「頬の傷は己へ課した“人誅”の傷。その果てに…」るろうに剣心 最終章 The Final 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
頬の傷は己へ課した“人誅”の傷。その果てに…
もはや前説は不要。
邦画アクション革命、再び!
また新作を観られるとは思ってなかった。と言うのも、前作で完結したと思っていたから。だから、これはこれでサプライズな喜び。
今回は原作でも最終エピソード『人誅編』がベース。“最終章”が作られるのは当然か。
それに、前作で藤原竜也が演じた志々雄のラスボス感が半端なかったから。
しかし、その志々雄の国取りには、ある武器商人の存在があった…。
中国の裏社会を牛耳る武器商人、縁。
突然日本にやって来たその目的は…?
「抜刀斎の頬にまだ十字傷はあるか?」
さらにこの時縁は、ある一言を言う。
確か記憶が正しければ、剣心の頬の傷はある人物に付けられた(10年前の窪田クン)。でもよくよく思い出せば、それは一片だけ。
じゃあ、もう一片は…?
その過去と秘密を知る縁。彼は剣心に対して尋常じゃない憎悪を抱き、ある復讐の為にやって来た。
剣心に、“人誅”を下す…。
まず何と言っても、新敵キャラ・縁を演じた新田真剣佑。
ゴメンナサイ! 最初、今回の敵キャラが真剣佑と聞いた時、ああ~…と正直思った。
だってそう思っちゃうくらい、前作の藤原志々雄の存在感が凄かったから。
さらにまた正直に言おう。存在感はやはり藤原志々雄だ。
でも、アクションは圧倒的に縁真剣佑!
開幕早々の駅のホームでの軽い身のこなしのアクションを皮切りに、中盤も随所随所挟み、そして、壮絶にして超絶なラストバトル…!
さすがは日本を代表するアクション・スター、千葉真一の息子!
でも、凄いのはアクションだけじゃない。
縁もただの憎々しい悪役ではない。彼が剣心を恨む気持ちは充分分かる。それは、剣心自身さえも…。
だから、縁を見ていたら悲痛でやりきれない気持ちになった。
復讐に囚われ、復讐だけを誓って生きてきた孤高の男。
剣心にある愛する人を奪われた悲しみ。
その悲しみは今も消えない。一生消えないかもしれない。例え復讐を果たしたとしても。
この悲しき若者は、悲しみを復讐に向ける事しか出来ないのか…?
今風の言葉で言えば、異常な○○コンと言いたければ言えばいい。でもこのお陰で終盤、ある人物にその人物を重ね、命を救った。胸打つシーンであった。
真剣佑がアクションも縁というキャラの体現も大熱演。
近年だと『ひとよ』も良かったが、やはり剣心は佐藤健のハマり役。アクションも真摯な演技も。
久々に前3作を見返したので、剣心も含めレギュラーメンバーとの再会は感慨深い。
皆、売れっ子。多くの別の作品で見ているのに、不思議な感じだ。
前作から伊勢谷友介と土屋太鳳も登場。伊勢谷の件はさておき、戦いの最中の土屋の一言、「来い」にちと惚れた。
さらに、ラストバトル直前、思わぬ人物登場! 昨日の敵は今日の友! ここでお馴染みのテーマ曲が流れ、最高にエキサイティング! 実生活でも親友へサービスさせ過ぎでしょう!(笑)
そして、新キャラがもう一人。有村架純演じる巴。すでに役所は知れ渡っているが、敢えて伏せ。
剣心、縁、巴…。
今回はこの3人に纏わる悲しい物語と言ってよい。
毎回毎回ド派手なアクションが注目されがち。かく言う自分も“邦画アクション革命”なんて書いたが、ドラマ面もしっかりしているのが、この『るろ剣』実写化が成功した要因。
剣心の頬の傷。それは、ただの外傷じゃない。
縁が悲しみなら、剣心のそれは一生消えない心の傷。己へ課した“人誅”。
痛みではなく、苦しみに等しい。
同台詞を放った縁の言葉が突き刺さる。
自分のせいで、周りに危害が及ぶ。
ジャンプ主人公あるある…いや、剣心の場合、そんなヒーローめいたもんじゃない。自分の犯した罪と罰のせいで。
剣心は初めて、自分の過去を仲間たちに話す。
その衝撃壮絶な過去に、皆言葉を失うほど…。
剣心はたった一人、縁との決着に向かう。
“マッドマックス”な見た目の縁一派らが立ち塞がる。
果たして、剣心に勝機はあるのか…?
実は、この辺りで終わって、後編に続く!…と思ってた。
よって、縁との決着も後編で。
でも、クライマックスは剣心の元に仲間が駆け付け、縁一派と大バトル!
それにもう書いちゃったが、激しい剣心vs縁!
で、ここで剣心が負けて、薫が人質みたいに取られて、後編に続く!…になると思った。前作の『京都大火編』みたいな絶体絶命的な幕切れで。
ところがところが!
意外な幕切れに。
勿論これも伏せるが、まるでハッピーエンド。
これで一体、どうやって後編に続くのか…!?
メチャクチャ気になってきた。
お願いだから、コロナでまた延期にならないで~!(>_<)
後編の特報や概要を見てみたら、次は時を遡って、幕末。
何故、剣心が不殺を固く誓ったのか。
妻・巴や頬の十字傷、全ての謎や過去が明かされるという。
だから、“Beginning(=始まり)”。
そして本作で、剣心の“今”の戦いは終わり、やっと彼にも平穏が訪れた。だから、“Final(=終わり)”。
なるほど!