劇場公開日 2019年7月27日

  • 予告編を見る

「音楽畑出身、アジア名匠とのコラボを経た監督ならではの感性」パラダイス・ネクスト AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0音楽畑出身、アジア名匠とのコラボを経た監督ならではの感性

2019年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

興奮

論理的ではないかもしれないし、あいまいでわかりにくいかもしれない。半野喜弘監督はもともとミュージシャンとして世に出て、アジアの名匠と呼ばれる著名監督らの作品で映画音楽を手がけるようになり、2016年の「雨にゆれる女」で映画監督デビューを果たした才人。前作でも、青木崇高と大野いとが演じる男女が過去の罪と宿命の愛でつながりぶつかる暗いストーリーを、やはり独特の感性で紡いでみせた。

今作では、豊川悦司が強面の寡黙なヤクザ者、いっぽう妻夫木聡は馴れ馴れしさと饒舌さで対照的なキャラクターとして、過去に殺された女性をめぐって因縁のある裏社会の男2人を演じてみせた。台湾ロケの映像が雰囲気を盛り上げ、台北の都会から東海岸の古い町・花蓮への逃避行が、「楽園=安息の地」へのかなわぬ想いに共鳴する。良くも悪くも邦画のロジックに収まらない、アジア的感覚のエッセンスを吸収した半野監督の野心作と言えるだろう。

高森 郁哉