Winnyのレビュー・感想・評価
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遅すぎたのか、早すぎたのか
技術は使う人によって、宝にもなるしクズにもなる。開発者が望んでもいない使用法や負の効果は、いつの時代にも繰り返されてきた。また技術は常に利権と結びつくため、開発者が意図しない利害調整を招くことがある。
科学技術の進歩と倫理そして法との整合性はいつも後者が後追いしてきたが、いよいよもって追いつけない時代になってしまったのだ。
本作品のなかでは警察、検察の組織的な特徴と課題を強めに描いていたのは仕方ないと思う。(そうしないと長くなっちゃうよね)
とはいえ、取調べの可視化や合理的配慮には本気で取り組まないと権利の考え方も技術と同じぐらい早く変化しているのでどんどん現実と乖離してしまう。
明治時代の刑法で令和の当たり前を裁くようなもんだよ。
当たり前の自由…
「緊張感のある現場だった」…出演のひとりである親友からの一言がなかったら、僕はこの映画を観ていなかっただろう。
この作品には、何よりも先に、金子勇氏を始めとする実在する人物に対する敬意と配慮が行き届いている。これは悪人は誰かを追求するのではなく、一人の無垢なるクリエイターが、なぜ、こんな体験をせねばならなかったのかを呈示し、いかにして「無実」を証明し、「当たり前の自由」を取り戻したのかを描くヒューマンドラマである。
映画表現というリアルに挑戦する試みとして、並走する愛媛県警の実直な警官の描写も側面から効いてくる。過剰の説明を避けて、吉岡秀隆演じる警官の目に宿る腐敗への嫌悪と恐れを必要最小限の情報で見せる。
体重を増やすことで役柄に同化したかのような東出昌大と三浦貴大も好演。個人的には、勝訴率の高い弁護士を演じた吹越満の芝居が良かった。
朝日新聞に掲載されたひとつの記事を端緒に、今や当たり前になったオンライン環境の黎明期を現出させた松本優作監督は20代でこれを撮った。日本映画もまだまだ可能性を秘めている。
日本映画の意欲作
近年の実話を基にした作品自体が日本映画では珍しいうえに当事者も実名で登場する意欲作だ。事件の経過もすごく調べられていて、きちんと社会派映画としても機能していて、日本の警察・検察、そして司法の問題点をあぶりだしつつ、人間ドラマとしても完成度が高い。
この作品は、WinnyというP2P技術を用いたソフトを巡る物語ではあるが、技術の妥当性やディテールを細かく描くものではない。それよりも、日本の司法の異様さをあぶりだす裁判映画であり、法廷ドラマとして構成している。一番の見どころは迫真の法廷劇である。特に秋田弁護士による警察の尋問シーンがすごくエキサイティング。人質司法によって捏造された証拠の問題や、メディアを利用した悪質なイメージ作り、有罪率99&の日本の司法のどこがまずいのかをわかりやすくストーリーの中に組み込まれていて見ごたえがある。
この映画を見ると、日本の冤罪を生みだす仕組みが良くわかる。最近も袴田事件の再審が決定したニュースなどがあったが、冤罪を生まれる土壌は、21世紀になっても温存されていて、最新テクノロジーをめぐる事件でも暗躍していたのだ。
実話ゆえの苦い後味と、過ちへの対処について
1990年代からIT系ニュースサイトで英日翻訳に関わっていたので、主に米国や世界全体でのナップスターやビットトレントなどP2P型ファイル共有ソフトの普及や問題についてはある程度把握していた。だが日本の状況については相対的に関心が薄かったため、Winnyを開発した金子勇氏の逮捕や裁判の経緯などはそれなりに報道されたはずだがほとんど記憶になく、本作で初めて知ったことも多くていろいろ考えさせられた。
Winnyは結果的に映画や音楽などの著作物の違法アップロードと違法コピーを招いたのだが、では共有ソフトの開発者を著作権法違反ほう助の罪に問えるかどうかが主な争点であり、本作の大きな要素にもなっている。デジタル技術の進歩に法整備が追いつかないのは日本だけの事情ではないにせよ、才能ある開発者が斬新なソフトウェアやサービスを作った結果、意図せずして法に触れる使い方をされてしまったケースは少なくないだろう。金子氏は天才プログラマーだがいわゆる“専門バカ”で、一般常識が足りない人物として描かれている。もし彼が、2ちゃんねるという場所を介してファイル共有ソフトを公開した場合に著作権侵害に使われる可能性を予見できていれば、長年に及ぶ訴訟に人生の貴重な時間を浪費することなくデジタル革新に貢献できていただろうにと惜しまれる。
サイドストーリーとして描かれるのが、愛媛県警の裏金問題を内部告発した仙波敏郎・元巡査部長の話。本筋のWinny問題との関係性がやや弱いのは難点だが、興味を持ってWikipediaの仙波氏の項を見たら、県警を定年退職後に鹿児島県阿久根市のワンマンな竹原信一市長の専決処分で同市の副市長に就任し、4か月後に市長が失職して市長職務代理者になり、さらに1カ月後には解任されるという、なかなかに波乱万丈な人生を送っている。仙波氏の人生にフォーカスしても一本の映画が撮れそうだ。
最後にもう一点。罪に問われ法廷で裁かれることになった人物を東出昌大が演じることに、「寝ても覚めても」で共演した唐田えりかとの不倫騒動と杏との離婚、仕事の激減に思いを馳せる人も多かろう。東出本人も重ねられることは承知の上で引き受けた役だろうし、共演陣と製作スタッフらも東出を窮状から救いたいという願いをそれぞれの演技や仕事に込めたのではと想像する。それ自体の是非をここで書く気はないが、日本で芸能人同士の不倫騒動が起きると、復帰までの期間や仕事量の戻り具合から推測して、男性に甘く女性に厳しい傾向があるのは確か(川谷絵音とベッキーの件もしかり)。こんなところにも日本社会での男女不平等が表れており、処し方についてもっと議論され、改善されるべきだと常々思っている。
映画は金子勇を描いてくれ
日本の警察とは
自分が20歳前後の頃だったか、 winny をやっている人いた。 ...
