犬王のレビュー・感想・評価
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熱くロックな琵琶法師
南北朝時代の実在の能楽師「犬王」を主人公にした、ロックオペラアニメ。音楽のモチーフはQUEENなのかな。
呪が解けていく過程は「どろろ」を想わせる。
和風な作画テイストは「かぐや姫の物語」に共鳴している。
新感覚ロックミュージカルアニメーション炸裂。
TVアニメ版平家物語は視聴済みです。
個人的に好きなスタッフ陣が集結した作品だったので、とても楽しみにしていました。
感想
想像以上にミュージカル調のアニメ作品で、とても楽しかったです。
・物語構成
平家物語の派生作品なので、かなり硬派で重たい史実重視な作品になると思っていたので、今回の明るく楽しい現代的な和製ロックミュージカル調の作風は意外でとても楽しめました。
また、犬王と友魚の友情物語としても魅力的で互いに支え合っている雰囲気が猿楽の場面から感じられて微笑ましかったです。2人の異端児の成り上がり物語だからこそ、あのラストはとても衝撃的で辛かったです。しかし、現代における平家物語の伝承の仕方について考えるとかなり納得の出来るラストだったので満足しています。
・ライブシーンについて
今回の猿楽の演出が完全に現代のライブ演出を取り込んだ表現になっており、時代感とのギャップが狂っていて楽しかったです。プロジェクションマッピングの元祖的映写背景、ライトアップの演出などの現代演出とQueenの様な奇抜なロックバンドスタイルが終始楽しく、とても爽快でした。手拍子を求めてくる場面では、一緒に手拍子をしたくなりました。
・声優
今回の声優陣は女王蜂のアヴちゃん、森山未來さん等の本職の声優さん以外の方がメインキャラクターの声を当てられていましたが、とても自然に観れて驚きました。皆さん本当に素晴らしかったと思います。
総評
とても楽しい新感覚和製ロック×ミュージカルアニメーション作品。猿楽の演目内容と物語進行状況がリンクする演出はお見事だったと感じた。
肝心のクライマックスで盛り上がれない退屈感
作り手もキャストも結構有名で良さそうな人選なだけに・・・・、期待し過ぎてしまいました。前半の半ばからテンションが下がっていき、クライマックスでは退屈で眠くなるという映画。正直言って、つまらない失敗作だと感じました。
設定が明らかに手塚治虫の名作「どろろ」なんですが、オマージュなのでしょうか。
序盤はそこそこ良かっただけに、惜しい。
のちに犬王の相方となる友魚が、盲目の琵琶法師になる過去のエピソード。奇形に生まれて孤立無援の犬王が、自由な舞を踊り、生を謳歌する華麗な姿。「この先、どうなっていくんだろう?」と、ワクワク感が高まる良いオープニング、という印象でした。
ところが、それ以降は引き込まれるような、グッと胸をつかまれるようなシーンがなかなか出てこない。心に響くような名場面が無いまま、時間だけが長く進んでる事に気づいて唖然。
この映画、悪い意味でヤバいかも・・・と不安になってきました。
後半になると、もうストーリーとかよりも、長いフェスティバルそのもので魅せる事を主体としている感じ。その肝心の楽曲が長い割に単調で、魅力が足りなくて、やたらと冗長過ぎる。肝心の歌詞も聞き取りにくくて、何を歌ってるのか分かりづらくて、字幕が必要なレベル。歌詞が全部しっかり聞き取れたという観客は、殆どゼロだと思われます。
映像の中だけは凄く盛り上がっているように見せているのだが・・・・それを観ている自分は全く盛り上がれず、共鳴が出来ないという困った事態になってしまいました。
監督はここを一番の見せ場のクライマックスとしているのだろうけど、それを効果的にやるのであれば、ヒットチャート上位に毎週入るほどに魅力的な新曲を持ってくる必要があった。しかし、それが出来てないので、なかなか引き込まれない。単調な楽曲をえんえん長く聴かされると、だんだん苦痛も生じてしまいます。まだ続くの・・・、早く終わらないかな・・・と思うばかりで、終いには眠気が生じてきました。
