劇場公開日 2020年8月14日

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「人生の終わりに会いたい人は誰?」ポルトガル、夏の終わり きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0人生の終わりに会いたい人は誰?

2021年12月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

何だか複雑な人生を送ってきたらしい=女優フランキー。
「相関図」が難しいのだ。国籍も人種も入り交じるし。
(どなたかのコメントにあったが「予告編」での事前学習が◎かと)。

で、
余命いくばくもない自らの「終活」の一大プログラムとして、
彼女は縁者たちを世界中から我が元に集めた、そういうバカンスなのだが・・・

死を目前にすると、人は何を成しておきたいと願うのであろうか、
・最後に食べたいものを味わい、
・最後に行っておきたい街を歩き、
・親友や、特別に心通わせた肉親、それも選りすぐりに愛情を交わした少数精鋭の縁者だけを枕元に呼んで、別れの言葉を遺すのであろうか。

ところがフランキーは違う。

せっかく集めた家族とは、行動は一緒にしない。
フランキーはひとりで森の小径を歩く。そしてひとりで旧市街の坂道を巡る。

フランキーは食事さえ、一度も家族とは取っていない。
何のために彼女は家族を呼んだのであろうか。

人は孤独だ。
ひとりで生まれて、ひとりで死んでいく。

(参加者たちも似たもんだ、
ポルトガルのヴィラに集まったけれど、それぞれメンバーは自分たちの生活と懸案で頭が一杯。
心そこにあらず)。

たったのひとつも思い通りにはならなかった家族をば、フランキーは主役として舞台の上から眺めて観察し、嘆息もし、
“共演者”たちを置き去りにしてとっとと舞台に登り、そしてステージを降りる。

ポルトガル・シントラへの旅は、
走馬灯のように、《己の生きてきた道とはどんなものだったのか》、それをフランキーは確かめておきたかっただけなのかも知れない。

海の見える丘の頂上で振り返ったこの女性の目をあなたは見ただろうか、
彼女は、家族を見ていない。
あの目の光は自分の人生を振り返っている。
強烈に印象に残るシーンだった。

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樹木希林
ドヌーブ
そしてイザベル・ユペール。
大女優は老いてなおその存在で周りを圧倒すると知った。

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最後に食べたいものは何だろう。
最後に枕辺に呼びたい人は誰だろう。
会いたくはないけれど、心にかかった人と言えば誰だろう。

人生の千秋楽を迎えるとき、このフランキーのように、輝き燃え上がる終演を迎えたいと、僕も思った。

きりん