「スマホを落としていないのに」スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
スマホを落としていないのに
スマホを落とした事をきっかけに…。
あれだけ恐ろしい目に遭ったのに、まーたスマホを落としちゃった。
スマッシュヒットとなった中田秀夫監督のサスペンス・ミステリーの続編。再び中田監督がメガホン。
話は後日譚。長い黒髪の美女ばかりを狙った浦野による異常な連続殺人事件から数ヶ月…。
その事件で命の危険に遭いながらも、晴れて結ばれた麻美と富田。(北川景子と田中圭が特別出演)
二人の結婚式に出席したのが、頼りなさそうだったのに、原田泰造先輩刑事なんかよりずっと活躍し、二人の命を救った若手刑事の加賀谷。チョー美人彼女を連れて。
って言うか、草食系に見えて彼女居たのかよ! そんな事、全然言ってなかったじゃんかよ! しかも、白石まいやんだぞ! 羨まし過ぎるぞ、コンチクショー!
…が、現在二人は微妙な距離感。それには、加賀谷の過去のトラウマが関係していて…。
浦野が遺体を埋めた山中からまた新たな遺体が発見される。
収監中の浦野から話を聞くと、ネット犯罪の全てを教えてくれた“M”という人物が浮かび上がる。
重要参考人として追うも、難航。そこで上層部の極秘命令でやむなく、加賀谷は浦野と協力して捜査する事に。
そんな時、加賀谷の恋人の美乃里がMと思われる人物にSNSを通じて狙われ…。
端役から出世し、主役となった加賀谷=千葉雄大。
トラウマや恋人との関係を抱えながらも、再び起きた殺人事件解決に奮闘。
浦野は勿論、成田凌。前作で怪演を見せ、その後役者として大きく飛躍し注目され、今作ではもはや余裕の怪演といった感。
似たような過去のトラウマを持つ加賀谷と浦野。
苦悩しながら自身の過去と向き合おうとする加賀谷と、過去や愛を拒絶する浦野。
捜査協力する代わりに、浦野は加賀谷の過去を執拗に知ろうと迫る。
二人の緊迫したやり取りは、和製『羊たちの沈黙』路線。
似た過去と、共にネット世界に強い。火花を散らしながらも、異色のバディ。
加賀谷は事件解決と、美乃里の身を守る事が出来るのか…?
浦野は本当に協力しているのか…?
主人公とヒロイン、サイコ犯が交錯する殺人事件捜査サスペンスに、県警HPがハッキングされるサイバー犯罪や仮想通貨流出の経済犯罪も絡め、容量アップ。
…が、結果的にこれがスマホ(作品)を混乱させてしまった。
メインの事件捜査はそれなりに面白い。
加賀谷も奮闘しているが、陰の主役は浦野。その不敵な一挙一動から目が離せない。
が、見てるとはっきりと違和感を覚えてくる。
あれ? 今回、スマホを落としてないよね…?
殺人事件や二人の男のドラマがメインとなって、前作の面白味であったスマホを落としてから始まる身近な恐怖の云々はまるでナシ。
前作のレビューでも書いたが、自分はこういうSNSやネット世界には全く無知だが、それでも恐ろしさを感じたのだが、今回は何だか全く身近じゃない話になっちゃったような…。
加賀谷は元々IT企業マン。突然辞め、刑事に。加賀谷の父は刑事だったが、不審な殉職。母もそのせいで精神不安定に。それを知る為に、加賀谷は刑事に。…でも、加賀谷の父が殉職した刑事だったなんて、そんな設定唐突過ぎ…。
ツッコミ所や無能な警察多々。
Mの正体も一番怪しい奴がそうじゃないのは承知。捻って捻ったようだが、何だか肩透かし…。
千葉と成田は熱演して見せ場もあるが、メインキャストとして名を並べている白石麻衣は、前作の北川景子みたいにもっと話に絡むのかと思いきや、正直居ても居なくてもよくね…? 美人度だけなら前作に劣らず。
それから、謎のお笑い芸人の配役。その内の一人なんか、とてもとてもサイバー室長に見えない超無能。日本でもいつぞやIT担当大臣がパソコンも使えない年配者で世界中から(ある意味)絶賛されたが、あ~あ、昼間からゴロゴロ~ゴロゴロ~、キャスティングをやり直せたらな。
他にも、
LGBTから批判を浴びそうな某人物の描かれ方、
浦野をレクター博士並みのハイスペックに描き過ぎ、
…などなどあるが、これ以上指摘するとネタバレになってしまいそうなので、ここまで。
焼き直しではなく、趣向を変えたものの、一体何を軸に据えたかったのか…?
続編と言うより、スピンオフ。いや、似たスマホの海賊版な感じ。
最初(前作)スマホを落とした時は大慌て。まあまあ面白かった。
2回目(今回)スマホを落としたら、またか…。今一つ。
もしまた落としたら(3作目作られるとしたら)、またかよ…。
くれぐれも類似スマホにはご注意を。
それから勿論、スマホを落とさぬよう。
…あ、今回、スマホ落としてないか。…って言うか、そこで!?