私は筋金入りのロック好きなので、ロックオペラ風の大胆な試みは大賛成なのですが、映像に出ている和楽器の音が小さかったり、かき消されているのが勿体なく感じます。和楽器も大音量で積極的に取り入れる方向で、この映画ならではの独自性を感じさせる楽曲を作り上げていたら、斬新さも魅力も増して良くなったのでは・・・と思いました。
このライブ・シーンの展開の仕方は、映画「ボヘミアン・ラプソディ」を意識したのかもしれないけれど、これでは音楽そのものに今ひとつ魅力が足りないため、無理があり過ぎました。
それよりはストーリー展開の方を充実させてほしかった。
主演の2人、犬王と友魚がお互いに魅かれた部分が何処なのか、そういう大事な部分での描写が足りないので感情移入がしにくいし、物語の本筋から外れた話に時間を使い過ぎてる気もして、どうにも世界観に入り込めずに、退屈さが増しました。
そして、物語の最後のオチ。
ネタバレは避けたいので言及はしませんが、これがまた酷いもので、呆れてひっくり返りそうになった次第。最初は興味深く見られた犬王の独自な生き方が、最後の土壇場で一貫性の無いものに変えられてしまった失望感。
アニメ映像としての視覚的な部分では見事なシーンがあったし、抜粋としてなら良いシーンもあるので、楽しめる要素はそこそこあるのだが、この映画で何を伝えたいのかという本質的な部分で、ちょっと違和感を感じたし、物足りなさを覚えたまま、モヤモヤした気分だけが残りました。心に残るものが無く、この作品を通して何かを伝えたいと言う映画としてのメッセージ性は薄いと感じました。
映画館に行くと、周囲の観客の反応を肌で感じる事が出来るのが、メリットのひとつです。上映中、観客の数が多かったにしては、全体に余り盛り上がってない空気が伝わり、終わった後の様子も何処か陰鬱な感じ。本当に面白かった映画の場合、終演後に観客から明るい笑顔や高揚感が多く見られますし、初日に観た「トップガン マーヴェリック」では、エンドロール後に大勢の観客から大拍手が巻き起こった程です(私も凄く良い映画だったので、一緒に拍手に加わりましたw)。この映画ではそういうのが見られず、イマイチ微妙な映画を観た後、という感じの虚ろな空気感でした。この映画、原作は未読なのですが、監督の料理の仕方がダメだったんでしょうか。感動が得られないし、とても人にはオススメ出来ません。
あと蛇足ですが、隣に座っていたオタク風の男性客、鼻息がうるさくて、最悪でした。静かな場面になると、この客の鼻息だけが大きく「フースー、フースー」聞こえて、うるさ過ぎ。今までの人生で、誰からも注意されなかったのか?それとも、注意されても人の話を一切聞けない人?他にも混雑してるのに通行の邪魔をして平然としている40代風カップルとか、普段は余り見かけない変な客が目立ちました。この映画に出ているキャストのファンなのでしょうか?この映画館は比較的マナーの良いお客さんが多いのですが、本作では客層もちょっと気になりました。
『たけき者も遂には滅びぬ、偏に風の前の塵に同じ』
あえて女王蜂のライブやアヴちゃん単独のゲストライブに行ったことのある人間としての目線で語ってみます。長い。
初めてアヴちゃんのビジュアルを見て、歌を聴いた時。まさに、この映画の中で観衆が犬王に対して抱くイメージ、そのものでした。
今まで観たことがない。
斬新な音楽。
自然と体が動く。
誰かにあの人のことを話したい。広めたい。
友達を呼んで、また観に行きたい。
これはアヴちゃん側だけでなく、琵琶法師役の森山未來氏にも言えることだと思います。
実際に森山氏のダンスを観た友人が、しばらくの間は寝ても覚めても森山氏の話しかしていなかったので、友魚に心酔するお客さん達に対してもお気持ちお察しします、と言いますか。
だからこそ、この話のラストの非情さが殊更によく響く。
どんなに隆盛を誇っていても、いずれは潰えて滅びていく。
この実績を積んだキャストの抜擢があったからこそ、キャラクターに厚みと存在感が出て、より無慈悲なラストシーンとの落差を実感した次第です。
また観に行きたい。
ロックンロールの鐘の声、リズム&ブルースの響きあり。 盛者必衰の理に抗う、二人の阿呆が踊り狂う!
