権利への階段のレビュー・感想・評価
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【”アンタは愛で一杯だ。と精神疾患故に過剰なる投薬を受けた女性は女性弁護士に言った。”今作は精神疾患を患いつつも他者に気遣いをする女性を演じたヘレナ・ボナム=カーターの演技に魅入られる作品である。】
ー 今作が、ドイツで本人の意思を無視した投薬で障害を負った女性と元看護師の弁護士が、大病院を相手に戦い抜いた実話を基にした物語である事に驚くとともに、それをベースにした今作で渾身の演技を見せるヘレナ・ボナム=カーター演じるエレノア・リースと彼女を助けるべく奮闘するコレット・ヒューズ弁護士を演じたヒラリー・スワンクの姿に魅入られる作品である。-
◆感想<Caution!やや内容に触れています。>
・私は、精神病患者に対し、過剰なる投薬を行っている病院は今でも多数あると思っている。
ー 私自身が、部下が精神を病んだ際に連れて行った人里離れた鉄格子のある病院の姿は今でも悔恨の想いと共に覚えている。-
・今作が、琴線に触れるのは、ヘレナ・ボナム=カーター演じるエレノア・リースが最初は軽い統合失調症だったにも関わらず、長年の過剰なる薬物投与により、身体にダメージを受けて行く哀しき過程である。
ー だが、彼女は病院を仮出所してからもその持ちたるユニークさと、周囲の人間(勿論、自分を弁護する事になったコレット・ヒューズ弁護士を思い遣る数々の言葉)にグッと来るのである。ー
■今作では、コレット・ヒューズ弁護士と、モート・コーエン弁護士が必死に、エレノア・リースを助けるために医学書を読み、裁判に向かう過程と、その姿を見た最初は懐疑的であったエレノア・リースがコレット・ヒューズ弁護士を信頼していく姿が沁みるのである。
<ラストは切ない。勝訴しながらも、エレノア・リースは過剰なる薬物摂取の副作用で亡くなってしまう。
だが、彼女の葬儀に集まった多数の参列者の姿を見ると、彼女の人生は無駄ではなかったと思うのである。
彼女の裁判が、当時の15万人に及ぶ精神的病により、過剰なる薬物を施されていた人々を救ったという事が心に響く作品である。
ヘレナ・ボナム=カーターは、私的にも交友が在ったティム・バートン監督の作品の役が印象的な女優であるが、今作を鑑賞すると優れたる演技が光る大女優だなと「英国王のスピーチ」を劇場で観た時の感慨を思い出した作品である。
勿論、ヒラリー・スワンクの熱演も今作の深い趣を支えている事は、間違いない作品でもあるのである。>
マクガイア・シスターズは知らなかったけど、マクガイア・ブラザーズなら知ってる
1985年のカリフォルニア。エレノア・リース(ヘレナ・ボナム・カーター)は精神病院で強制的に薬を飲まされ、副作用に悩まされ続ける。もっとも大きな障害は膀胱疾患だった。フラフラ歩く彼女は公衆電話で「患者の権利を守る会」に助けを求め、元看護師でもある弁護士コレット・ヒューズがやってくる。
精神病患者以外には認められる医師による「説明と同意」は、エレノアのような統合失調症患者には認められなかった時代。副作用についても知り、自分でよくならないとわかっていても薬を拒否できないという趣旨のものだった。まずは退院請求をして、病院を訴えることにしたコレット。法学部教授モートに教えを請い、恋人ロバートが医師であるため強いサポートともなり、信頼されていた。
一審を戦う際、二人で法廷へと向かうとき、「55段ね」と言ったエレノア。階段を下りることがつらい彼女にとって段数を覚えるのが日課ともなっていた。そんな原告側の強い資料ともなる彼女の日記、薬と効果・副作用についてこと細かく記録されていたのだ。しかし、一審は敗訴。さらに様々な医師の協力のもとで争う覚悟を決めた・・・
公判のシーンはそれほど多くないが、弁護士の論戦をロールプレイするところは面白いし、時にはぶつかるも、エレノアとコレットの友情が育まれていく過程も素晴らしい。ロバートとの仲も心配になるほどのエピソードもあるし、エレノアと親しいシスターの様子もいい。女性弁護士の信念と、患者15万人の代表ともなる大義。報酬はほとんどない。さらに、エレノアが看護師であるかのようにコレットを気遣うところは涙が出てくるほどでした。
インフォームド・コンセントの歴史は患者の自由意思という権利から生まれたもので、紆余曲折はあるけど、精神科医療では後れをとっていた。今でこそ患者に薬の説明は普通に行われているけど、こうした裁判によって歴史は変わるものなんだと改めて納得しました。
素晴らしい秀作
堅くて暗い映画と思っていましたが、時間も二時間を切り、ラストは切なく、そしてほっこりする気持ちにさせてくれた素晴らしい映画でした。処方された薬を患者が事前に医師から説明を受け、使用するか判断できるという、当然の権利を勝ち取ったこのエレノア判決のお陰で助かった人々はどれほどいるのだろうと思い馳せました。エレノアは精神疾患から病院で投薬され、腎臓に障害を持つようになり、勝訴するものの、障害が原因で死んでしまう。障害を抱えながらも、他の患者をも助け、勝訴しても賠償金は貰えないものの、同様の被害に合う15万人の患者の代表として、闘ったエレノアをヘレナ・ボナム・カーターが見事に演じている。たまに憎まれ口を叩くところが何とも愛らしい。もう本人にしか見えないというほど素晴らしい演技でした。また、当時のカルフォルニア州では勝訴事例がなかった中で、勝訴するまで無報酬にも関わらず、元看護師の経験から弁護するヒラリー・スワンクは揺るぎない正義感や、全身全霊仕事に従事する姿が全面に出ており、気迫が伝わってくる。当初は弁護士として引き受けたが、エレノアと付き合ううちに人間性に惹かれ、友人として接していたのは、嘘ではないだろう。
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