「「でも、それだけじゃない」まで目が行き届いた作品」あのこは貴族 Pocarisさんの映画レビュー(感想・評価)
「でも、それだけじゃない」まで目が行き届いた作品
たいへんよかった。
基本は「女性の生きづらさ」の話で、結論としては「女同士の連帯かもしれない」のだけれど(それだけなら「アナ雪」と同じ)、しかし、「それだけじゃないよね」という部分がストーリーの中に細かく配置されて、とても目の行き届いた脚本だと思いました。
女性がいつでも離婚できるように自立することが大事と考える人がいれば、やはり主婦として働かずに生きたいという人もいる。
将来に夢を持ち、自己実現が大事という人もいれば、生まれた家の論理からはみ出されずに生きることを選ぶ人もいる。
男性社会の無意識の暴力性もきちんと描かれているが、それを告発したり糾弾したりすることに終始するのではなく、その中での女性の可能性や、男性側の辛さまで取り入れる。丁寧なつくりになっています。
主体を持たなかった主人公(門脇麦)と、外部の要因で主体的にならざるを得ない主人公(水原希子)が、いかに自らの望む主体に少しでも近づくかという思考実験的な展開も、リアリティを失わずに描かれていました。
何より、現実世界では出会うこともないような二人が出会い、心を通わせるシーンは、暖かいと同時にスリリングでもあり、この映画を見てよかったと思わせてくれました。
水原希子と門脇麦の二人が本当によかったですね。
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