劇場公開日 2021年2月26日

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「閉塞感からの解放で開いた優しい世界が"繰り返す日々を過ごす我々"への賛歌に」あのこは貴族 たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5閉塞感からの解放で開いた優しい世界が"繰り返す日々を過ごす我々"への賛歌に

2021年3月2日
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鑑賞方法:映画館

知的

幸せ

正直言って、映画を観ているときは、ぼんやりとしか掴めていなかった。しかし、見終わった今、無性に彼女たちの背中を追いかけたくなった。そして気づいた。彼女たちが主人公の映画は、たった今始まったのだと。

何よりこの作品が素晴らしいのは、ダブルヒロインでありながら、互いから見ると、人生のひとピースに過ぎないところである。松濤に住処を構えるお嬢様の華子と、富山から上京するも大学中退を余儀なくされた苦労人の時岡美紀。青木幸一郎が唯一の接点であったはずなのに、ふたりの異なる物語が並走し、互いの人生賛歌へと昇華されていく。都会に暮らしていても、田舎から出てきても感じていたのは、狭くて身動きの取れない息苦しさと、独り立ちも許されないような環境。富山では親の仕事を次ぐ人ばかり、都会では生まれながらのレールから外れることを許されない。そんな閉塞感を否定するのではなく、彼女たちの手でユートピアを拓いていくような優しさで包み込んでゆく。都会の景色は他人事で、自分の足で立てずにいた彼女たちは、ひゅるひゅると変わっていく環境に流されてしまう。そこから自分の足で立つ方法を身に付けた時、初めて見える景色がそこに広がっている。それこそ本当の都会の景色なのではないか。門脇麦を都会のお嬢様、水原希子を田舎の苦労人として描くアンバランスさは、作品内で見事に意味を成して熟れてゆく。そこがまた深くて優しい、この作品の凄みだと思う。

彼女たちを知りたくなって、ついパンフレットも買ってしまった。この作品は、単なる女性賛歌ではない。"日々を繰り返す全ての人"に次ぐ人間賛歌なのだ。山内マリコ原作にハズレなし。さて、いつもより軽くなった足で、新宿を歩くとしよう。

たいよーさん。
たいよーさん。さんのコメント
2021年3月4日

ありがとうございます(^^)
見事な文学作品になってますよね。まさに品のある映画、という印象を受けました。

たいよーさん。
iwaozさんのコメント
2021年3月4日

共感です。名コメントありがとうございます^ ^
映画も見事な文学作品になってますよね。

iwaoz