「大人たちの本気、見るなら前知識アリのほうが楽しめる」犬王 たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
大人たちの本気、見るなら前知識アリのほうが楽しめる
勉強不足、前知識もあまり入れず。故に映画に「打ち負かされた」感覚。もっと深く知っていれば、それが伝承を主題としたエンタテインメントだと気づけたのだろう。
とにかく強烈。湯浅政明監督に野木亜紀子氏の脚本、大友良英氏の音楽といったその道の強者が集っている時点で既に強い。更に、表現を学びに海外へとんだ経験のある森山未來さんと「女王蜂」として独特な世界観を確立させているアヴちゃんの共演。見事なまでに、才能が集っている。だからこそ、骨太で妥協なき世界を描けたのだと思う。
だが、一度でも蚊帳の外になってしまうと、引き込まれにくいのが難点。プラットフォームを問わない描写力、圧巻のミュージカル、そして、語り継がれなかった音楽の数々。狂騒するミュージカルであって、全てを咀嚼しきるのは難しい。まして、展開も大胆で早い。序盤は結構眠くて厳しかった。
しかし、中盤の見せ場はやはり強く掴まれる。理解した頃には遅かったのだと悟りつつ、当時の市民の高揚に煽られるかのように、私も心がうずき出す。なるほど、こういうことか…。原作では魅せることのできなかった世界を彼らは体現し、現代の技術で想いを馳せる。なんたる遊び心。
足利義満の声は柄本佑さん。エンドロールまで気づかなかった。音楽もほとんどをアヴちゃんが作詞、古典的な世界に二者をまとった歌声が響く。個々のパフォーマンスが凄いからこそ、浴びるコチラ側の準備がいかに必要か思い知られたのだ。
しかしながら、合わなかったのも事実。ミュージカルとしての慣れない感じは否めなかった。だが、一度観れば分かったことも多いので、きっと次は楽しめるはず。そう思わせてしまうのは作品においてマイナスに感じたので、このスコアとなった。