あのこは貴族のレビュー・感想・評価
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すごくダメってわけでもないけど良くもない
女性誌の真ん中ページくらいに特集されてる「上京女子vs東京女子 悩みあるある!」って感じの物語だった。
山内マリコの小説が、その辺の気持ちを絶妙に掬い取っていることは想像に難くないのだけども、映画として観るには物足りない。
二人が出会ってドラマが生まれるのが見たかったかな。少なくともミキはハナコの影響を受けてないわけだし。
だからなのか、観客として、特に持ち帰るもののない映画だった。
耳障りの良い苦言と現実と肯定感は、いい映画を見た気にさせるけどすぐに忘れてしまう。
その〝消費”感は本作のテーマとも似てなくはない皮肉。
住む世界が違うって
こういう事を意味するんだね。
自分らしさを追求しようと最後の最後に動き出す華子も、やっぱりこれまでの貴族の立場からの見方に
しかならないので、いくら女性同士が気を合わせようとしてもそこに限界があるのが、痛々しいほど
分かります。(マグカップ)
見たことのない旧華族の立居振る舞いが、ある意味、新鮮な雰囲気でした。
あなたにはあなたの
地方出身者としてはどうしても華子よりも美紀の方に感情移入して観てしまうのだけど、華子にも幸一郎にもそれぞれの生き辛さがあることが上手く描かれている。(「あなたにはあなたの、私には私の地獄がある」by 宇垣美里)
演出としては、丁寧な描写とすっぱりとした場面転換が心地良い。ロジカルに積み上げる部分と飛躍が良いバランスになっている。
門脇麦はどうもいまひとつ萌えないんだが、素晴らしい役者ですね。幸一郎への恋に落ちる瞬間と解放された後の表情が素晴らしい。
また、最近の邦画はそうなんだけど、脇の役者が素晴らしい。本作は、逸子役の石橋静河がとても印象的だし、山下リオがいつもの良さを出している。そして、カメレオン役者 山中崇が華子に理解を示しながら、彼らの「クラス」のあり方を上手く表現する役回りを演じている。スゴい…
自分として生きる
お茶すると聞いて想像する価格が500円の人もいれば、2000円の人もいれば5000円の人もいる。それは階級であり、同じ階級の人以外とは基本的には出会わない、少なくとも仲良くならないように世の中はできているんだろう。私も5000円な人にはお目にかかってないと思う、笑。
階級と言っても世間で言われる上の階級が幸せかと言われればそうとは限らない。上にいけばいくほどおそらくこの階級なんだからこうあるべきというものに縛られるのだろう。それと引き換えに得られる階級なのかもしれない。結婚はやはり家と家でするもんだなと改めて思うし、相手の家族の考え方が好きって思えないと結婚って苦しいだろうなと思う。。
上の上の高良健吾との関係に葛藤する上の下の門脇麦、地方から出てきて都会で一生懸命頑張る水原希子、1人強く生きる石橋静河、どの女性も素敵。演じている感すら感じないほどにみな自然だった。門脇麦はいいところの子にみえるし、水原希子のジャージや方言もかわいい。いつでも別れられる自分でいたいっていう石橋静河のキャラ素敵だった。
どんなところに生きていても、幸せな日もあればどん底な日もある。それを聞いてくれる家族や恋人、友達がいるだけでも幸せ。幸せかどうかを決めるのは自分だし、自分がどう生きたいかだ、と力強く生きていく姿に背中を押された気分。
ちなみに、うちはいい家でもなんでもないけど、出てきた雛壇は実家のと全く一緒だった、笑。懐かしい。
麦ちゃんは、愛の渦の印象が強いんだけど(あとは大河?)、受動的な役...
