「これまでになかった日本青春群像劇の傑作」あのこは貴族 ONIさんの映画レビュー(感想・評価)
これまでになかった日本青春群像劇の傑作
驚いた。『グッドストライプス』の岨手由貴子監督の新作。手を出すと危険と言われる日本の上流階級もの(門脇麦と石橋静河)に、高良健吾を挟んで、上京組の女子(水原希子と山下リオ)をぶつけ、描かれるのは現代日本を舞台にした「青春の終焉と新たなる旅立ちwith東京論」格差も落差もある日本社会の構造の中でまさに今、頭の痛いことになってる親世代(昭和)の価値観に縛られているジェネレーションの群像劇。
驚いたのは、あらゆるものがハイレベルに成功していること。脚本、撮影、照明、ロケーション、衣装、音楽もだけど、まずは隅から隅までこれ以上ないキャスティングがピタッと決まっている。肝心なことは言葉ではなく芝居をみせ、展開は観客の想像に任せ、気の利いたダイアローグも不自然なことなくピタッとはまる。そうそう、海外の作品で見たことのある、リアルでセンスのある、ダサくない、自分たちのカルチャーの物語。ロマンティック、いやファンタスティックな絵面もあるが、描かれてるのはドライでハードボイルド、でもヒューマンに溢れていて、すべてのパートが融合していて美しいことこの上ない。
門脇麦演じる箱入り娘が水原希子に出会ったことで、世界を知り魂に火が灯って自ら歩きだす。これだけ成熟した現代女性映画って世界的にもどれだけあるだろう。それが実現できる才能が生まれ、集結した。こんな日本映画が観たかった、という2021年の青春群像劇の傑作。
よくよく考えたら交わらなくても認め合う、というのは『グッドストライプス』から続いてるテーマだったんだな、と。叩き合わない、無闇にひとつにならない、ってもの凄く今風のメッセージだと思う。