南北朝時代の京都を舞台に、実在した猿楽師・犬王と盲目の琵琶法師・友魚との、友情と狂乱を描いたミュージカル・アニメ。
監督は『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』の、巨匠・湯浅正明。
脚本は『図書館戦争』シリーズや『アイアムアヒーロー』の野木亜紀子。
琵琶法師・友魚を演じるのは『20世紀少年』シリーズや『怒り』の森山未來。
室町幕府第3代征夷大将軍・足利義満を演じるのは『横道世之介』『ピースオブケイク』の柄本佑。
友魚の父を演じるのは『探偵はBARにいる』シリーズや『ミュージアム』の松重豊。
国内外から高い評価を得ているアニメ監督・湯浅正明。
正直言って、自分は湯浅正明作品が苦手。
唯一無二な映像表現は確かに魅力的だが、大体どの作品もお話がいい加減🌀
絶賛されている『ピンポン THE ANIMATION』もそれほど良い作品だとは思えない…(追記:原作は『SLAM DANK』と対をなす、史上最高のスポーツ漫画の一つだと思っていますよ!ただ、アニメ版は改変が酷くて…)。
『映像研には手を出すな!』は面白かったけど、これは原作に忠実だったし。『映像研』は原作漫画が既に面白いからねぇ…🤨
という訳で今回もあまり期待していなかったが、松本大洋先生がキャラクター原案を担当している&予告編の出来が良かったので観賞。
結論から言えば、これまで観てきた湯浅正明作品の中ではダントツで素晴らしいっ✨
というか、日本アニメ映画の歴史に新たな1ページを刻み込んだと言っても過言では無い、紛うことなき傑作だと思います!湯浅監督凄いっ!👏
舞台は南北朝時代の京都。主人公は実在の猿楽師・犬王。
これだけ聞くと「なんだか難しそうな映画だな〜🤔」という印象を持たれることでしょう。
しかし、本作の観賞にあたり、事前知識は0でも大丈夫(さすがに源平合戦の事くらいは知っていないとダメだろうけど…)。
というか、普通犬王なんて人知らないよ。
この「犬王のことなんて知らない」という共通認識こそ、本作の要。
当時は絶大な人気を誇っていたにも拘らず、現代では忘れ去られてしまった猿楽師・犬王。
これもまた「おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし」ということなのでしょう。
盛者必衰。諸行無常。
この必定の理に対し、どこまでも抗おうという姿勢がこの映画には感じられる。
生きるということが、結局は風の前の塵に同じだとしても、風前の灯火なのだとしても、それでも意味があるのだと言うことを全力で叫ぶこの映画を、嫌いになれる筈がないっ!
明日はどうなるか知らねども、今この瞬間だけは何者にも譲らない。その姿勢、正にロックンロール!yeah!
犬王と友魚の演じる猿楽を、まるでロック・コンサートのように描くという大発明は見事👏
湯浅監督曰く、これは何も誇張して描いたわけではないらしい。
記録に残っていないだけで、もしかしたら本当にこういう猿楽が演じられていたのかも知れない。
だったら、それを思うまま自由に描いてやろう!というのが湯浅監督の目的だったようです。
常識の殻に収まらず、自由な発想で歴史を紡ぎ直す。湯浅正明監督の独特なアニメーションは、正にこの歴史の修正にピッタリだと言えるでしょう!