麦ちゃんは、愛の渦の印象が強いんだけど(あとは大河?)、受動的な役をうまく演じていた。水原も、周辺に追い出されて、少し社会を斜めに見てる感じ、よかった。高良も、空っぽの役が多い。とてもよかった。
谷崎の細雪的な切なさも感じる。育ちのいい女性の不安やファンタジーみたいなもの。女性の連帯の話でもある。
これまでになかった日本青春群像劇の傑作
驚いた。『グッドストライプス』の岨手由貴子監督の新作。手を出すと危険と言われる日本の上流階級もの(門脇麦と石橋静河)に、高良健吾を挟んで、上京組の女子(水原希子と山下リオ)をぶつけ、描かれるのは現代日本を舞台にした「青春の終焉と新たなる旅立ちwith東京論」格差も落差もある日本社会の構造の中でまさに今、頭の痛いことになってる親世代(昭和)の価値観に縛られているジェネレーションの群像劇。
驚いたのは、あらゆるものがハイレベルに成功していること。脚本、撮影、照明、ロケーション、衣装、音楽もだけど、まずは隅から隅までこれ以上ないキャスティングがピタッと決まっている。肝心なことは言葉ではなく芝居をみせ、展開は観客の想像に任せ、気の利いたダイアローグも不自然なことなくピタッとはまる。そうそう、海外の作品で見たことのある、リアルでセンスのある、ダサくない、自分たちのカルチャーの物語。ロマンティック、いやファンタスティックな絵面もあるが、描かれてるのはドライでハードボイルド、でもヒューマンに溢れていて、すべてのパートが融合していて美しいことこの上ない。
門脇麦演じる箱入り娘が水原希子に出会ったことで、世界を知り魂に火が灯って自ら歩きだす。これだけ成熟した現代女性映画って世界的にもどれだけあるだろう。それが実現できる才能が生まれ、集結した。こんな日本映画が観たかった、という2021年の青春群像劇の傑作。
よくよく考えたら交わらなくても認め合う、というのは『グッドストライプス』から続いてるテーマだったんだな、と。叩き合わない、無闇にひとつにならない、ってもの凄く今風のメッセージだと思う。
紅茶と珈琲のパラレルワールド
華子の育ちの良さがわかる所作や服装や、装飾品といった細やかな描写と東京が全面に出ているところが気に入った。
華子の階級で驚いてしまうなかれ、真のこの国を動かすさらに上流階級の生活に驚くとともに、狭くて限られた選択肢のない人生が、地方に暮らすそれと似ているという点は面白い。
そしてそれらは決して交わらない平行世界であるのも事実を突きつけてくる。
しかしかながら、これは東京と言ってもごく一部の世界。
23区内、しかもその中でも富裕層が住む世界の一部。
この映画で描く必要はないから出てこないけど、東京にはそれ以外の面もたくさん持っているわけで。
ごちゃまぜな東京が好きだ、と東京生まれ東京育ち、出てくる建物や道路が知ってる場所だと嬉しくなっちゃう自分は改めて思った。
ただ、それでも、狭い世界に憧れる自分も否定できなかった。
そのなんとも言えない跳ね返ってくる感情に負けた。
線路は続くよどこまでも
松濤に邸宅を構える開業医の三女として生まれ育った27歳の縁談話と、大学進学に伴い富山から上京した30第前半の女性がすれ違う話。
第一章は上流階級の華子の物語。
2016年の元日、家族集っての会食前に婚約者と別れた華子が、見合いに始まり次々に紹介された男と会い、更に上の階級の運命の人と出会うストーリー。
第二章は富山の庶民美紀の物語。
同じく2016年の元日に帰郷したミキティが同窓会に参加したり、大学生になってから大学を辞めて現在に至るストーリー。
第三章以降は前述の2人が代わる代わる登場し、それぞれのエピソードをみせたり、2人が知り合ったり…。
違う階級の常識は自分の階級の非常識?
