「「女性を分断」しない物語」あのこは貴族 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
「女性を分断」しない物語
原作は未読。
松濤に生まれ育ったお嬢様・華子と、田舎町から上京し東京で生き抜こうとしている女性・美紀の物語。群像劇のようにそれぞれの物語を描きながら1人の男を通じて2人が絡み合っていく。
東京出身のしかも上流階級の人間たちが、地方出身者と違う階層に生きているということはわかってはいる。でもこれだけ違うんだと改めて実感させられる。その対比の描き方がとても細かくリアルだった。上流階級の人たち(しかもその中にもさらに階層が存在する)の態度はとても受け入れられないものではないが、いわゆる悪役みたいな嫌な人間とは描かれない。住む世界が違うのねと納得してしまうレベル。そんな描き方も巧みだなと感じた。
ただ、話の根幹は階層の軋轢・分断みたいなものではなく、女性の自立と生きがいだ。まさに「女性を分断」しない物語と言える。男である自分が観ても苦しくなるような感覚を覚え、しかし最後には清々しくイキイキした姿を観ることができた。男女、貧富、地方と都会、いろんな階層の問題を描きながらちゃんとエンタメとして楽しめる作品だった。
観る前は配役が逆なんじゃないかなと思っていたが、観終わった今は2人を演じるのは彼女たちしかありえないと思える絶妙な配役だった。
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