異形でありながら、稀代のロックスターでもある犬王。その声を演じるという難業をやり遂げたのは、ロックバンド「女王蜂」のVo.アヴちゃん。
「まーた話題性重視の芸能人キャスティングかよ!素人に声優が出来るわけねーだろー💢」とか思っていてすみませんでしたっ💦
アヴちゃんの演技は本当に素晴らしかったです!ステージにおける歌唱シーンは勿論のこと、平場での会話シーンなども完璧✨しかも、犬王の形態が変わるごとに声音を変えるという常人離れした技も披露してくれます。
アヴちゃん、あなた天才!👏
忌憚のない意見を言いますが、プロの声優よりも上手いっすよこの人。この先もどんどん活躍してほしい。
(そういえば、2019年のTVアニメ『どろろ』の主題歌を歌っていたのは女王蜂だった。この映画の下敷きになっているのは間違いなく『どろろ』だが、何か関係があるのだろうか?)
犬王と友魚は、「名」を自ら選択する。自らの手で自分の名前を決めた彼らだけが、その生き方を選択する事が出来た。
しかし、足利という絶対的な「名」を持つ義満によって、彼らは悲劇的な運命を辿ることになる。
また観世座という「名」に従順だった世阿弥は後世まで語り継がれる存在となり、名を自由に決めた犬王は歴史の闇に葬り去られた。
この物語では、「名」に縛られて生きる者が栄光を手にし、「名」から自由になった者は破滅の道を辿る。
だがしかし、「名」の軛から逃れたものだけが、一瞬の生の煌めきを得る事が出来、またかつて「名」に縛られたが為に無念の死を遂げた者たちを鎮魂することも出来るのだ。
「名」に縛られるか、「名」を断ち切るか。言い換えれば家や組織に縛られるのか、自由に生きるのか。
どうせ人の一生は「風の前の塵に同じ」。
どっちを選んだところで、大きな違いはないのかも知れない。
んじゃあ、自分の好きな方を選べば良いんじゃない?とこの映画は言ってくれているような気がする。
大好きな設定とメッセージ性💕
だが、実はかなり大きな不満も残る…。
本作の目玉である猿楽ロック・ミュージカル。
正直、ここの描き方に疑問が…。
友魚がまず四条大橋の上で前座ストリート・ライヴ。そして、その後六条の方(だったかな?)で犬王のメイン・ステージが開催される、というのがパターン。
これが結構ワンパターンに感じてしまった。
特に友魚の路上ライヴはかなり同じような映像が続くし、それが繰り返されるので映像的に飽きてくる。
もっと多彩なパターンを見せてくれたら良かったのだが。
犬王の初舞台となる「腕塚」。
楽曲の素晴らしさも相まって、始まってすぐはかなりテンションが上がったのだが…。
犬王の派手な動きは確かに楽しいんだけど、割と動きがパターン化されていて、「そのダンスさっきも見た…」という感情が沸き起こってしまった。
カメラワークも、なんか定点カメラで映しているかのようなつまらなさ。
舞台装置なんかは面白かったんだけど、もう少し舞台演出は練った方が良かったのでは…。
「鯨」とか「竜中将」のシークエンスは良かったんだけど、いかんせんつかみとなるこの「腕塚」は弱かったかな。
劇中のサントラは確かにアガる!…のだが、あまりにもクイーンっぽすぎるのは気になるところ。ギターソロとかまんまブライアン・メイやないかい。
これだけオリジナリティに溢れる作品なのに、どうしても『ボヘミアン・ラプソディ』が頭をよぎる…💦
もう一点付け加えるならば、何故劇中曲にエレキギターやドラムの音を付け加えたんだろう?
少なくとも犬王の演技中に流れる楽曲だけでも、作中の登場人物たちが奏でている楽器と同じものだけで構成すれば良かったのに。
なんで琵琶からエレキギターの音色が聴こえるんだよ…🌀
今回もこれまでの湯浅正明作品と同じく、ストーリーが弱い。
有名脚本家・野木亜紀子が付いていることもあり、物語の骨子はしっかりしているのだが、ここぞというところで「うーん…」と思ってしまう。
特に、犬王の父親の扱いが雑すぎるっ!
