シチリアーノ 裏切りの美学のレビュー・感想・評価
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原題の≪裏切者≫は深い意味がある
シチリアの島々に深く根付くシチリア魂の爆発か!シチリア人は、、、と一括りに言えないかもしれないがファミリーありき。ともかく一にも二にもファミリー。シチリアを訪れたら体感できる。
≪マフィア≫との一線を画するのがファミリーという哲学だろう。しかし狙ったら20等親まで根絶やしにする凄まじさ。裁判で血を断つを≪種を断つ≫と話したシチリア人に対して意味不明で尋ねるシーンがあるが血を断つよりも≪種≫=シチリアを受け継ぐ男を根絶やしにするという思想はやはりファミリーの長が絶対性を持つからだろう。物語は過去と現在が錯綜するので分かりにくいかもしれない。主人公と判事の情愛が好きだった。
日本語タイトルは感傷的すぎる。原題≪裏切者≫がぴったりだ。
ちなみに、鑑賞した時間帯は≪男祭り≫かと言えるほど男たちが集っていて面白かった。
政治家も逮捕しちゃえ!
マフィアのドンパチは色んな映画で見られるためか、それほど執拗な描写はなかった。それよりも大法廷における裁判の様子がメイン。鉄格子がいくつもある裁判所。それぞれに弁護士もついてるから相当なものだ。
ブシェッタの女好きだということはよくわかるのですが、麻薬密売もやらない、殺人もしないではどうやって収入を得ていたのが気がかり。結局は自分がトップに立ったため末端のファミリーにやらせていただけではないのか?そんな美学を語る男も判事ファルコーネと心を通じ合わせて、真相へと迫ってゆく。とにかく480ページにも及ぶ膨大な調書。誰が誰を殺したとか、記憶力も凄い!それによって360人も逮捕されたのだから。他の奴らはヘロインばかりやってるから脳みそが腐ってるんだよな・・・きっと。
コルレオーネと聞くと、どうしても『ゴッドファーザー』を思い出してしまうのですが、あちらは架空の人物。マフィアについては全く知らないけど、コーザ・ノストラとマフィアの違いなんかも説明してもらいたかったところ。ピラミッドとか一兵卒という単語だけが記憶に残りました。
うーん、今一つよくわからない
マフィア組織を裏切って司法側に全面的に協力した組織幹部が主人公のお話。
主人公は組織内抗争に敗れた結果として家族含めて命を狙われる立場になって、司法機関に協力するわけだが、全面的に協力する動機の描写が弱いように感じられる。
保護を受ける代償に下っ端の関与だけ認める形式的な協力でも良かったはずだし、「捜査の中核を担った判事の影響で全面的に協力した」と言葉での説明はあっても描写が乏しいのでしっくりこない。家族を殺された恨みにしても、本人が家族残してブラジルに逃げているし・・・
よくわからないのは、
・司法体制の相違(検事ではなく判事が捜査するの?)
・政治家がマフィアがらみで追及されているの?(首相がマフィアがらみで捜査されたと微かな記憶を思い出したが、政治家という説明がないので前提知識がないと理解は困難)。
・最終盤の襲撃は何?
・爆殺された判事のニュースを聞いて民衆がベランダに白いシーツを掲げるのは祝意?弔意?
