劇場公開日 2021年2月26日

  • 予告編を見る

「しっとりとした映像とセリフの静謐な間で語られるメッセージ」あのこは貴族 菜野 灯さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0しっとりとした映像とセリフの静謐な間で語られるメッセージ

2021年3月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映像が雨上がりのようにしっとり感あって情緒感ある。ライティングもシックな灯りが中心。セリフにもゆったりした静謐な間があって、表情で心情を読める。まさに映像で語る映画で、入り込める。

女性の心情を描いていて、人はすぐにカテゴライズするけれど、しがらみを取り払って自分の人生を生きようと前向きなメッセージが込めあれている感じがした。
恋愛映画でも対立も描いていない。それぞれの視点で淡々と過ぎてく時間を映しとっているようで、映像が残像として残る、映画を観たという感覚になれる。

K大学はまさにこういった対比を描くにはもってこいの大学だ。都内の裕福層の内部生と、地方の外部生は入学時点でまったく違う。内部生はすでによく知った旧知の仲。外部生はそこになじんでいくひと、なじめないひと、模様が違う。

セリフもなかなか印象的でセンスある。
最高の日も泣きたくなる日もある。そんなとき誰か言える相手がいるのはとても大切なこと。案外出会えないよ、そういう人。
美樹は同じ地方で同じK大学を出た何でも言い合える友達がいて、とても羨ましかった。

華子はそういう友達がいないようで、なんだかずっと寂しげ。だけど健気。
二人の女性もそれぞれ愛し、愛されるような公平に描いている。
女性監督ならではの女性の描き方でとても印象的だった。

菜野 灯