彼の行動こそが、この『犬王』という映画の根底に関わる重要な出来事のはずなのに、結構そこはあっさりなのね。
退場のさせ方も適当。
犬王の父親の物語をもっと膨らませていれば、映画の見所も増えたと思うのだが。
最後のハッピーエンドも「?」。
犬王はこの後、義満からの寵愛を受け、「道阿弥」という名を授かる。
一体どういう思いでこの名を賜ったのか、そこは映画には描かれていないが、とにかく犬王はこの映画の後、文字通り義満の「犬」となってしまう。
父親を殺され、母も絶望の中で死に、己も無念の死を遂げた友魚。その背後にあったのは全て足利家。
友魚の足利義満への恨みは相当なものだったはず。だからこそ、600年も怨霊として現世に存在し続けたのだろう。
そんな友魚からしてみれば、義満の「犬」となった犬王は許すことの出来ない存在なのではないだろうか?
それなのに、なんか最後は2人がウフフって言いながら昇天しちゃって…。
なんかおかしくないっすか?
正直、このクライマックスには「無理にハッピーエンドにしなくてもいいのに😒」と思わざるを得ない。
等々、不満点もある訳だが、やはり好きか嫌いかでいえば断然好きな映画です。
少しでもアニメ映画に興味のある人は、絶対に映画館で観賞するべきですっ!👍
※〜簡単な時代設定〜
1185年…壇ノ浦の戦い。平家滅亡。
安徳天皇、祖母である二位尼と共に入水。その際、三種の神器も共に海底へと沈む。
源義経、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)と八咫鏡(やたのかがみ)を回収するも、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)だけは回収出来ず、消失してしまう。
1200〜1300年頃…『平家物語』が成立。琵琶法師たちが物語を日本各地へと広めていく。
1333年…後醍醐天皇、鎌倉幕府を打倒。建武の新政。
足利高氏、戦功を認められ「尊氏」の名を得る。
世阿弥のパパ、観阿弥が誕生👶
1335年…足利尊氏と後醍醐天皇、バチバチに争い始める。
1336年…足利尊氏、建武式目を制定して京都に幕府を開く。
後醍醐天皇、足利尊氏に三種の神器を譲る。
それを以て尊氏は光明天皇を新天皇として即位させる。
1337年…後醍醐天皇が渡した三種の神器は偽物だった!
後醍醐天皇は奈良へと渡り、そこに新たに朝廷を築く。
ここに北朝(京都)と南朝(奈良)が並び立つ南北朝時代が幕を開けた。
1358年…足利義満誕生👶
1363年…世阿弥誕生👶
1369年…義満が第3代征夷大将軍となる。
1375年…世阿弥、義満のお気に入りになる。観阿弥が率いる観世座は将軍お抱えとなる。世阿弥はこの時12歳。
1380年頃…犬王が頭角を現す。
1384年…観阿弥没😇
世阿弥が観世座の太夫になる。
1380〜90年頃…犬王、義満のお気に入りとなる。
1392年…南朝の後亀山天皇から三種の神器を接収。ここに南北朝時代は終わりを迎える。
1396年…犬王出家。自らを犬阿弥と号する。
1400年頃?…犬阿弥、義満より「道阿弥」という名を承る。
1408年…道阿弥、後小松天皇の前で天覧能を披露。
義満没😇
1413年…犬王没😇
1400〜1420年頃…世阿弥、能の理論書「風姿花伝」を執筆する。
1443年…世阿弥没😇
琵琶がリフを刻み、太鼓のビートに合わせて犬王がシャウトする
将軍義満の御前で演じるパフォーマンスは、まさに圧巻。アニメーション、時代劇、ミュージカルの全て要素において、新たな可能性を見せつけてくれる。体操、バレエ、ヒップポップダンス、全てを取り入れたダンスで観客をノックアウト。
女王蜂のアヴちゃんと森山未來の二人の演技には驚くばかり。二人とも少年の声色から自信に満ちた大人の声まで演じ分けている。アヴちゃんは、本職がヴォーカルだから歌が上手いのは当たり前だけど、森山未來も負けていない。この二人は10年来の友人だというから息がピッタリ。
幻想的な中世絵巻の世界で、友魚の琵琶がリフを刻み、太鼓がビートを鳴らす。犬王が踊りながらシャウトする。拳を突き上げそうになった。
目が見えぬとも、目に見えぬとも
犬王?室町時代?能楽?琵琶法師?森山未來?
