「ナイフを作った天才」Winny サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
ナイフを作った天才
こんなに見応えがあるとは、、、想定外!
東出昌大と三浦貴大の演技に圧倒されながら、じっくりと丁寧に、重厚感を保ちながらもテンポ良く進んでいくストーリー。近年の刑事映画ではベスト級じゃないでしょうか。目からウロコですわ...。
「天上の花」「とべない風船」と主演作が続いている東出昌大。残念ながら、上記2作品は近所の映画館での上映がたったの1週間であったために、見ることは出来なかったのですが、本作を見て、あれらの作品も面白いはずだと謎の自信が持てました。そのくらい、彼の演技力の成長具合は凄まじい。エンドロール中の映像を見てもらってもわかるが、Winny開発者・金子勇、そのものである。インタビューで、「金子勇が降りてきた」と言っていたが、その通りだと思う。身振りも話し方も、何から何まで素晴らしい。主演作が後を絶たない訳です。
と、同時に、壇弁護士を演じる三浦貴大も面白いくらいに上手い。金子勇と近しい人間であり、彼をどれほど信じ、尊敬していたのかが、一目散に分かる演技。「ある男」で妻夫木聡が最優秀賞主演男優賞を取りましたが、三浦貴大は次の"妻夫木聡"として名を連ねそうな勢いで、弁護士を熱演していました。私なら、来年度のアカデミー賞はこの2人を1番に推します。
ストーリー展開が非常に秀逸で、飽きるどころか、2時間引き込まれっぱなしで、続きが常に気になって仕方がありませんでした。法律や裁判、プログラミングに関する専門的な知識を要する用語が出てきたとしても、上手い具合に説明を加えており、結果的に専門的な知識がゼロでも大いに楽しめる作品となっています。しかしながら、言葉数は多く、集中力は必要。でも、それもまた面白い。集中力は必要とは言いながらも、同時進行で進むエピソードや、金子勇の過去、Winnyの真の目的などなど、興味深い内容が本筋の間挟まってくるため、途切れることはまず無いと思います。
どのようにしてボロを出させるのか。
どのようにして真実を語らせるのか。
裁判を通して生まれるドラマ、策略、名言などがあり、それらも最高に面白い。「イチケイのカラス」はコメディ裁判であったが、本作はシリアス裁判。濃厚で重厚。皆川猿時、吹越満もいい味出していて、Winny事件への関心は高まるばかり。「ナイフを使った殺人事件が起きたとしても、そのナイフを作った職人は捕まらない」。これほどまでに分かりやすい言葉はありません。
ついつい語りたくなる名作です。
正直なところ、金子勇が猛威を振るい、ネット社会に革命を起こした事件の前のエピソードも見たかったなという気はしたのですが、〈Winny事件〉を描くのならば、これ以上のものは絶対に作れないと思います。後世に語り続かれるべき作品。また見たいです。ぜひとも、この秀作を劇場で。