ザ・ゴーレムのレビュー・感想・評価
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人間は神のまねごとをしてはならない
リトアニア、1673年。第一子ジョゼフを失ってから夫ベンジャミンの子供を7年間授からなかったハンナ。レベッカの結婚式に、疫病に冒された異教の者たちがやってきて一人の村人を殺してしまう。娘の命を救えという横暴な要求に祈る村人たち。そんな中、ハンナが復讐を誓い、ゴーレムを作ろうとするのだった。
侵略者ウラジミールが再度襲撃してきたり、ハンナがちょっと憎んだ者たちへの復讐劇。やり過ぎ感満載ながらも、ゴーレムは敵彼女を守り続ける。それがたとえコミュニティ内の同胞であってもだ。
そして銃弾を受けても平気なゴーレムが凄い!しかも銃弾を受ける度にハンナが苦痛がよぎるのだ。シンクロしてる!思い出したのは『E.T.』の一コマ。結局はハンナを守るためだけで、仲間が殺されても何もしない守り神。亡くしたジョゼフを思いつつも、ゴーレムを消し去らねばならない辛さもあったけど、なんだか急にエンディングを迎えてしまった。終盤をもっと感動的に描くことも出来たろうに・・・残念。
亡くした息子への妄執に囚われた母親が造り出したというのが新味のフランケンシュタインのユダヤ教バージョン。ユダヤ人迫害の歴史のリアリティに裏打ちされているので奥深いモンスター物となっている。
①ゴーレムというとユダヤ教版「大魔神」という漠然としたイメージがあったが本来はどうやらそうではないらしい。②ホラー映画という括りにされているが、それほど怖くない。それより、息子の事故死した理由(何故神は息子を御元に呼ばねばならなかったのか)を知りたくて夫にユダヤ教の聖典や禁断の書をこっそり持ってきてもらって(男性しか近付けなかったというジェンダー問題がここにも)読んでいるうちに、ゴーレムという土から人を造るという秘術を知り息子を生き返らせるという妄執に囚われていき実現させてしまうという展開が面白い。(ある意味母物。)③中世の東欧(リトアニア)のユダヤ人コミュニティの描写、中世の疫病(ペスト)パンデミックの様とそれをユダヤ人のせいと考え差別し迫害する歴史的背景がキチンと描かれているので、チープなモンスター物に堕していない。④リブ・ウルマンにどこか似ているハニー・フルステンベが、暴走する母性愛だけでなく、夫に色目を使う女に憎しみを抱いてしまう女臭い部分も持ち合わせるハンナをオーバーアクトにならずに好演。最後の口づけで自分が造り出した息子の代わりのゴーレムの口から巻物を取り出し落とし前をつけるシーンが哀切。⑤ラストの村の焼き討ちと虐殺シーンとはユダヤ人迫害の歴史の映像を見せられているよう。
テーマや雰囲気は好きです
イスラエルの有名な逸話ゴーレムは実は邪悪なものだったというゴシック調ホラー。ホラー色はやや薄く単なるオカルトな作品になっています。子供を無くした母親がトラウマから秘術を使い子供を甦らせる。スティーブン・キングのペットセメタリーを思い出してしまいました。怖さや話の展開は叶いませんがちょっと変わったホラーとしてまずまずの出来だと思います。
用途・用法は守りましょう
1673年リトアニアの町から離れたユダヤ人の村が因縁をつけられ襲撃されて対抗する為にカバラの術で創られたゴーレムと創った女の話。
疫病で町の人間が次々に死ぬのは異教徒のお前らの呪いのせいだと、自分の娘が病んでいるのにお祭り騒ぎしやがってと、因縁をつけて村人の結婚式を台無しにするは村人殺すは妊婦の腹殴るはの町から来た男達に対し、屈する村人達の中で一人の女がゴーレムで対抗しようとするストーリー。
結構早い段階でゴーレム誕生から、某一子相伝の暗殺拳もびっくりの一暴れ。
めちゃくちゃ高まったのに、そこからゴーレムの説明が入った後中弛み。
20分ぐらいまるまるいらないんじゃないかというドラマをみせられる。
後半、やっとこ本題が展開し始めると、激しいし、いきなりテンポが良くなるしで面白いのだけれど、結局オチまでご丁寧に説明してくれたところから外れることなくみせるばかり。
丁寧なフリオチといえばそうなのかも知れないけれど、序盤で一度上がったテンション程はもう高まらなかった。
מת ➡ אמת = death
ゴーレム・チャイルドは、心臓をもぎ取るのが お・す・き 💗 ふざけました。謝るぐらいなら、書くなってか? (余談:映画サイトIMDbではThe Golem Kidと紹介されている。)
この映画は「Der Golem(ドイツ語題名1915年公開、1部フィルムが行方知れず)」というドイツ映画のトリロジーの第1作と基本内容はほぼ似ているので、リメイク作と言う事が出来る。このドイツ映画は、個人的には、サイレント映画というジャンルよりもむしろ劇場での芝居を見ているかのようで、過度に彩られてはいないセットやろうそくや人物に当てる照明など凝りに凝っていて、また多数のエキストラの数などが挙げられ、その上、わかりやすいシナリオとなっているので、今見てもサイレント映画とただ単にジャンル分けできない映画であり、ラストの意外な終わり方もこの映画が高い評価なのが、うなずける要素となっている。そして本作はというと、映画の冒頭、ゴーレムをなだめようとユダヤ教の教会でラビが呪文を唱えているところから始まる。そこにはすでに多くの人が無残な姿になっていた。ラビの後ろでその様子をうかがっていた少女が、まさかの行動をとった事で、敢え無くゴーレムに倒されてしまうラビ。その少女は後に成長した姿でご登場します。
