「素敵な作品(あと、三姉妹描くの上手すぎる岨手由貴子監督)」あのこは貴族 まつこさんの映画レビュー(感想・評価)
素敵な作品(あと、三姉妹描くの上手すぎる岨手由貴子監督)
これは傑作だった◎
これまで全く違う人生を歩んできた、都会に暮らす女性2人のそれぞれの人間ドラマ。お金持ちの部類に属するお嬢様育ちの華子を門脇麦、地方から上京し頑張って勉強して入った大学で学生生活を送るが実家の金銭面が逼迫し、中退を余儀なくされた美紀を水原希子。この設定と予告だけじゃどんな映画かあまり予想出来なかったけど、岨手由貴子監督の最新作なんて滅多に観れないから、もう大興奮でいきましたよ…
私が溺愛している「グッド・ストライプス」の岨手監督。大好きだから。そりゃ待ち望んでましたよ。グッド・ストライプスとは、内容も全然違うしそもそも原作のある映画だから勿論ジャンルやテイストは違ったけど…丁寧に作られた愛すべき作品だった…!
立場の真逆な2人を描く作品って、金持ちと貧乏人とかアイドルと一般市民とかこれまでも沢山あったけど、その中でもなんか新しいし観ていて気持ちの良い、それでいて可愛らしいところや信念のある2人で、魅力的だった。
2人を取り巻く周囲の人達も良かったなぁ。まず親友が◎過ぎる…!華子(門脇)の親友逸子(石橋静河)も、美紀(水原)の親友里英(山下リオ)も、それぞれすっっごいすっっごい良き友。この2人を比較したとしてもかけ離れた人生だけど、そもそもの人間性が良くて…性格も良くて、人柄も良くて、かわいらしいところも沢山あるし、強さと優しさが同居しているし、好き。個人的に、石橋静河さ…「映画夜空はいつでも最高密度の青色だ」の時も(あれは新人を起用する事に意味があったから)もちろん新鮮さが良かったんだけど、ここ最近演技めちゃくちゃ上手くなってるし、表情とか仕草が可愛いしきれい。ぐんぐん素敵になってて目が離せないうちのひとりになった。
周囲の人達の話に戻るが、華子の家族がまた良い。花子の立場になったら色々縛られててキツいなぁと思う事も沢山だけど、冒頭の正月の家族での高級ホテルでのお食事シーンで既に心鷲掴みにされた。一人一人、皆金持ち育ちだからベースはそうなんだけど、個性が割とあってくすくす笑いはじめて気付いたら沢山笑ってた。2人の姉、特に長女最高◎石橋けいキャスティングはずるいよ…!石橋けいやっぱり好きだわ。山内ケンジ作品を見返したい。てか岨手監督、三姉妹を描くのあまりにうま過ぎやしません?笑。グッド・ストライプス然り。両作品ともに面白い三姉妹が出ててどちらもめちゃくちゃ良いキャラした人達集まってる…特に長女笑。出会ったことがあるようで出会った事ない、妙にリアルで妙に面白いこの感じ。素晴らしい。
今回は、この石橋けいさんの旦那の山中崇もすごい好きな役どころだった!山中崇そもそも好きだけど、今回の役は好きですね〜。家族にも恋人にも緊張しがちな華子だけど、この義理の兄さんには割とナチュラルに接してて、この2人が話すシーンは何か好きだったなあ。癒された。劇中にて、華子は長女と歳が離れててちっさい時に長女と義兄さんが結婚したから義兄さんとは一緒に居る時間が長いと言ってて、納得したけど、にしても良かった。
そして観た人みんな思ったろうけど、華子と美紀の出会い方。意外だし、出会ってからの関係値への流れも意外と新鮮さが入り混じってて…結果凄く良いなと思った。展開がいちいち良いのよ。(2人の出会いとか、あとそれ以外にも、華子が幸一郎と出逢うまでの色んな男との出会いや…多分人と人との出会い方がいちいち色んな意味で面白い◎)
また、2人を出会わせた逸子ちゃんの言い放った「世間は女同士を戦わせようとし過ぎ」みたいな発言も、目からウロコだったな。パンフに寄稿してたきょんきょんの感想がまさに私や皆んなが思ったこのえもいわれぬ感情を言葉にしてくれてて、凄く良い感想だったよ。
原作ありきの良さかもしれないけど、一見普通に見えるこの作品の他とは違うところのひとつは、この状況の2人が次に言うセリフや展開…これまでの映画ドラマセオリーを考えりゃあどっちかが叫んでそしてもう片方も泣き叫ぶね…と思うようなところで、叫ばないし怒らないし変なドラマティックなキレ方もしない。ところ。リアリティを追求とかじゃなくて、それがなんか心地良くて好きだなと思った。そう、人間って、(国民性もあるかもだけど)思ってる以上に言いたい事ばんばん言える人ばかりではないし、思ってる以上に簡単に人に向かって叫んだらしない。結構本当の気持ちを飲み込んでしまったりするけど、ひょんなところで吹っ切れて次へ進めたりもするもんなんだなと。
上手く感想がまとめられない上に内容にはあまり触れてないのだけど…
華子も、美紀も、色々あったけれど、心の底から応援したくなる人達だったなあ。周りの人たちもそう思ってるでしょう。映画の中ではラストシーンが終わったけれど、これからも応援し続けたい2人だなと思いました。