華子と出会った美紀は開き直り悟ったかの様に歩き始め、華子は自由に生きる友人や下の階級に憧れたのかな。
ドロドロとしたものをみせていくのかと思っていたけれど、少し惚けた様なコミカルな描写を交えつつ、どちらかというと余所余所しい様な、ピンと来ない様な、生きている実感の無さそうなところを彷徨う虚しさを感じ、道を見つめ直し生を感じる様になる、それぞれの成長物語という感じ。
少々外された様な笑いと、友情の温かさ、そして立ち上がる爽やかさが交じり合い、中々面白かった。
ちなみに、個人的にはホーマーのシーンが一番好み。
誰だって「最高」なときもあれば「泣きたくなる」ときもある
予告編を観て興味を持ち、劇場に足を運んだ。箱入り娘・華子(門脇麦)と地方から上京し、自力で生きる美紀(水原希子)の二人が主役として登場している。予告編を観たかぎりでは、後者の生き方には共感できたが、前者の生き方にはあまりピンとくるところがなかった。美紀の友人が我が身を憂いて「東京の“養分”にされている」とこぼすシーンにはウンウンと唸ったものである。とはいえ、作品の世界に没入するにつけ、お嬢様として育った華子にも、お嬢様なりの苦労があることを知った。松濤で生まれ育ったお嬢様の華子も、富山で生まれ育ち上京した美紀も、しがらみの中で生きていることには変わりがない。隣の芝生はいつも青いが、二つの視点からものを見ると、実はそうでもないと気づく。異なる階層で生きる二人であったが、ひょんなきっかけから、その階層なるものを超えて出会う。自分の生き方に迷いを感じていた華子は、美紀との出会いを通じて、どんな人生が「最高」であるかを自らの力で見つけようとする。
なかなか面白かったですし考えさせられますね
榛原華子(門脇麦さん)、時岡美紀(水原希子さん)、相良逸子(石橋静河さん)、平田里英(山下リオさん) 皆さん著名で活躍中の女優さんたちだとは認識していましたが、大河ドラマは観てないし、ハリウッド映画で活躍されていることも情報として知ってたレベルなので正直あまり興味を持ってませんでした。
門脇麦さんなんかは少し前のドラマで山崎賢人さんにトドメのキスをして殺す不気味な女優さん!くらいにしか思ってませんでしたが、たまたま今朝のワイドショーでのロングインタビューを観て、非常に興味深く思い劇場に足を運んだ次第です。
そのインタビューの中で「女優としては演技者としての素材を提供して監督にうまく料理してもらう」との発言もあり、まだ20代でありながら本人の『人となり』というか「純粋な役者さんだなあ」って感じて、対局の世界にいる二人の女性が同じ東京でどんな展開になるのか非常に興味を持ち鑑賞しました。
率直に言って『実にいい映画』でした。
住む世界、生い立ちの違い、上流/下流(嫌な言葉ですが)確かにあると思います。
純粋に好きなもの同士が普通に結婚して幸せになれないものなんでしょうかね。この前観た『花束みたいな~』でも感じましたが。
主役のおふたりに勝るとも劣らぬいい役どころ、演技が光ってたのが石橋静河さんですね。
これまで映画としては『きみの鳥はうたえる』で「いい雰囲気の女優さんだな~」って思ったくらいで(確かに石橋凌さんと原田美枝子さんのお嬢さんですから、いわばサラブレッドであることは間違いありませんが)二世俳優としてではなく単独で頭角を現している女優さんだと思います。
上流/下流の立場の違いとは異なりますがなかなか結婚できない湘南江の島『海の王子』を思い出してしまいました。(ここに触れてはいけないのかもしれませんが)
また最近、女性監督の活躍が目覚ましいですが岨手由貴子監督も非常に興味深い作品を創られる監督さんですね。これからが楽しみです。(ってこれも女性蔑視発言??)
余談ですが個人的には『私をスキーに連れてって』で『流面形 セリカGT4』を知世ちゃんのお姉さんとぶっ飛ばしてた高橋ひとみさんがすっかりお姑さんが板についてたのが印象的でした。まぁドラマ『逃げ恥』でも35歳プロの独身星野源さんのお母さん役でしたもんね~歳をとるはずです!
