劇場公開日 2019年8月24日

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「「不揃い」という思想」お百姓さんになりたい Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「不揃い」という思想

2019年9月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

自分は単純に、題名から予想されるような「お百姓さんになりたい」人のためのヒントを描いた、“土と野菜の匂いあふれる人間ドキュメンタリー映画”なのかなと予想して観に行ったのだが、実際にはいくつものテーマをもつ密度の濃い作品であった。

内容として、一つには「自然栽培」のサイエンスに関する、様々な側面が紹介される。
植物自身のもつ生育力や抵抗力を高める栽培法を採用しないと、たちまち満足な収穫ができなくなるリスクと隣り合わせの中で、試行錯誤している。パラメーターは10種を超え、1年単位というのは、農業ならではの厳しさだろう。
種子は自ら採取し、「自然では必ず不揃いなものが出てくるが、それで良い」と、規格品の購入には懐疑的だ。交雑も恐れない。
ただ正直なところ、見終わった今でも、本作で描かれる「自然栽培」と、有機農法(化学肥料未使用、農薬フリー、遺伝子組換えなし)の間の区別は、まだ自分はついてない。

一方、サイエンスだけでなく、農作物を作る人間側の話も扱われる。
「お百姓さん」志望の人たちの姿だけでなく、障がい者の人たちの働く姿などにも長尺を割いている。
代表の明石さんは、障がい者や子供達を受け入れる活動にも、真剣に取り組んでいる。自然と格闘するサイエンティストというだけでなく、「子供には五臓六腑の底から、農作物を体験して欲しい」と語るような活動家だった。
公式サイトには「野菜も人も不揃いが自然」とあり、監督は本作を制作するにあたり、「自然栽培」農業と人間社会のあり方を、一体のものとして構想したようだ。

Imperator