劇場公開日 2020年11月28日

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「抵抗する者の結束力と侵略者の傲慢さ」バクラウ 地図から消された村 フリントさんの映画レビュー(感想・評価)

抵抗する者の結束力と侵略者の傲慢さ

2021年6月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

田舎の人が観光客をもてなす話

ウエスタン物の映画の様でグロB級映画の様で、そして新しい。
不思議な雰囲気の映画でしたね、うん、好きです。

冒頭の棺桶が落ちてるシーンからただならぬ良作感がにじみ出てました。
中盤から後半で劇的に物語が動き始めますが、前半が決して退屈なわけではなく、この村の置かれている状況やこの映画がどんなふうに展開していくのか興味が尽きないので飽きることなく見てられる。

水が奪われている事、みんなに慕われていたおばあちゃんが亡くなったこと、嫌われ者の政治家、平和そうに見えてゲリラとか銃撃とか結構物騒な状況。
そして、グーグルマップから村が消えてる事。
陽気なのに不穏、不安がちらほら見え隠れするのは見ていて楽しい。

ブラジルの現状を知らないから詳しくはわからないけれど、もしかしてこうゆう村って結構あるのかな?
治外法権じゃないけれど、あんまり国家や政府が気にしてない様な集落。なんなら武装勢力もあるみたいだし…興味深い。
アフリカ系の映画とはまた違った未開の地感がいいですね。

なんだかんだ話が掴めないまま中盤でウド・キアが出てきた時の安心感ったらなかったですね。
見知らぬ土地で文化もわからんし、なにが起こるかもわからない状況で、知ってる俳優が出てくるだけでなんだかほっとする。
ウド・キアが出てきたらもう、ろくな事は起きないですよ。
うさん臭さ、狂人さ、ザ・悪役さが全身から出てますもの彼。
「あとはもうわかるな、そうだ!殺戮だ!」
って感じ、安心するわ~。

謎の村、謎の事件、謎の薬、謎の外人、謎だらけで説明不足なんだけれど、全てが組み合わさって本作の得体の知れなさと考察の余地が生まれる奥深さが有る。
すっきりしないけれど、決着はつくし終わり方は秀逸だと思う。面白かった。

個人的に好きなシーン

オフロードバイクに乗った二人組が現れる場面
ど派手なライダー服があまりにも異質でまるで宇宙人でも来たのかと思えるほど。
田舎の人はよく部外者を警戒するとは言うけれど、これは警戒せざるを得ない。
自分もたまにバイクで脇道に入り見知らぬ集落に行くことが有るけれど、そこの人たちからはこう見られてるのかもなーなんて思いました。

戦闘準備からのカポエラで闘志を上げていく場面。
部族が戦闘前に行う儀式というか、あぁこれから本気で戦うんだなって見ていてこちらも高揚してくる。

この映画は「食人族」×「続・荒野の用心棒」を現代版にしたような作品かなと思います。

ブラムハウスの映画は色んな掛け算が上手、殺人鬼×入れ替わり、殺人鬼×タイムループ、日常×法が機能しない12時間、とか。
この掛け算が十八番のブラムハウスでもバクラウの様な掛け算は思いつかないだろうな~。
これからも世界中で楽しい掛け算映画がいっぱい作られることを期待します。

追伸
「食人族」×「続・荒野の用心棒」の映画は「トマホーク ガンマンvs食人族」ってのがありましたね。
タイトルそのまんまの映画ですが、B級映画風なのにキャストが意外と豪華っていう。
バクラウとは似て非なる作品だし、おススメはしませんが私は嫌いじゃないんだよなぁこの映画。

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劇中セリフより

「村の資料館よ、見に行った?」

見知らぬ土地に行った時はその土地の事を調べましょう。
それが理解と調和に繋がる第一歩なのかもしれません。

フリント