相姦しなくても、いくらでも外部へ赴き、血を新しくすることはできる。
そういう地理的制約があいまいなままなので、カルト的コミューンからの脱出劇というスリリングさは弱い。
主役のダニーが彼氏への依存体質から脱却するというもう一つのストーリーが平行して描かれるが、彼女らの身に起こる倦怠期はカップルに起こりえる普通のことだよな…と思い返すと感情移入も今一つ。
口コミで日本の若い女性たちにヒット、と話題になったが、優柔不断で煮え切らない彼氏を最後の生贄にした主人公への共感と、「女王」という権力の甘い響きに自分の身を重ねたのかもしれない。
しかし私には、「だからなに?」という程度の感想しか持つことができなかった。
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