劇場公開日 2019年7月15日

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「ホラー映画を殺せ!」モンスター・フェスティバル KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ホラー映画を殺せ!

2019年7月20日
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鑑賞方法:映画館

ホラー映画を殺せ!
地獄のホラームービーフェス開催!
生温いフェイクはおさらば!本物の血液を、本物のはらわたを、本物の死を、本物の映画を!

ホラーの王道、そのルールを辿って生き抜け。
数多くのホラー映画のオマージュやネタが挟みこまれ、ファン歓喜のポップで楽しい映画。

往年の名作作品に限らず、最近の作品のネタも結構入っているのが嬉しい。名前が出されるだけでウホッとしてしまう。
細かく拾ったらキリが無いんだろうけど、一つ一つ解明だなんてやってられない。
小ネタ探しより今この瞬間目の前に広がる映画を味わおうぜ!

キャラ構成が完璧。
ホラー映画オタクの手頃イケメン主人公、しっかり者だけど処女じゃなかったヒロイン、コンピュータオタクのアジアンデブ、駆け出し女優金髪ビッチ。
行く先々で出会う五人目もナイスな人選。プラスアルファの差は展開の差。
誰が一番好きかな、やっぱり樹木医かな、ザッカリー・リーヴァイとアシュリーのやり取りも最高だったよね。

「映画あるある」の裏をかかれたり、案外王道の展開に収まったり、先が読めない。
僅かな望みは意欲の湧元、生き延びようと奮闘する中で無残に殺される理不尽、それこそ醍醐味。これこそ人生…は、勘弁。
誰かが退場するたびにショックでお口あんぐりしちゃう。ちょっと泣いた。

各ステージの一つ一つ、そこで起こる出来事の一つ一つが魅力的。
樹木医vs樹木医の胸熱感。作品自体は好みじゃなくても役者としてのこだわりとプロ意識の高さに感服。決めゼリフかっこいいかよ。
SAW的な殺人ゲームにヒリヒリし、迫り来るピエロにハラハラし、Jホラーもお忘れなく、近年人気の修道女もドーン!
ノロマな王道ゾンビとピキピキしながら走る邪道ゾンビの対比も面白い。ちなみに私は邪道ゾンビのほうが好き。

現実に起こすにはスプラッタ系が簡単なのはわかるけど、どうせなら乱立する悪魔祓い系も含んで欲しかった。
あれでももしかして、邪道ゾンビっぽいやつって悪魔に取り憑かれた人間だったのかな。
憑かれると大体ヘド吐くし。君のヘドを浴びるように飲みたい。

破茶滅茶に話を広げた割に、最後の砦に急にミニマムな世界に収めてくる手法に脱帽。
何その伏線。強引に納得しちゃうじゃない。
ホラー映画オタクは世界一強い。

恐怖感は少ないけどスリル満点でとにかく楽しい。ユルい設定ヌルい展開何のその、映画あるあるをふんだんに盛り込んでぶちかましてくれる心意気の良さ。
ツッコミ所に突っ込む隙を与えない勢いの良さ。
正気に戻るの早すぎワロタとは思いつつ。大好き。

この手の映画は少し昔のロックをサントラに使うことが多い印象だけど、ゴリゴリのエレクトロを持ってきてくれたところも好き。
バンドサウンドより電子音派。

最後のセリフがめちゃくちゃかっこいい。
樹木医の決め台詞はちょいダサでラブリー。
なぜホラー映画を観るのか。いけないことだから。
恐怖の疑似体験は生命の悦び。
ホラー映画は死なない!

KinA