配信開始日 2019年6月7日

「実験的なSF映画」アイ・アム・マザー キミテップⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0実験的なSF映画

2019年7月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

知的

 宇宙船のような施設で人工子宮から生まれドロイドに育てられた少女が大人になり、ある時汚染され人類は絶滅したと聞かされていたが、施設の外部から一人の女性が助けを求めてきた為に引き入れたことをきっかけに物語が動き出す。
 この作品はSF映画を装った宗教映画だ。
 『創世記』で、主は堕落した人間たちを憂い、心優しいノア一家とそれぞれつがいの動物たちを残して世界を洪水で根絶やしにするという記述がある。この、仏教徒の私からしたらあまりにも理不尽な主の行為を無機質なAIドロイドに置き換えて上手く描写している。
 あれだけ、ドロイドがいるのにシステムの人格が一つしかないというのはおかしな話だが、納得をした。
 物語には宗教的な暗喩が多く含まれていて、見返してみるのも面白い。同じようなテーマだと、アロノフスキー監督の「マザー!」があげられるがそれよりは、描写も控えめで分かりやすい構成になっているのでSF映画として楽しめるし、宗教映画としてみたらさらに面白さが増すといった具合だ。
 監督・脚本・プロデュースともに無名のスタッフが連なっているが批評家の評価が高かったのは、彼らの野心的な挑戦への称賛だと思う。Netflixの会員でよかったなと思わせてくれた。オリジナル作品をこれからも楽しみにしていきたい。

キミテップⅢ世