謎が多すぎる作品だが、この謎は深入りしないでおこう。という訳で、ほぼ前情報なしの興味本位で鑑賞。蓋を開けても不思議でいっぱいの映画で、同時にめちゃくちゃスゴい映画だった。これは...スゴい!
なんだこれは!?!?何を見せられてるんだ!?という驚きと謎いっぱいに包まれた冒頭。その未だかつて無い感覚がとても心地よく、不思議と世界に引き込まれていった。映画と言うよりも、アートと言った方が近いだろうか。踊り・森山未來、ということで実写でして欲しかったなという気もしたが、アニメならではを最大限活かしており、にしか出来ないことを思う存分発揮している。特に、目の見えない描写はまさにアートであり、アニメだから表現できるものだと思う。
照明、カメラワーク、演出がかなり狂気的であり、どのシーンも超が付くほど美しい。ここまで室町時代頃の作品で綺麗、美しいと感じたことは初めてだ。この時代的に照明の色とか点灯の仕方とかには少し違和感を感じたものの、ライブのような臨場感をこの時代で体感できるのは衝撃的。単純に映画館で放映する作品としての質が高すぎる。これは映画館で見ないとダメです。必ずです。
そしてなんたって、音楽。
あまりのカッコ良さと迫力に、誇張表現では無く本当に開いた口が塞がらなかった。何故ここまで魅力的なのか。令和時代の今聴いてもそう思うのだ。当時の人達はどう感じたのだろうか。ショック死ならぬ衝撃死をした人もいるのではなかろうか。兎にも角にも、音響・ハーモニー・メロディ・楽器が文句なしのパーフェクトであり、IMAX上映されていないことが悔やまれるほど良かった。心がこの音楽を求めていた。身震いと鳥肌が止まらない。とんでもないぜ、全く。
ダンスもまた恐ろしく最高だし、声優陣も天才的。音楽全面的な映画であるにも関わらず、それ以外の要素も丁寧に作り上げられており、約100分間余すことなく「体験」することが出来ました。室町時代について、音楽について、なにより犬王について何も知らなくともハマる人は大ハマりするであろう作品。か・な・り人を選ぶ、中毒性の高い映画だと思う。少なくとも私はかなりハマってしまいました。
音楽は世を変え、人を変える。計り知れない力を秘めているのが音楽である。そして、人は見かけで判断できない。誰にだって欠陥はある。だが、その欠陥があることで見えてくるものがあるかもしれない。こんなにも深いテーマなのだ。ね、すごいでしょ。
本当に最高の映画体験をありがとう。
世界に誇れる日本の文化。もっと評価され、外国でも多くの人に見ていただきたい。もちろん、日本人も。言葉を失う衝撃的で狂気的な凄まじい作品。結構私の人生に多大なる影響を与えるであろう作品でもあった。頭から離れない...。ぜひ、劇場で。
ライブシーンが…
湯浅政明監督、世間の評価はいざしらず、個人的にはNetflixの2作はダメで、特に日本沈没は途中でこちらが沈没した。NHKの映像研は原作の良さをよく出せたなという感想で、代表作は見ていないものの、俺には合わないかなあという印象。今回の犬王はそれほど見たい内容ではなかったが、自分にとって湯浅監督はどうなのかを問い直すつもりで見に行った。
ストーリー、キャラクター、役者などの要素は興味深く、意外にすぐ入っていけた。特にアヴちゃん、色物かと思っていたが声の使い分けに感心した。ストーリーは皆さんのレビューで事後補完もして納得しているが、受ける側の表現があまりなく、のし上がった感がないのが残念。そして音楽のシーンを受け付けられなかった。長すぎたし、なんだが今の時代に合ったノリで、10年経ったら古びてしまうのではといらぬ心配。
今回の結論として湯浅監督の深掘は見送りとなった。
「鯨」のシーンは最高でした
印象に残るのはアブちゃんの歌のうまさ。ここだけ違う音響を使っているのではないかと感じるくらい腹に響きました。特に、「鯨」の場面は映像との相乗効果もあって自分の中ではこの映画のピークでした。
ストーリーに関しては、「親が力を手に入れるために自分の子供を差し出し、子供は異形の体を持って生まれる。呪いを解くたびに人間の体を取り戻す。」と、どこかで見たような内容・・・。友魚の幼少に起こったことも回収されていたのかよく分からず・・・。
最後も、犬王はうまく世渡りしている中で、友魚は自分を貫いて斬首される。「犬王、お前はそれで良いのか?」と感じている中で現世まで彷徨っている友魚を犬王が見つけても、感情移入もできず・・・。今ひとつ説明不足な感が否めない作品でした。
演出が素晴らしい怪作!後世に残る作品!
