「ずれながら戯れ合う」ピアッシング Kさんの映画レビュー(感想・評価)
ずれながら戯れ合う
村上龍の原作で見覚えのあるタイトルだったので気になった。鑑賞後、頭の整理がつかず謎めいたままだったので、珍しくパンフレットを購入。そして古い本棚にあった原作、15年以上前に買ったと思うが内容は全く覚えていない、を読んだ。おかげで謎だった部分は原作で補うことができた。
その上でだが、少ない言葉で、緊張感のあるやり取りを、原作に忠実でありながら謎めいたままに映像化できているのがいいのだと思った。映画では男性の心理や幻覚、幻聴は描かれるが、女性については隠されているのが原作とは違っていて、それがよりミステリアスであり、お互いの幻想の中でずれながら戯れ合う緊張感を醸し出している。架空の高層アパートの風景も謎を助長する。パンフレットの村上龍氏のインタビューにもあったように、原作の本質的なところをきちんと把握して撮られている。
ただもし原作も知らず解説もなく映画だけを見たとしたら、この謎すぎる何とも言えない気分はどうなっていたのだろうかと心配になる。
エンドロールに荒木経惟の名前があったので気になった。それは主人公のアパートに飾られていた〈若い芸者がスイカを食べている〉写真であった。
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