出だしは、とても興味をそそられるシナリオなのに、その後は、主人公のハンナとベンジャミン夫婦の冷め切った仲や彼女の触れられたくない過去、子づくりの後、屋根裏部屋に勉強と言いながら、ベンジャミンとわざと距離を置くようなふりもしている。何処までも限りがないようにゆっくりと話が進んでいくのでこの映画、最初に登場した凄惨なシーンは何だったのか?わからなくなり、見るのを諦めようかという思いも.....。しかし、ものの17分が過ぎた頃より話の展開が見えてくる。舞台は1673年のリトアニア。第2次世界大戦中、あの杉原千畝がユダヤ人に旅券を発行した地。リトアニアでのハンナの住む村は唯一と言ってもよいほど世間から隔離された土地柄からか伝染病の難を逃れていたが、ある時を境に変わってしまう。強い伝染性の病が蔓延している土地から、凶暴なブラディミール(日本語:ウラジーミル)が疫病に侵された娘のことを理由に押しかけてきて、村人の自由を奪い、命も容赦をしない構えでいた。村人をすでに1人射殺した後で.......
Cursing us with your dirty spells.
Unless you reverse your spells, and save my daughter.
I will show you and your God, "who is in charge."
Until my daughter is cured, no one leave!
Anyone we catch outside the village will be executed.
ユダヤ教を信じる異教徒に対する偏見と誤認の入り交ざった差別的思想が生まれている。やり場のない心、多くの仲間が、疫病の為、無慈悲にも次から次へと亡くなっていくのを目の当たりにし、憤りの矛先を疫病のないユダヤ人の村に向けられても仕方のない時代なのか?
そんな言いがかりともとれる彼らに対して、ハンナは、村の長でもあるラビと村の男たちの前で..........!
"We should fight back."
結婚したての妊婦の妹のお腹を殴り、死産に追いやったブラディミール。聞く耳を持たない腑抜けの村の男たち。そんな奴らにゃ~ッ! 任せられない! ハンナは禁断とされるゴーレムを召喚することにする。
The 72 sacred letters of God are hidden in the Torah.
In order to reveal the code, one must use this power
of the holy merkabah.
The holy merkabah combines all of the kabbalistic elements
together representing the creation of man.
The 72 sacred letters come together to create the hidden name
of God in order to create a Golem, one must use virgin, unploughed
soil, from a mountain or forest.
The hidden name of God.
Let there be life.
村はずれに住み、白魔術的雰囲気を備え、薬に関しては、人知を超えたほどの才能のあるペーラ。この人はこの物語のキーパーソンの1人と言える。ハンナだけでなく村全体を心配して忠告を敢えてしている。
What is this boy?
-I have done it.
..................................
It is heartless monster, and we must take it back from whence
it came before it is too late!
You have created a pact with the sitra-achra.
...................................
I saw you destroy our enemies, but also the ones we loved.
Promise me, as soon as Vladimir is gone,
you take that parchment out of its mouth,
and put an end to this golem child.
