「怖いのは暗闇だけではない」ミッドサマー はやおさんの映画レビュー(感想・評価)
怖いのは暗闇だけではない
本作品では、暗闇での恐怖シーンはほとんどない。ある程度ホラー映画と呼ばれる作品は見てきたが、こんなにも明るく色鮮やかな映像で恐怖を植え付けることのできる映画はこの作品だけだろう。この「ミッドサマー」が我々に伝える恐怖は、主に「狂気」によるもので、特に集団で行われる狂気的な奇行にはなんとも言えない恐怖と不快感を禁じ得ない。
物語はいたってシンプル。話の流れもホラー映画の王道を沿ったようで斬新さを感じないが、映像、演出の面では際立っている。R指定を受けてることからも分かるように、もちろんエロ・グロの激しい描写が随所にあるのだが、よくあるスプラッター映画のような安売りではない。その描写を際立たせる背景や演出が怖さのレベルを引き上げているため、その出来事自体が持つ意味を超えた怖さを我々に与えてくれる。映画においてエロの部分、つまり性的なシーンには普通恐怖を感じないだろうが、本作品では持ち前の狂気的な演出によって、その面でもグロに劣らない仕上がりとなっている。ホラー映画ありがちな「お色気シーン」や「サービスシーン」が、本作では恐怖そのものを表現するワンシーンとして成り立っていることに驚いた。
舞台となった村の人々がおこすアクションも、一風変わった演技・演出が加わって、恐怖を与える要素になっている。特に、泣く・笑う・苦しむといった行為やリアクションを皆で共有して大げさに行うというシーンが複数あるが、彼らの行動には誰しもが不快感を感じただろう。
ちなみに、本作「ミッドサマー」では、びっくりに頼った恐怖シーンはない。これは監督の前作「ヘレディタリー 継承」と同様。
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