原作からの見事な脚色と完成具合
原作が好きで楽しみにしていました。いざ鑑賞してみると脚色具合が見事で、惚れ惚れしてしまいました。華子は原作より結構おとなしめに解釈されていますが、それもまた違った現実味があるから絶妙。女性の女性による女性のための映画が作られて、それが性別の枠を超えた快作になるのを目の当たりにできてとても嬉しいです。
女性の生き方・生き様って?女性には共感 が非常に高い映画らしい、お勧めです
憲法では「基本的人権」は保証されている。ただ間違いなく格差が存在するのは疑う
べくもない。劇中「お育ちが違うのね」の台詞に象徴の子は生まれる親を選べない。
いわゆる上層のほうでもきめ細かく階層は刻まれている。いや、上層程、階層毎に明
確に分離され、見上げる階層に嫉妬、羨望と劣等感。その反動か見下す階層には軽蔑
と優越感。ひょっとしたら中間階層が一番気楽なのかもしれない、したいことに制約
は緩く、自立と努力という武器がある。この映画、門脇麦さんはじめ高い演技力の女
性たちによって女性の人生観が染み入る。女性の生き方・生き様って?女性には共感
が非常に高い映画らしい、お勧めです
【”タクシーと自転車”】
ー 東京に住む、”異なる世界”に生きる、会うはずのない女性達の”生きる姿、成長する姿”を、描いた作品。-
■感想
1.どちらの世界に属した方が、幸せなのだろう・・。
描き方としては、明らかに”自転車”の世界だよな・・。
名家に生まれたために、エリートとして育った幸一郎(高良健吾)の、政治家の道を歩むことを運命づけられた姿。
親の引いたレールを走る人生ってどうだろう・・。
- 確かに、政治家には太郎って多いよね。麻生さんを筆頭として・・。
山本太郎は違うよなあ、元メロリンQだからなあ・・。 ー
2.美紀(水原希子(良いなあ・・))と華子(門脇麦(当然、良いがこういう役柄は、初めてではないかな?)が、ある事が切っ掛けで出会い、華子が美紀の生き方に触発されて行く姿。
- 全ての女性に自立を求めるわけではないが、華子の表情がどんどん明るくなっていくよね・・。-
3.美紀の友人を演じた、石橋静河さんと、山下リオさんも良い。
嬉しい所では、銀粉蝶さん、津嘉山正種さんのお姿が観れたのも、嬉しかったなあ。
<名家に生まれ、生きる辛さ。普通の家に生まれ、生きる辛さが、上手く表現されていると思う。
岨手由貴子監督作は、初めて鑑賞したが、20代後半の、女性目線を巧みに取り入れた素敵な作品であると思います。>
自分語りが酷い感想です。
東京でお金持ちの家に生まれぬくぬくと育ってきた華子と田舎から上京し自分の足でなんとか生きてきた美紀、違う階層の2人が交わる時なにか変化が訪れる?って話。
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東京に来て2年、わかったのは階層が地方と比べてはっきりしてるし、行こうと思わないと足を踏み入れたことない所なんて沢山ある(日本橋私も行ったことないわ)。でも美紀みたいに"東京"ってとこに行くと、あぁ今東京に住んでるんだって思えて嬉しくなる。
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私の経歴を書いておくと、名古屋では一応小学校から私立に通ってて(とはいえ親も社長じゃないし、別荘も持ってないし、きったねえ居酒屋とか家族で行く普通の家です)、慶応大学で美紀たちが高校から上がってきた人達のことを遠目で見てるように、それと比べたらショボイけどまぁ、自分がお金持ちかは別としてそっち側にいました(笑).
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普通よりも恵まれた環境へ親が行かせてくれて、周りもちょっと裕福な友達が多くて、そんな私が東京に来たら美紀と同じような立場になって周りの価値観が変わってギャップもあったり。
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だから割とこの映画見てて華子の気持ちも美紀の気持ちも絶妙にどっちもわかる。大学までののびのびとした生活も楽しかったけど、自分のお金で自分の好きなものに囲まれた部屋に1人で住んでて、自分の好きな時にご飯を食べて酒を飲んで過ごせる今の方が「貴族」だと思う。
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ともあれ、勝手に私たち女を値踏みして、女は常に妬みあってるとか、女同士は本心で仲良くないとか、独身女は寂しくて子供が嫌い、とかレッテルを貼ることへ中指を立てている箇所が、静かながら随所にあってすごく嬉しくなった。これは「女の人は話が長い」って言ったあの件に通じることだね。
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現代日本の文化・社会風俗を描いた映画として大変良くできている。繊細な女性映画でありながら現代日本の抱える問題の幾つかを上手く掬い上げている。早速原作読まなきゃ!
