「舞台を観てるようだが」ペトラは静かに対峙する ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
舞台を観てるようだが
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背景はスペインの荒涼とした大地で、大きな変化はなく、同じ室内が繰り返し出てくる。
感情の起伏など抑揚をかなり抑えた演出のなか、人物像や人間関係は、淡々とした会話や発言からしか推し量ることは出来ず、ある意味、舞台を観ているかのようだ。
チャプターの時系列は何度か前後するが、これで人物像が分かりやすくなっていると感じることがある反面、人間関係を複雑に見せているようにも思う。
決して複雑とは言えないストーリーに深みを持たせようとしているのだろうか。
物語は、ジャウメの傲慢で自分本位の行動と、それに巻き込まれた人々の秘密によって起こる悲劇だ。
登場人物に次々に起こる悲劇は、まるでシェイクスピアやギリシャ悲劇を観ているかのようでもあり、昔の物語にありがちな、こんなこと(ジャウメのように)してちゃダメと言った教訓めいたところもある。
だが、ペトラがルカスの母親と和解するエンディングは、未来に希望を持たせるようで、やはりこうした悲劇とは一線を画しているようにも思える。
ペトラが、自分で描いた足を組んで横たわる女性像と同じような格好で横たわって物思いにふける場面がある。
ジャウメは、この絵を批判して、内側にこもるようで外に向かって訴えるものが感じられないと言っていたが、映画の淡々とした演技や表情が、人の内面や人間関係を明らかにするようで、何か逆説的でもあり、全ての人が面白いと思うような作品ではないかもしれないが、個人的には楽しめた。
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