「アクションを楽しみたい人におススメ」るろうに剣心 最終章 The Final Tbotaさんの映画レビュー(感想・評価)
アクションを楽しみたい人におススメ
・激しいアクションさえ見れたらいいという人にはおススメ
・ストーリー重視の人にはおススメできない
・原作至上主義者は見てはならない
【ストーリーについて】
原作が長いので過去編(begining部分)を除いても、映画1本でおさまらないのは当然。だから、雪代縁の復讐の物語をどういったオリジナル展開で表現するのかを楽しみにしていた。
ところが、オリジナルに突き進む覚悟がなかったのか、大人の事情なのかは不明だが、オリジナルストーリーを展開しようとする割に、話の文脈を全く考慮せずに原作シーンを入れる荒業に出ることが多く、原作にもオリジナルの展開にも中途半端になってしまったのが残念だった。
例えば、弥彦の「自分だけ弱いままは嫌だ」という台詞はそこに至る弥彦なりの葛藤や焦りがあったから響く。だが、映画ではその過程をすっ飛ばして唐突に台詞だけ出て来たので「はぁ、そうですか」くらいの感想しかもてない。原作を知らない人には恐らく何の印象もないシーンになったと思う。無理してこの台詞を出す必要もなかった。
同様に、鯨波の「止めを刺せ」のやり取りも、過去何があったのか、鯨波がどういう人間なのかという描写があるから引き込まれるシーン。だが、映画ではそれまで「ウガァァァ」としか言わず暴れていた初対面の敵を止めたら、「自分を殺せ」と言いだす展開なので「お前何言ってんだ?」くらいにしかならない。オリジナル展開を続けておいて、話の流れを無視して原作要素を出すので呆然としてしまう。
赤べこの食事シーンのカットは英断だと思うし、それによって原作以上に復讐者たちの狂気や憎しみが描かれたと思っているが、それだったら、鯨波は最後まで言葉を話さない人でよかったのでないか。
特にひどかったのが、「お前の中の姉さんは笑っているか」という台詞。原作では象徴的な役回りを果たすが、映画ではやはり唐突に台詞だけ登場した上に、この台詞の意味を理解させる補足も演出もない。時々思い出したかのように縁・剣心が見えない人のことを突然話し出すので、縁と剣心が幻覚を共有するホラーに思えた。
酷評したが、原作通りでなかったことを責めているのでない。大まかな設定だけ拝借してオリジナルに突き抜けた作品でもいいと思っていた。オリジナルと原作を話の流れも考慮せず中途半端に混ぜたことがひどいのだ。
実際、原作と全く異なるオープニングや原作以上に苛烈な東京襲撃というのはすごくよかった。この勢いのまま剣心と縁の対決に持ち込んで、何らかの形で二人の間に決着をつけたなら、原作と違うけどとてもいい映画だったと言っていたと思う。ところが実際は、そこまでやっておきながら、唐突の薫誘拐。また原作に戻るのかと残念な気持ちが強かった。
その後、縁の拠点に来た剣心を迎え撃つのは、剣心1人ではさばききれない怒涛の数の敵兵。仲間たちの協力のもと先へ進んでいく剣心。そこだけ見れば熱い展開だが、この縁は一体何をしたかったのか。縁の目的からして、埋め尽くさんばかりの兵隊を置くのは考えられない。抜刀斎を殺すことだけが目的なら今までのやり取り全部いらなくなる。
ストーリーは酷評したが、各俳優の演技やアクション、小物などのディテールは大変素晴らしかった。ストーリーや原作を無視してこれらの部分だけを楽しめるなら素晴らしい作品。
【各キャラ寸評】
縁:終盤の縁が剣心にキレて怒鳴っているシーンは素晴らしいの一言に尽きる
刀狩の張:原作とは全く違う展開だけど、いい味を出していた。こういうオリジナリティの積み重ねだったらすごくいい映画になったと思う。30秒でもいいから張の戦いを出して欲しかったくらい。
番神:ほぼ会話がなかったおかげで、格闘バカっぽいイメージ通り。縁の同志の中で一番まともな待遇。映画で言及されなかったが、無敵手甲を使っていたのもよい。なぜ左之助と殴り合わせないのか…
乙和:番神以下の知能のチンパンジーになっていて残念。原作よりもアグレッシブに暗器を使って戦う点は素晴らしい表現。だけど、謎の巨大武器を持たせた意味が分からない。署長宅襲撃しておいて銃の暴発エピソードないのは理解できない。
鯨波:この人の再現が難しいのは仕方ないけど、アームストロング砲をとても重そうに持ち上げたのは悲しい。ガトリング砲の戦いは、原作以上にいい味出していたので一層惜しい。先にも書いたが映画の展開では、最後まで黙っていたほうがよかった。
八つ目:ダースベイダー。エンドロール見るまで誰かも分からず、外印の代わりのオリジナルキャラクターだと思っていた。
黒星:原作と姿は全く似てないけど、作中の設定だけで人物を作ったらこうなるかなという感じの姿ですごくいいと思った。問題は、終盤の原作シーンを再現するためだけに出させられた感が強く、作中でとにかく出番が多い。黒星の代わりにもっと縁や剣心の描写をして欲しかった。ラストの黒星のシーンなんて丸ごとなしにして、全く別の展開でよかったと思う。