「ご自由に弾いてくだされ」パリに見出されたピアニスト kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ご自由に弾いてくだされ
タイトルにある「パリに見出された」というよりは、音楽院ディレクターのピエール・ゲイトナーに見出されたピアニストでした。傲慢、生意気、やる気なし!といったタイプのマチューは“女伯爵”と呼ばれるエリザベスの特訓を受けるも、ピエールほど感銘を受けなかったようだ。
悪い仲間たちにそそのかされて空き巣に入るものの、ついピアノを見つけて弾きだしてしまい、一人だけ逮捕。6ヵ月間の公益奉仕のため音楽院の清掃を義務付けられるが、空いた時間にピアノレッスンを受けるという展開だ。
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番というコンクールの課題曲を与えられ、交響曲の酷評のためにフマニノフの苦悩したといった意味が全てマチューにも当てはまる。貧困家庭に育ち、人生の目的も見出せない様はそのまま恋人アンナや家族、そしてピエール家に下宿したこと、不良仲間との決別などが糧となってくるのだ。クラシックは苦手なので、導入部がどうもハンガリー狂詩曲第2番とイメージがダブってしまいました。
やっぱり面白いのは楽譜を上手く読めないところだろうか。ピアノを2台並べたホールで、エリザベスが弾いた部分を真似して弾くところがいい。この協奏曲第2番は辻井伸行の演奏をユーチューブで視聴できるので、盲目の彼が体得したであろうことと微妙に重ねて見てしまった。
コンサートやコンクールを中心とした音楽映画のお決まりでもある遅刻!むしろ遅刻しない音楽映画の方が少ないと思う。ただ終盤では、取ってつけたかのようなシーンもあり、慌ただしくて残念にも思います。ただ、不良仲間が「頑張れ!」と言ってくれたところはちょいと涙・・・恩師でもあるジャックの描写が少なかったし、もうちょっと長くてもいいから、ジャックと弟ダヴィドを丁寧に描いてもらいたかったなぁ。