1915年の映画は、村の女性に恋をしたことがきっかけでゴーレムが大暴れするシナリオとなっているのに対して、2018年版は、ハンナの心の闇の部分を以心伝心するかのように彼女の心をゴーレム自らが受けとめ、勝手に人を襲ってしまう恐ろしい魔物・魔人となっている。その上、ゴーレムが傷つけば、ハンナも痛みを感じれるようになった事が、精神だけでなく肉体の変化に対しても共有する究極の親子愛を描いていて、7年前に亡くした我が子をゴーレム・チャイルドに彼女の思いを投影している。あれほど、隠れて避妊までして子供をまた亡くしはしないかという恐怖に勝てないでいた彼女が......。とっくにペーラの忠告なんて、どこかに吹っ飛んで行ったハンナさんでした。本作でも取り上げられているユダヤの教え。1週間が何故7日なのか? ユダヤの人たちは7という数字を繰り返しの単位と考え、この映画でも結婚式で新郎の周りを新婦が7回まわる儀式めいたものも登場する。吉兆とされる数字は、8。そんでもって不吉な数字は映画「IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり。(2019)」に出てくるルーザーズ・クラブの中華レストランに集まるメンバーの数、6。
映像は、精巧なギミックを使った凄惨であり、また手足がちぎれ、無残な無数の死体を描いたゴア表現が挙げられ、それとは相反するように、日中の屋外でのハンナとゴーレム・チャイルドが一緒にいる映像は、その描写が一幅の絵画のように、またハンナの輪郭が背景に対して、2Dなのになぜか浮かび上がっているように見えてしまう。その丁寧な撮影によって、憂鬱になりがちなシナリオや疫病の蔓延と言う暗い世界の中でオアシス的なものを感じる。
ゴーレム。多くのゲームのキャラやフィギュアとして創造され、またアニメや戦隊シリーズにも登場するユダヤ教伝承の怪物。ここでのゴーレム・チャイルドは、目のきれいな、顔に何の傷もシミもくすみすら見つけることのできない可愛い(。・ω・。)ノ♡と一言で言える少年ですので、このゴーレムとしての無慈悲で残忍なところとのギャップが、この映画製作者の意図と思える。
参考にできる意見か..........
映画、テレビなどのエンターテインメント業界の情報を扱う週刊誌にとどまらず、近年では、色々なディバイスにも対応している Hollywood Reporter
"A Lithuanian woman creates a golem to defend her village in Doron
and Yoav Paz's take on ancient Jewish lore. " のヘッドラインより
「 英語版のイスラエルのプロダクションとしては、アメリカ本土向けジャンルのファンをあっと言わせることはできないが、情報が得られるものへのアプローチは、感情的にも知的にも誠実であり、キャストやクルーによって常にではなくとも真剣に演じられている。」
中華系アメリカ人がオーナーでロサンゼルスを中心として発行されている。
Los Angeles Times "Review: Israeli supernatural thriller
‘The Golem’ delivers a warning " より
「巧妙につくられ、また特異な超自然的なスリラーであるこの映画は、ユダヤ人映画と言うよりは、むしろ「フランケンシュタイン」、「魔女」といったものや、いくつかのコーエン兄弟の映画に似通っているように作られている。」
2018年に日本で公開された映画、「ドント・イット」。そこに出てくるのが14世紀にいたとされるユダヤ人魔術師アブラメリン。グリモワールの書の1つ"アブラメリンの書"を使って、表向きは黒魔術の為に亡くなった息子を召喚する目的と思わせておいて、実は、’母親は違う恐ろしいことを考えていた。’という内容のお話。グリモワールの書に関しては、勝手な解釈として、アニメ「悪魔くん」を代表する人間がシトラアクラの邪気をおびた魔人・魔物を支配する構図は、この書をインスパイアされたとみえ、しかも印象に強く残る、数回唱えられる呪文 ”Eloim, Essaim, frugativi et appelavi” も参考にできる。
主演のハンナを演じたのが、映画「The Loneliest Planet (2011)」という愛していた者が、その軽薄で卑怯な行動によって、人間不信という事が突発的に起こる作品で、この映画にも共通して言えることは、シナリオの流れをつかみにくい印象が残っていた。その主演のニカを演じていたのが本作の主演女優のハニー・フルステンベルク。特異な超自然的なスリラーと称される映画として、彼女の不思議さも重要なアイテムの1つと言える。しかもこの映画には、"sitra-achra"や"Merkabah"やKabbalah book(AKA:カバラ数秘術の書)といった旧約聖書の書物の一つ、または、旧約聖書中の三大預言書など広義のユダヤ教の中に出てくる言葉も多く出てくるので、この映画一本でアニメを何本も書けるのではないか?と思えいるほどあらためて不思議な世界観を描いた作品と言える。
ゴーレム・キッドを演じたこの映画の陰の功労者。この映画.comの不親切な解説がわかるもので、彼の名前すら紹介欄に載せていないなんて....かわいそうなキリル・チェルニャコフ。演技は最高!
Finally パチパチ
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