「日常的、国際的、そして世界から取り残された心がやがて・・・」サマーフィーリング kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
日常的、国際的、そして世界から取り残された心がやがて・・・
とても不思議な感覚に陥る映画でもあった。30歳の恋人サシャが突然亡くなったベルリンから始まるのですが、主人公ローレンスは作家でもあり傍らで翻訳業で生計を立てていて、彼女はアートセンターで日々作品を作っていた。しかしローレンスは英仏そしてイタリア語を使うがドイツ語は無理っぽい。父親が外交官だったらしく、国際的でバイリンガルに育つものの地に足がついてない雰囲気がある。サシャの死によるものかもしれないけど・・・そして小説が書けなくなった。
ベルリンでサシャの両親、妹ゾエの夫婦や友人たちも葬儀に集まった。喪失感から次のパートナーを見つける気さえ起きないローレンス。キンクスのTシャツを着たジューンがその相手になるのかなと思ってもみたけど、何も進展がない。
1年後のパリ。ゾエとダビッドの夫婦には7歳になる息子ニルスがいたけど、夫婦にはどこか亀裂が入り、ほぼ別居中。小さなホテルに勤務するゾエはニルスを連れて両親の住むアヌシー湖畔で夏を過ごすが、姉サシャを失った喪失感は増大するばかり。風光明媚なアヌシー湖がとにかく眩しいくらいなのが対照的だ。
そのまた1年後のニューヨーク。ローレンスは実家に住み姉のニナの手伝いをしたり、旧友とパーティに出かけたりしてようやく立ち直り、遊びに来たゾエと再会するが・・・
3つの都市、3度の夏。この構成がとても心落ち着くのですが、フランス語と英語を駆使するローレンスの空に浮いたような存在感がまた不思議な気分にしてくれる。どのパートにおいても大きな公園が日常生活を醸し出すのに、彼らの居場所がとても小さなものに思えてくる。
立ち直ったローレンスは義妹でもあるゾエを“友だち”だと紹介する。「離婚することに決めた」とは言うが、さすがに彼女と付き合うわけにはいかない。励ましの言葉も特にないのだけど、心が通じ合ってる雰囲気も伝わってくる。ただし、サシャの写真だけは手放すことはない。故人を偲びながら、緩やかではあるがそれぞれの道を進んでいく姿がとても爽やかだった。
kossyさんへ
3週間、劇場から遠ざかっているbloodです。ワタクシ、今更ですがS.W.A.Tなどの、気になっていた海外ドラマを一気に観てますが、やっぱり映画館に行きたいです!