「スカした人間も熱くさせる映画のちから」アルプススタンドのはしの方 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
スカした人間も熱くさせる映画のちから
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自分はスポーツに情熱を傾けたことがなく、集団的熱狂も苦手なので、おそらくこの映画の主人公たちと同じく、野球部の応援に駆り出されても「スタンドのはしの方」に座っていただろう。とはいえ、だからといって主人公たちに簡単に感情移入できるわけではない。4人の高校生たちは、試合の熱狂に乗り切れない鬱屈を抱えてはいるものの、自分たちの鬱屈と向き合って、次第に熱狂を手に入れていく。こちとらそんなに素直には出来ていないのである。
なんなら、まっすぐでよくできたお話だと思う。そして「まっすぐでよくできた」と感想を持った時点で、やはり見方が相当にスカしている。正直、あまりに評判が高いので劇場に行ってみたものの、入る店を間違えてしまったかと、自業自得を呪いそうになった。
ところが、熱を帯びて応援の声を上げ始めた四人を、カメラが引いて応援する他の生徒たちや観客を一緒に映すようになった瞬間、思いがけず熱いものがこみあげてしまった。まんまとこの映画に乗せられて、なんとも気持ちいい後味だった。
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