自分が20歳前後の頃だったか、
winny をやっている人いた。
正直コンピューターに疎かったのでよくわかっていなかった。
なんとなく犯罪に使われているっていうのは
ニュースで見た気がするが、
特にニュースとして気にすることもなかった。
まだインターネットが普及し始めたころで、
僕も含めて技術的なすごさに多くの人が気づけていなかったんだと思う。
しかし、
今になって思うと、映画を見て
金子勇さんがすごい技術者だったんだなと感じた。
そして、
そういった技術者をつぶすのは、
何もわかって年配者だったり、
くだらない意地にすがりつく権力者だったりするんだなと。
偉大な技術革命を起こす人が、
踏みにじられたと思うと、
自分も悔しく感じてしまう。
時代の流れを止めることはできないのだから、
柔軟性を持って、
テレビのニュースだけを鵜吞みにしてはいけないなと感じた。
東出昌大が、
イケメン具合をもう少し抑えてくれたらなと感じた。
追伸
winny について、
もう少し興味があれば、
ABEMA TV のしくじり先生で
特集している回があるので、そちらも併せて見ると、
金子さんが技術者として、いかに重要な人であったかを感じられます。
国家が権力防衛のために
難しい事は分かりませんが
不備と発展
トライは推奨するが、エラーは許すまじ。
そうして裁判沙汰となった主人公が、後世のため無罪を掴み取るまでの人間模様。
不備があればリカバリしてナンボのパラダイムシフト。
セカンドチャンス如何で裁量下すならわかるが、瞬殺、目くじら立てる日本の風潮の典型を見たような気がしてもどかしかった。
道具は使う人間の魂を宿す。
善にも悪にも染まるのはそこが分かれ目。
いわんがための警察裏金パートを挟み込む構成にアッパレ、拍手を送りたい。
挟まることで善か悪かの一辺倒から思考深める余地は生まれ、
本作を裁判劇以上、複雑なものへ変えている。
空から金子氏は今をどう見ているのだろう。
もし躓くことなく開発を続けていたら、日本のネット産業はどう変わっていたろう。
途中、挟まれたYouTube台頭のニュースに思わずにはおれなかった。
ただし、事と次第の大きさに質は違えど似たものがあるなと過ったのは「オッペンハイマー」だった。突き抜けた専門職、識者ゆえに常識が欠如したような側面へは、同じものを感じている。こうした人物が厄介事に巻き込まれず快適に研究へ没頭できるよう、サポートできる何かがあればいいのに。
さて「福田村事件」でしか見ていなかった東出さんの七変化には驚かされている。
渋い作品
期待通り良い作品で満足しました
日本の組織って嘘と誤魔化しだらけで嫌になる。
こちらの映画では警察だったけど、政治も。
そんな事に思いが至った作品。
その他、こちらの作品の感想や、私の中の見所ポイントとして
・winny開発を警察がこのように扱った事で日本のIT化が遅れをとった要因の一つになり得たこと
・愛媛県警の告発者に迫る危機、緊迫感
・主演のオタク感のあるキャラクターが憎めずかわいかったこと
・秋田弁護士の敏腕ぶり
・エンドロールの本人映像
自分好みの映画だったので、星5です★★★★★
深夜の鑑賞でも大丈夫でした!
