劇場公開日 2020年11月13日

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「圧巻のストップモーション技術とは対照的に、足を引っ張る脚本」ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒 緋里阿 純さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0圧巻のストップモーション技術とは対照的に、足を引っ張る脚本

2025年2月3日
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鑑賞方法:TV地上波

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ストップモーション・アニメーション製作会社ライカによる冒険アクション。批評家からは絶賛され、ゴールデングローブ賞でアニメ映画賞を受賞するも、興行的な失敗から1億ドル以上と言われる赤字を出してしまった作品。

本作の魅力は、なんと言っても圧倒的なビジュアルの美しさ。キャラクターの表情や動きの滑らかさは、まるでCGアニメかと誤解してしまいそうになるほど自然で違和感なく圧巻。色彩豊かな美術もオシャレで美しい。しかし、圧倒的なビジュアル表現に対して、ストーリー面での面白さは薄いと言わざるを得ない。テンプレート過ぎて凡庸なのだ。

ヴィクトリア朝時代のロンドン。ライオネル・フロスト卿は、神話上の生き物の研究家。この日もネス湖のネッシーを助手と共に捜索し、写真に収めようとしていた。見事ネッシーとの遭遇には成功するものの、その姿を写したカメラは壊され、助手は「身が持たない」と去ってしまう。
フロストの目的は、伝説の生き物の存在を証明して、憧れの紳士クラブに参加する事。しかし、クラブのリーダーであるピゴット=ダンスビー卿はこれまで幾度となく、それを拒否してきた。フロストは、アメリカでビッグフットの目撃情報があるという手紙を受け取り、「ビッグフットを見つけられたら、クラブ入りを認める」という約束をピゴットと交わす。
現地に赴いたフロストが出会ったのは、正真正銘のビッグフットであった。彼は、人間の言葉を学習し、文字の読み書きも覚えて、フロストへ手紙を出していたのだ。孤独な彼は、ヒマラヤの奥地に住むイエティの伝説を知り、同胞を求めてフロストの協力を得たかったのだ。
ビッグフットにリンクという愛称を与えたフロストは、彼をヒマラヤの秘境・シャングリラに連れて行くべく、旅に同行させる事にする。一方、イギリスではフロストがビッグフットを見つけたという報を受けたピゴット卿が、彼の暗殺を画策してバウンティハンターのウィラードを雇っていた。
やがて旅はフロストのかつての恋人アデリーナも巻き込み、世界を半周する程の壮大なものへと発展していく。

ビッグフットと共に旅をするというアイデアの荒唐無稽ぶりは良い。言語も理解出来る為、コミュニケーションも無理なく図れ、凸凹コンビとして成長していく。
“間違った場所に居場所を求めるな”
フロストとリンクは、互いに間違った場所に居場所を求めて旅をしていくが、最後は互いが互いの居場所になれる事を悟り、相棒として生きていく選択をする。イエティの長老ドーラに、リンク(スーザン)がベロベロバーする件は笑える。

しかし、フロストとリンクの会話ややり取りのズレによるコメディ演出も、それ自体が悪いとは言わないが、作中幾度となく繰り返されては飽きが来る。また、やり取り自体はひたすら笑えないズレ漫才を見せられている感覚だった。
ハッキリ言って、冒頭のネッシーと格闘する件が1番面白いシーンだった。

ただし、エンドロールの演出の工夫はオシャレで高評価。チラッと見せてくれる製作風景の映像は、本作が本当にストップモーション・アニメである事を証明し、改めてその労力やクオリティに圧倒された。

圧巻のストップモーション・アニメーション技術を、凡庸な脚本が足を引っ張り、凡作として埋もれさせる結果となってしまった、何とも勿体ない一作。

緋里阿 純