アヴちゃんの歌声あってのミュージカルアニメ!
劇中で鼻歌が流れた時のゾクゾク感
音響の良い劇場で堪能して欲しい。
音は歌だけにとどまらない!
演出とアニメとは思えない日常の音がリアルで素晴らしい。
水に潜る、被る、拭う、編む、引くなどの音
普段耳にしている音がアニメの中に完全再現されている。
いったいどうやったらこんなに素晴らしい音を収めることができるのか。
音の深みがあることで、作画に重さや質感が加わる。そこにあるものの輪郭がハッキリする。
さらに素晴らしいのは人の質量を感じる作画。
目の見えない人の視覚を色やデザインで表現する天才的発想。
人体を理解した構図の素晴らしさ。
五感で感じるアニメ映画は本当に久しぶりな気がする。
ストーリー展開的には中盤まで一気に進んでいく。
中盤から終盤にかけてはライブタイム
まるでライブ会場に来たかの如く、次はどんなステージが観られるのか、アヴちゃんの声がもっと聞きたい!と犬王のファンと同じようにワクワクしてしまう。
逆に従来の琵琶法師の厳かさや浮世離れした傍観者の立場から、一気に俗世に降り立つ感じなので、好き嫌いは分かれると思う。
私は若干距離を取りながら眺める、ライブでは後ろの方で手拍子を送ってマイペースに応援するタイプだと分かった。
最前列で「きゃー!」と言うタイプでないことが分かった。
話が逸れたが、終盤では犬王や剣の秘密も語られる。
話的には王道から逸れず、丁寧に進行していく。
アニメの平家物語を鑑賞していると思うところが多々あって、序盤から号泣してしまうこと間違いない。
アニメや映画は虚構の世界。
想像が想像を生み出す世界だ。
まだまだ表現の可能性が広がっている。
新鮮な感動を受け取れることが最高に嬉しい。
是非、劇場でご覧下さい。
これはライブビューイング。得られるものは高揚感。
犬王と友魚が作り上げるパフォーマンスは、どれも心も体も躍りだす。
これは映画というよりもライブに行ったような高揚感が得られる作品であった。さながらライブビューイングのような作品だった。
聴衆からのレスポンスを求めるパフォーマンスは当時の人々にとって斬新で新鮮なものだったようである。
現代に生きる私にとっても、コロナ禍でライブなどでの声出しが禁止されている中でこの映画に触れることは新鮮な体験となった。
感情を爆発できるような機会が減少してしまっている中で、大きな声を出し、感情を爆発することができるようなライブに行きたいなと思わせてくれる作品だった。
まさかアニメーションでこのような気持ちにさせられるとは思っても見なかった。
このような気持ちにさせられた大きな要因は、犬王役のアヴちゃんの圧倒的なカリスマ性が大きいと感じた。
これは、竜とそばかすの姫における中村佳穂に匹敵するものだなと感じた。それくらい素晴らしいものだった。
一体感が・・・ない
ミュージカル映画として観に行くと、、、
前知識無しの状態で行きました。
盲目の琵琶法師友魚と呪われた平家の子犬王との友情を描いた物語。
広告でミュージカル映画と謳っており、ミュージカル映画は正直苦手でしたがアヴちゃん目的で観ました。
歌パートはさすがボーカリスト。圧巻の歌唱力。
ただ、本当に残念だったのはどうしてエレキギターとドラムを入れたのか。時代に合っていなさすぎて違和感しか無かった。本当に残念。
ストーリーは面白かったです。3種の神器の1つの剣からやたら血が溢れてくるシーンは必要だったのか、、、
鎮魂と呪と芸能のエンタメ
古典芸能であり、現代アートであり、総合芸術でもあり、まさにエンターテイメント!ニュー平家物語とでも言うのかな。斬新で良かった。
猿楽(能)とか琵琶とかの伝統芸能からロック(まさかのQUEEN!)、タップダンス、体操、フィギュアスケートなどの現代の芸能が融合し、さらに異形のモノと生者と亡者が混ざり合う、何とも形容できないモノ。ライブを観てるかのようで楽しかった!いや、舞台を観てたのかも?