①最初(第一章)に華子のエピソードを持ってきたのが宜しい。現代版『晩春』や『細雪』という面白さで映画に引き込まれる。ただ華子には『細雪』の雪子の様な(隠れた)したたかさは無く、あくまで世間知らずのお嬢様。現代日本にまだお嬢様っているんだ、というのも面白いが、華子の結婚相手は更に格(階層)が上というのがまた面白い。②バブルの頃は「一億総中流」とか言われたり、現代は「格差社会」とか言われているけれども、実は日本は今に至るまでずっと階層社会・格差社会なんですよね。大多数の日本人は日本社会は自由で平等な社会だと思い込まされているけど。③私は美紀のように地方都市(しかも農村部!)で生まれ育ったからよくわかるけれど、たった50年前でも『家の格が違う』とか、東京から連れ帰ってきたお嫁さんを『どこの馬の骨かわからん娘』とか、結婚相手の素性を調べるとか当たり前でしたもんね。そういうのが嫌な人が都会に出て、だから都会は自由で平等なんだと子供の頃は思っていたけど、都会も都会、大都会の東京は実は階層社会であり階層で住み分けていて交わらないようになっているとは実に皮肉。④「氏より育ち」と言うけれど、育ちってやはり重要。身に付いてしまっているから違う生き方をするのはほとんど無理でしょう。『そう言う育て方をされたから』という台詞が頻繁に出てくる。幸一郎なんて最初から敷かれたレールに乗って生きていかざるを得ないのを諦感を持って受け入れているというか、最初から諦めて受け入れているものね。だから、最期のシーンでお嬢様の枠を破って歩きだした華子を羨ましく思ったんじゃないかな。⑤女性作家の原作で女性監督のせいなのかどうかはわからないが、華子と美紀を取り巻く若い女性陣の描写がリアルで楽しい。特に華子側の逸子を演じる石川静何(石橋凌と原田美枝子の娘なんだ。ヒェ~)と、美紀の側の理英役の山下リオが特に好演。⑥門脇麦は生粋のお嬢様である華子を完璧に造形化して現代若手屈指の演技派の面目躍如。水原希子は特に役を作っていない様な自然さが良い。お一人様の老後のことを理英と冗談半分・真面目半分で盛り上がった後に一緒に起業を決意するシーンが秀逸。⑦日本という国を回していくのに階層社会が必要なのは仕方がない。また東京という街の半分は地方から出てきた人間の願望や夢を吸いとって成立している虚構の街というのも斬新な視点。それを糾弾するでもなく問題視するでもなくそこで生きていかなくてはならない若い女性たちの姿を真摯に描いているところが爽やか。演出も淀みがなく秀逸である。⑦あと蛇足ながら『私をくいとめて』や本作でも東京を象徴するのがスカイツリーではなく相変わらず東京タワーというのも面白い。
自分の生き方は出自による
明治維新以降、士農工商は廃止されたが、経済格差は今もなくならない。必然的にはお金持ちにはお金持ちのコミュニティがあり賤民には賤民のコミュニティがあり、その殻を破って生活するのはなかなか難しい。金持ち程高等教育を受けられるし教養も身に付けられるのだから生まれて20数年住み分けられて生きてくれば大人になる頃にはその差は歴然でしょう。
ただ人はその与えられた水槽の中でいかに楽しく泳げるかだけなんだろうね。
蛇足ながら話の設定が妙に古臭く感じた。
成長本能を解放させた女性たちの瑞々しさと清々しさが心地良い‼️
トランプ大統領を押し上げる原動力ともなった〝反エスタブリッシュメント〟……既存の体制を支配している階層の人たちのことです。
そういう世界で育つということは、どうしてもある程度保守的な人間性を植え付けられる傾向になるはずです。
既存の価値観についてあれこれと疑問を抱いたり、変えていかなくてはならない、などと考え始める革新的な人間に育ってしまったら既存の体制や既得権に疑問を抱き、もしかしたらそれを崩すような行動を取ることに繋がるからです。
勿論、社会の安定性を維持する(政治家目線で言えば、それが国益であるという主張も成り立つ)という使命感や責任という重圧の中で頑張っておられる良心的で立派な保守派の方もいるとは思いますが、私腹を肥やすことや既得権を拡大強化することに血道をあげる保守側の人間も少なからずいるわけです。
また、保守的な環境で育ってしまうと、どうしても多様性とか格差による機会〝不〟均等について、肌感覚で触れる機会が限られてしまうので、社会との関わりを通じての人間的な成長や成熟の伸びしろも限定的になってしまうという負の側面も否定できません。
