「どっちもどっち(自分はロシア寄りだけど)」バンデラス ウクライナの英雄 parsifal3745さんの映画レビュー(感想・評価)
どっちもどっち(自分はロシア寄りだけど)
2014年のウクライナの政府軍(+傭兵…ネオナチ)と分離派の親ロシア軍との戦いを描いている。この映画は、ウクライナ映画なのでウクライナの政府軍が正しく、分離派が様々な工作をしているように描かれている。現代の戦争は、情報戦だから戦争の報道をそのまま信じるのは無理。
ただ、2014年・2015年のミンスク合意があり、ドンバス地方の安全保障、臨時的に自治を認める等を、ウクライナ側が反故にしロシア人が多いこの地方を傭兵などを使って攻撃を続けたとされている。そもそも、ベルリンの壁崩壊の際、米国のベーカー国務長官がソ連のゴルバチョフ書記長に対して「NATO軍の管轄は1インチも東に拡大しない」と発言したとされているが、その後、ロシアの警告を無視して、東方に拡大し続けてウクライナまで拡大したことが、今回のウクライナ紛争の大きな原因。アメリカだって、キューバ危機の際に海上封鎖をして、絶対に核を持ち込ませないと軍事作戦を行ったのを忘れてはいけない。どっちもどっちだ。
この映画でハリウッド映画が米軍を英雄として描くのと同様、ウクライナ側を正義として描いているのは仕方がない。が、そのまま信じてはいけない。いずれ戦争になれば、どっちもどっちだろう。偽旗作戦、偽装工作などが、この映画では効果的に使われていた。
ただ、上記の歴史からして、ウクライナ紛争は、西側諸国の対ロシア政策が招いたのは事実。相手を挑発できるだけ挑発しておいて、ロシアが戦争を仕掛けたら、そこだけを一斉に非難して報道し悪者にしてしまう。アメリカの常套手段。ベトナム戦争、湾岸戦争、9・11、イラク戦争等から前科が多すぎ。本当に信用できない。一番悲惨なのはウクライナ国民。米軍の強力な支援を受け、ゼレンスキーが戦争を止めないために、祖国が壊滅しかけている。ミアシャイマー博士が、もしロシアがウクライナを占領するつもりであったなら、300万人以上の兵で攻めたはずだが、実際は19万人で、ドンバス・ルガンスク地方の救済を目的に軍事作戦を行ったとみるのが妥当であろう。ロシアとウクライナの停戦協議も、アメリカが2度に渡って反故にさせたらしい。
政治的プロパガンダの臭いがプンプンするが、ウクライナ紛争についての数少ない映画である。