「オープニングの「デサフィナード」はちょっとずるい」ジョアン・ジルベルトを探して kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
オープニングの「デサフィナード」はちょっとずるい
ボサノヴァのスタンダード曲ともなっている、アントニオ・カルロス・ジョビン作曲によるデサフィナード。最も有名なアルバム「ゲッツ/ジルベルト」にも収録されているし、個人的にもボサノヴァでは一番好きな曲。このオープニングナンバーだけでグイグイと惹きつけられ、気分はもうコパカバーナになるのです。
そんなジョン・ジルベルト。ボサノヴァの神、ボサノヴァの法王とも呼ばれているのですが、映画の中では「ホバララ」に執着しているようで、マーク・フィッシャーもガショ監督も一番好きな曲なんだな~と感じる。何度も登場するコパカバーナホテルが映し出される度にバリー・マニロウの「コパカバーナ」が頭の中で再生されたのは、純粋にボサノヴァ・ファンじゃないことを証明してるんじゃないかと自己嫌悪に陥ってしまいます。
ブラジル音楽といえば、伝統的なサンバがあるのですが、このリズムを半分にしてゆったりした感じにしたのがボサノヴァなんだと思ってました。ただ、ジョアンのギター伴奏を聴けばわかるように、ベース音は2/2が4/4になっただけのように思わせておいて、和音部分がシンコペーションだらけのリズムなのです。ピアノの伴奏と比べてみても、違いがわかります。詳細は『ディス・イズ・ボサノヴァ』のレビュー参照。
ノーベル音楽賞というものがあれば、ブラジルからはまさしくアントニオ・カルロス・ジョビンとジョアン・ジルベルトに与えたくなるのですが、このボサノヴァが誕生した秘話として、“実は便器の上で生まれた!”と聞くと、ちょっと敬遠される方もいるのではないか・・・と感じました。
ドキュメンタリーでありながら、どことなくロード・ムービー風。マーク・フィッシャーと通訳も務める女性がシャーロック・ホームズとワトソンの関係だったという主軸で話が進むところもユニーク。惜しくも亡くなったフィッシャーの無念を晴らそうとする監督の意気込みをも感じるのですが、全般的にボサノヴァ初心者の方には向いてないと思った・・・機会があればぜひ『ディス・イズ・ボサノヴァ』を♪