マフィア内の掟を破ったことに対して主人公を非難する声に対し、現マフィア執行部こそ掟を破っておりそのような執行部を裏切ることは掟破りではないと正当化する主人公の主張は、この国の某山■組の内部抗争の際にも聞いたような気がする。
本国では当たり前すぎて説明する必要のないことは説明されていない。
そのため、今一つよくわからない
背信
パレルモ出身の大物トンマーゾ・ブシェッタを主人公に、第二次マフィア戦争とマフィア大裁判、及び、その結末、の事実に基づく話。
1980年にシチリアでヘロインに纏わるマフィア間のいざこざの仲裁に失敗し、ブラジルへ移り住んだトンマーゾ・ブシェッタが、1983年に逮捕され、コーサ・ノストラ・シチリアーノについて供述し、マフィア大裁判に繋がっていった出来事をみせていく。
特に前半、スカした様な演技や演出の安っぽさが鼻につくし、マフィアの大物達のチンピラ感を強く感じるし、内容的に超盛り沢山だから仕方ないところというのはわかるけれど、人物や背景の紹介を字幕で説明は味気ない。
とはいえ、随分昔に映画から興味を抱き、色々読み囓った程度なので、あまり細かいところまでは知らないが、そんな自分でも聞いたことがある出来事や人物が盛り沢山で、更には知らないことはもっとたっぷり。
どこまで事実か判らないけど、非常に興味をそそられるし、非常に面白かった。
ただ、物語がどうのという作品ではないので、この辺の話に興味が無い人にはオススメ出来ません。
実録モノの魅せかたの難しさ
実録マフィアものが好きな人は、ホンモノの話に最後まで引き込まれることだろう。
純粋に映画そのものを楽しみたいものとしては、淡々と事実の積み重ねや騒しい裁判の内容を延々とみせられても150分は長すぎる。
徹底的に真実を追求した作品にしたいのか、ドラマ性を強調した作品にしたいのか、どっち付かずの感は最後まで否めなかった。
邦題の「裏切りの美学」というテーマに最後まで共感できる内容の提示はなかったと思う。あくまで日本での宣伝の売り文句で、監督の意図するものではないかもしれないが。
ありのままの事実を作品で伝えるより(だったらドキュメンタリーでいいかもしれない。実際、Tommaso Buscettaの人生は若い頃から波乱万丈で興味深い)、「事実に基づいたフィクション」のほうが制作側のやりたいことや思いを作品に乗っけやすい気がする。
こればかりは、作り手の考えや観る側の好みもあるので一概には言えないが。
法廷シーン、すごい!
ドイツと言えばナチスでイタリアはマフィア、そういった印象があるし映画も沢山ある。イタリアでは「マフィア」というのは存在しないと教わるらしいがドイツではナチスは忘れてはならない歴史上の事実で同じように扱うことはできない。それでも十把一からげに映画のテーマになるのはそれぞれの国の人にとって不快なんではないだろうか。そもそも一方は服従と歓喜と同調圧力が、一方は貧しさがそれらを生み出したのだとしても。
「人間が作り出したものは人間の手でなくすことができる」(だったかな?)や、あの時のコーザ・ノストラは、といった言い方で過去を美化するなというファルコーネの言葉には、人間の強さも弱さも知る明晰な頭脳と、法律が天職である気概と自負があった。だからこそブシェッタは最後までファルコーネを信頼し尊敬したんだろう。
法廷のシーンはたまげた!見る価値あり!Silenzio!と叫びまくる裁判官、(シチリア)方言でなく標準イタリア語で話せとがなる弁護士達、悪口雑言で裏切り者呼ばわりする大量の被告人とその妻達。本当にこんな大法廷があったのか…!
イタリアの警察に保護されているブシェッタが、遠く離れている妻に電話でamore mioと声をかけながらも(当局に聞かれているから)言葉少なに話し、amoreと呼びかけた妻はベッドの上から身に何も纏わずに応える場面はエロティックで究極の愛の表現だった。
それにしても濃い!20親等まで殺しまくる考え方(よく数えられるし、たどり着けるもんだと思う)、姓が同じだけで殺すとか、とにかく半端ない。もちろんいい意味でシチリアの家族・同胞思いは暑苦しいほどで癖になる。シチリアは美しい海に囲まれているけれど内陸部はゴツゴツの乾燥地帯。歴史と色んな血が層になっている所だ。
Il Traditore
主役のピエルフランチェスコ・ファヴィーノが適役。ハラハラの連続とシーンの迫力に圧倒され、2時間以上の時間があっという間に過ぎました。ドキュメンタリーと錯覚させるような手法が凄い。
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