「無名人の偉大な生涯」名もなき生涯 t.toraさんの映画レビュー(感想・評価)
無名人の偉大な生涯
久しぶりに約3時間の長編映画を見た。退屈するどころかラスト1時間は感動的だった。第2次大戦中、ナチスに抵抗すればどうなるか。そんなことは百も承知しつつ自分の主義を曲げない男。その彼を支える妻との不屈の物語。
アルプスの山岳風景がスクリーンいっぱいに広がり、特に霧がかかったシーンはとても美しい。そんな牧歌的な農村にも戦争の足音が忍び寄る。主人公が徴兵を拒否すると、村人からの蔑視と同調圧力が強まり、国家権力と個人の自由とのせめぎあいが続く。たいてい個人の側が大勢になびくものだが、この作品では蟷螂の斧となっても個人を貫く主人公が力強く描かれている。
歴史とは有名な人だけが語るものではない。無名の人の語られない事実の積み重なりであることをこの作品を通じて知らされる。
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