淡々と話が進みます。特に盛り上がるシーンも少なく泣けるようなこともほとんどありません。お姉さん(吉田羊さん)が告別式で壇弁護士(三浦貴大さん)にお礼を言いながら感極まるシーンだけは来ましたが…
でも退屈するわけでもなく平日深夜のamazon primeでの鑑賞は「明日の仕事に響くかな?」の心配をよそになかなか見ごたえのある作品でした。
秋田弁護士(いつも曲者の吹越満さん、『友たちのパパが好き』結構好きです!) やはり今回もいい味出してる警官の仙波(吉岡秀隆さん、北の国から寅さんからゴジラまで色々と味な役どころですね)、北村刑事(渡辺いっけいさん)のあたふたぶり、生徒だった湯川先生の助手に成り下がったり今回もまたはまり役でした。弁護士事務所の同僚(和田正人さん)もう少し前面に出てくるシーンが欲しかったですが‥
それに何といっても壇弁護士(三浦貴大さん)!『銀座ダイヤモンドシライシ』の彼女に指輪を送るCM(賛否両論あったみたいですが私はどちらかというと賛でしたね)
CMでは見かけるけど映画やドラマでは大きな役がないな~なんて思いながら、どうしても昭和の歌姫『百恵ちゃん』と石川さゆりさんの元旦那で役所さんと影踏みしてる
『友和さん』のご子息のイメージがありますが、いい役者さんになられてお父さん、お母さんは安心です!
こちらも何といってもですが金子勇(東出昌大さん)のコンピュータ技術に没頭するあまり世の中や周りが見えていない科学者の役を見事に演じられてました。ボクちゃんのイメージが強すぎますが某スキャンダルの原因になったあの作品でもとってもよかったので復活されて嬉しく思います。私生活はともかく(っていうのはいけないのですが)いい役者さんはいい役者さんですね!
裁判もの『それでもボクはやってない』のごとく淡々と静かに進むストーリー、実話なので変な脚色はいりませんが本当に深夜の鑑賞に堪えられるいい作品でした。もっと話題になってもいいと思いました。(私が知らないだけで話題になってましたっけ??)
日本衰退の元凶
現代の魔女裁判
ドキュメンタリー映画の真骨頂
自分のためではなく、他人のため、世の中のため、未来のために信念を貫いて戦う男達
WOWOWの放送にて。
公開時、とても興味があったのにタイミングが合わず劇場で鑑賞できなかった作品。
早すぎた開発をしてしまった天才技術者と弁護団の闘いを実話に基づいて描いている。
当時かなりの騒動だったと記憶するが、事件の内容はあまり理解していなかったし、一審判決後7年間も闘い続けていたとは知らなかった。
純粋でお人好し、世間知らずのようで社会の問題点には着目している。そんな技術屋を東出昌大が素のように演じている。
エンドロール後に金子勇氏ご本人のインタビュー映像が映し出されると、〝そのまんま〟じゃないかと驚く。
ややぎこちない関西弁で三浦貴大が執念の弁護士 壇俊光を好演。
予告編でも使われていた「ナイフを作った人を罪に問えるか」という問は、いわゆる刑事訴訟の不文律のようなものだと思う。
壇弁護士が権力に立ち向かう原動力は、この不文律を脅かしてはならないという強い信念だろう。これを許せば開発者は萎縮し、新しいものは生まれなくなってしまう。
「この逮捕が間違っていないと胸を張って言えますか」毅然と検察を問い詰めるこのセリフも予告編に使われていた。
壇弁護士がこの闘争の手記を著しているらしいが、残念ながら未読。そこに書かれているのかどうか知らないが、もう一人の信念の男をこの映画は並行して描いている。
警察署での裏金作りが常態化していた愛媛県警を告発する仙波巡査部長、演じるは吉岡秀隆。
彼の原動力は、日夜懸命に公務を果たす警官たちの尊厳を守ることだ。
領収書偽造に協力する若い巡査に「そんな罪を犯した者が、1,000円の物を盗んだ人間を捕まえて調書がとれるのか」と、仙波は問う。
Winnyを使ったハッカーによって警察の情報が漏れたことが金子逮捕の裏側にあったのだが、愛媛県警の不正の証拠を世間に曝したのもまた、Winnyハッカーだった。
一見無関係な愛媛の騒動がWinnyで結びつくが、仙波と檀たちが交錯することはない。
マスコミによる偏った報道も描かれている。
実際に、Winnyが危険なソフトであるかのような報道が当時はされていたと思う。
仙波巡査部長が何者かからの脅しや嫌がらせに合うが、これも実際にあったのだろうか。
裁判で、金子はWinnyが匿名性を担保することで告発者を守ることができると説明する。
現代、ネット住民たちが匿名性を武器に根拠のない誹謗中傷を繰り返していることは、皮肉だ。
凡人相手じゃ勝ち目ない
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