そもそも芸能なんて鎮魂やら魔除けやら豊作やら降雨などを祈って生まれた庶民のモノだったのに長い年月が経って「伝統芸能」という取っ付きにくいモノになってしまっただけで本来はこういう形のモノだったんじゃないかな。
音楽や表現も勿論だけどそれを形にしたアニメーションも細部まで繊細で儚くて、でも泥臭さもあって圧倒的。美しかった。
友魚のライブシーンは森山未來の実写では?と思うくらいに生々しい。不思議なことに友も呪いも異形の姿も失った犬王があまりに凡庸で、美しさとは歪さと紙一重のところにあるのかもしれないな、などと思ったり。
ちょっと取っ付きにくいところはあるけど何だか凄いモノを観た!みたいな感じでした。
何て?
何故?
何故エンタテインメントが産まれるのでしょう。
舞台劇とか、音楽とか、ダンスとか。
好きなだけなら、一人で趣味でやってりゃいいんですよ。
何も、批判やら低評価を受けるかも知れない、公の場に立つ事は無いんですよ
なのに、何故客前に立ち、他者に評価を求めるのでしょう?
多分、見てくれた誰かに、何か大事な事伝えるのが目的なんでしょうけど、
ほら。劇中で犬王が舞い、ステージを終える旅に、足が、手が、彼の身体が正常に戻って行くじゃ無いですか。
友魚は自らの生存意義をロックで貫こうとする訳じゃ無いですか。
人前に立つ理由って、「観客のため!」
てのは立前でね、欠損を補いたい自分が居るんですよ。
どこの誰でも無く、自分のため、自分を救うための物語なんですよ。
差別を受けて来た自分。何にも恵まれ無かった自分を救済する物語。
自分のために歌い踊り、死んでも信じたものを信じ続ける。
いいんですよ、こう言うのが。
天才と言われながらも、上手く評価されない作品も有りますよ。
自己救済の物語が湯浅政明ってのが良いんですよ。
無邪気で真っ直ぐな犬王の強さ
松本大洋の味わい深い絵に
命が宿ったかのような作画に魅了され
聴覚を虜にするアヴちゃんの
耽美な声に高揚。
変幻自在の湯浅演出と
野木亜紀子脚本が光を当てる
残酷で優しい世界。
個人的には中盤のミュージカルパートが
少し長いと感じてしまいましたが
作品の分岐点となる大切なシーンなので
飽くまで個人的意見です。
湯浅監督の初長編『マインド・ゲーム』で体感した
唯一無二の世界に吸い込まれる独特の感覚。
改憲や緊急事態条項という言葉が最近ちらほら。
また権力により自由な発言や音楽が
封殺される日が来ませんように。
音楽シーンで好き嫌いわかれる
湯浅監督らしいイメージの飛躍やキャラクター原案の松本大洋のキャラクターに引っ張られたような松本大洋が作りそうな物語展開も面白いし声優の2人は歌もうまい。平家物語がわからなくても大丈夫。
しかしライブシーン(ミュージカル的な部分がウリだからか)が長いなあー。
あと、わかりやすく客の熱狂的なノリのいいロック(音楽)をあわらすとクイーン的になるのはあんまり好きじゃないかも
全284件中、241~260件目を表示