門脇麦さん演じる華子の終盤のあの決断は、自己の成長を求める本能的欲求にやっと気が付き、自ら解放してあげた清々しさに溢れていました。
やってることは別の世界で起きているように見えることでも、水原希子さん演じる美紀の決断も同じく自己の成長本能に素直になることでした。
この映画の描くあちら側とこちら側。
実は男どもが必死に守っているつもりで、ますます窮屈で閉塞感が強まるばかりの既存の男性優位社会(そこに価値観を縛られてしまった女性を含めて)と、それに対して、解放された女性が作り出す自由で伸びやかな世界との対比のようでもあるのです。
この映画の主役は石橋静河さん演じる逸子が象徴するものなのだと思います。
普通ならセリフやナレーションで説明してしまう多くのシーンを、無言の演技の力だけによって観客に心理や感覚を共有させる凄い演出が繰り広げられます。特に水原希子の演技は鳥肌モノでしたよ。
日本で貴族と呼べるのは、旧大名とか維新の功労者とか、藤原家の末裔のうち、現在でも莫大な富を維持している人たちぐらいのものかと思います。
門脇麦が演じる華子は、歴代続く開業医のお嬢さんで、渋谷のお屋敷街・松濤に住むお嬢さんです。
たしかにこの設定なら、上流階級の一員には違いありませんが、貴族ではありません。
上流のなかでは「上流の下」という位置づけになるでしょうか。
映画の中で述べられているように、中流以下の人たちと決して交わることがない階層と言う意味でなら、もちろん上流階級の側ではあるのでしょうけれどね。
その彼女が、世襲政治家の一家に嫁ぐわけですが、彼らとて「上流の中」でこそあれ、決して貴族階級ではありません。
しかしその微妙な身分の違いを華子の家族に無言のうちに感じさせ、観客にも確実に違和感を共有させる監督の腕前。
セリフや説明などが一切ないのに、引き込まれました。
脚本家と監督が別だと、どうしても言葉で説明してしまうであろうシーンを、いかに言葉を省略し、演者の演技によって非言語的に伝えるか、練りに練った作品だったのだろうと思います。
さて、登場人物が通う慶応義塾大学ですが、現状では、創立者の理念とは180度正反対に腐り切り、本物のセレブとセレブ気取りと地方の秀才クンという徹底的な身分制度/カースト制度の中にドップリと侵されている大学です。
しかしこの大学の、まるでゴミ集積所に残るような腐臭に関しても、簡単な説明はあるものの、「映画の絵」の力によって不快感を観客に共有させており、身震いするほどの圧倒的なリアリティーに圧し潰されそうになります。
庶民と貴族。決して交差することのない線路。
ただし、お父さんが働く姿を身近に見ている階級と、そうではない階級というところに線を引くなら、華子は前者、華子のお婿さんは後者だったわけです。
監督は理解しているのだと思いますが、この見えない境界線の同じ側に立っていた華子だからこそ、正真正銘、庶民の出である水原希子演じる美紀との交点が発生したのでした。
ストーリーも、たしかによくある話ではあるのかも知れませんが、監督が磨き上げた名セリフの数々と、徹底的なディテールの追求によって、たしかにこの映画は唯一無二の映画に仕上がっていると感動しました。
キャスティングの妙といいますか、門脇麦にしても水原希子にしても、幼い頃からイヤというほど人間関係のヒエラルキーを体感せざるを得なかった生育歴を持ち、登場人物の困惑する心理を現実に熟知している女優さんたちで、そういう女優をピンポイントで選択・配置していたわけです。
そこに監督が絡ませたのが、生まれながらに芸能界階級のサラブレットというべき石橋静河です。
彼女もまた、生育歴と役柄にふさわしい名演技を魅せています。
凄い監督だな、と恐れ入りました。
東京に行きたくなる
手持ちカメラで船酔いしそうなブレブレの映画を撮る監督もいる中で、しっかりと撮影されているので東京の景色が美しく、東京に行きたくなってしまいました。最後の東京タワーの映る場面などは「ああ、あのあたりだな」と感傷に浸りました。
門脇さんや水原さんの評価が当然高いでしょうが、私としては苦悩する貴族の二股男を演じる高良さんが良い。
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