「はしにははしの熱さがあるんだよ!」アルプススタンドのはしの方 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
はしにははしの熱さがあるんだよ!
ノーマーク作品ながら、みなさんのレビュー評価が高かったので鑑賞してきました。そして、その評判どおりいい作品でした。高校生の青春ストーリーが、有名俳優を起用しないことで、等身大で描かれていることに好印象をもちました。
初めは、母校の野球部の単なる応援動員で参加した高校生が、応援を通じて自分の生き方を見つめ直す流れが心地よかったです。「しょうがない」と自分を納得させ、それが正しいことだと折り合いをつけることで前に進もうとしていた若者たち。しかし、必死でがんばる友達の姿から、それまでの自分の考えに疑問を持ち、変容していく姿が熱いです。
「しょうがない」は、報われない自分を救う言葉ではない、「ここで諦めろ」と言ってるようなものだ。それに気づいた時、それまでなんとなくやらされていた応援が、全力の応援に変わり、折れかけた自分の心をも奮い立たせる。そんな終盤の盛り上がりが、とにかく熱いです。
そして、ラストの締めがこれまたよかったです。努力の全てが報われるわけではありませんが、報われなければ全てが無駄になるわけでもありません。努力や諦めの悪さがカッコ悪いなんて、いったい誰が決めたのでしょう。報われない悔しさを表面的に取り繕い、平静を装うほうがよほどカッコ悪いです。若い世代はもちろん、若い頃に苦い思いを噛み締めた大人も、本作から感じるところは大きいのではないでしょうか。
それにしても、タイトルが実にいいです。スタンドのはしの方に居心地のよさを感じる自分には、実にしっくりくる内容でした。中心には中心の大変さがあるように、はしにははしの熱さがあるんだよ!そんなことを強く感じさせてくれる作品でした。