「シチリア・・・マフィアに毒された島」シチリアーノ 裏切りの美学 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
シチリア・・・マフィアに毒された島
2019年(イタリア)81歳の名匠・マルコ・ペロッキオ監督のライフワーク作品。
格調高く形式も整った秀作です。
マフィアを裏切って警察に協力した幹部トンマーゾ・ブシェッタの実録映画です。
時は1980年初頭に始まり、ブシェッタの死ぬ2000年までの生涯を辿ります。
80年代パレルモ。マフィアは血で血を洗う抗争に明け暮れる様は異様だ。
第一部、マフィア組織に嫌気のさしたブシェッタは妻子とブラジルへ渡る
第二部、ブシェッタはブラジルで逮捕されてイタリアの故郷パレルモに移送される。
第三部、ファルコーネ判事の取り調べを受ける過程で、ファルコーネ判事の
マフィア撲滅の情熱に共感を覚える。そして協力者となる。
第四部、裁判・・・実はこの映画で一番面白いのは裁判場面です。
第五部、判決。
イタリアの刑法史を揺るがす大裁判の法廷劇でした。
裁判は公開で、大運動場みたいな会場。
逮捕された200名以上のマフィアが檻に入れられている。
鉄格子を掴みヤジと怒号を飛ばす姿は野性のライオンそのものだ。
一斉にフラッシュを焚くマスコミ。
判事・検事・弁護士の数は何百人だ。
つくづくマフィアとは檻に入って吠える姿が似合う。
凶暴なライオンは人間世界では、放し飼いは許されない!!と言う事だ。
映画はイタリアでは圧倒的な評価を得て、数々の賞に輝く。
この事件の記憶は、ファルコーネ判事の痛ましい事件もあり、イタリア人には
忘れられない、そして忘れてはならない事柄だ。
日本人の私たちにイタリア人の持つ共感や熱意は無理で、
やはり冷めた目で見てしまう。
ブシェッタの警察への協力の本当の真意はどこにあるのか?
彼はマフィアを憎み撲滅を誓った真の英雄的人物だったのか?
(結構な悪事を働いてるらしいし、上手く立ち回ってるようにも見える)
そこを掘り下げてもらったら、もっと感動したと思う。